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なぜビットコインは24時間で-45%暴落できたのか

こんにちは。Fintertechストラテジーグループの川浪です。

日本時間3月12日の夕方19時ごろから仮想通貨市場で近年類を見ない暴落が発生しました。24時間で-45%という今回の暴落はBitcoin Cashのハードフォーク騒動、中国政府による仮想通貨取引所の締め出しによる急落を超えて大きなものであり、現在の仮想通貨市場の問題点を如実に表すものであるため、何が起こったかを分かりやすく、整理していきたいと思います。

下落のスタートポイント

トランプ大統領がヨーロッパ諸国からの入国制限を発表

The US restricts arrivals from 26 European countries in a bid to tackle the coronavirus outbreak.

それまで原油価格が20%以上暴落。株価も世界的に下落が目立っていましたが、上記をトリガー(ある種、世界経済の大動脈である米国ー欧州間の移動制限により、グローバルに不況陥ることがほぼ決定)にして為替、株、債券、原油、果ては金まで急激なリスクオフ、換金売りの嵐となりました。

下落を主導したのはどこの市場?

19:30から本格的な下落がスタートしましたが、ここではどこの取引所がこの下落を主導したのか見て行きましょう。
仮想通貨はデリバティブと現物も含めて、マーケットメイカー・アービトラージャーが多数存在しますので、価格は多少の時差があれど連動します。
ここで注目すべきは取引所の出来高です。では各取引所を見ていきましょう。

下はTradingviewで見たBitFlyerFXのチャート(1分足)です。下落していますが、19:30の出来高が爆発的に増えていません。BitFlyerが震源地ではなさそうです。

https://jp.tradingview.com/chart/?symbol=BITFLYER%3AFXBTCJPY

これに対してBinanceでの現物BTCの取引は19:30の出来高が急増しています。しかし、翌日13日の戻り局面のほうが出来高が多いことと下落直前での出来高が薄いことから、ここが震源地とも言えなそうです。

続きまして本命BitMexを見ていきましょう。
明らかに19:30の出来高が多いです。しかも急落前に出来高が増加しています。翌日の戻り局面と比べても、顕著ですのでここが震源地と言えそうです。
中国のスキャムであるPlustokenが最初に売り出し始めたなどという話も出ていますが、KYCが軽いと言われるBitMexならではの噂です。

https://jp.tradingview.com/chart/?symbol=BITMEX:XBTUSD

今回の暴落はその早さが特徴

震源地であるBitMexのBTC先物では、12日19:30の7200ドルから19:45の5600ドルまで15分間で22%下落しています。
この速度での下落はボラティリティが高いビットコインでも、近年では前例がない類のものです。当然、トレーダーが手で発注できる早さを超えてますので、強制ロスカット注文の連鎖と機械的なプログラムトレードによる値幅の増幅作用が最大限に活かされたと言えるでしょう。
約750億円分のトレードに対し、強制清算が行われたとも報道されています。

3月12日、ビットコインの瞬間的な暴落をきっかけに、仮想通貨デリバティブ取引所ビットメックス(BitMEX)において過去16カ月で最大となるロングとショートの清 ...

急速に市場を拡大した仮想通貨担保ローンにより下落が加速する結果に

この1年半で俗にいうBTCローンの市場規模が急拡大しました。私はこの市場のスタート当初から注視してきましたが、2019年6月の市場規模が3000億円(Fintertech推計)だったのに対し、2019年末の市場規模が5000億円まで急激に増加したことには、非常に驚かされました。
典型的な商品としては、担保掛目を50%で仮想通貨を担保にして法定通貨を貸し出すというものです。(ちなみに貸出金利はけっこう強気)
詳細はこちらの記事にわかりやすく纏まっているのでご参照ください。

平たく言うと、証券会社の人間にとってもお馴染みの証券担保ローンの仮想通貨版です。仮想通貨が下落したら担保追加のお願い(追証)がなされることも一緒です。
そして、それでも担保価値が下がり続け、貸出金額と同水準にまでなった場合には債権保全のために担保が売却され、貸出金と担保売却が相殺される仕組みです。
例を出すと、BTC価格が100万円で100BTCを担保に、5000万円借りる。BTC価格が50万円まで下落しそうになると自動で担保は売却され、借りていた5000万円と相殺されます。

ここで過去1年のBTCの値動きを見てみると10000ドルを超えたレベルでの滞留時間が昨年6月から9月末までです。弊社の推計ですが、2019年6月から年末まででBTCローンは約2000億円増加しています。時間による単純計算でも1000億円分はBTC価格が10000ドルを超えたところで組まれたと言えるでしょう。

改めて、13日午前中の値動きを見てみると5600ドルから4400ドルまでの下落が非常に速いことが見て取れます。これはBTCローン債権保全のためのプログラムトレードが主役であり、その後、ロスカットの売りが連鎖したと考えられます。大口のトレーダーが休むアジア時間は値動きがなくなることが多いので、ここまでの値動きはBTCローンが呼び水となったと推測します。

ロスカット・プログラムトレードによる急落の後、相場はどうなるか

仮想通貨に限った話ではなく、金融商品全般のトレードで言えることですが、ロスカット・プログラムトレードによる急落の後は、急激に値を戻します。人間が安い・高いという感覚を伴って売買しているレンジではないので、台風一過の後の日本晴れのごとく、商いを減少させながら、あっさりと戻します。
これがまさに13日の午後に起こった出来事かと思われます。

今回の急落から学びたいこと

今回のフラッシュクラッシュとも言える想像を超える暴落の原因は拡大を続けたデリバティブ市場がその一つと言えます。デリバティブ契約ですから、数量制限がなく、現物BTCの時価総額とは無関係に組成され、その流動性の高さからヘッジ手段としても重宝されてきました。ですが、世界的に見直されるべきタイミングだと考えます。
最近のBitMexからのユーザー離れはそれを顕著に示していると言えます。
(今回のBitMexの対応は、2019年に起こったBinanceハックへの対応とは対照的だと感じています。今回の暴落が一つの契機になるかもしれません。)

伝統的な金融商品に比べ、危機におけるリスクに対する考慮が浅く、利便性を最優先に作られてきた仮想通貨周辺の金融システムですので、今後も様々なことがあります。
仮想通貨とブロックチェーンを愛する一人として、少しでも力になれればと思い、これからも精進していきます!

3月25日現在、BTCは半値戻しを達成。再度、戻り高値を窺っている状態です。相場の方向についてコメントはしませんが、通常は半値戻しを達成した後も、しばしボラティリティは高止まりします。
”半値戻しは全値戻し”という相場の格言もあります。

ただし、この格言は世界的な公衆衛生上の緊急事態でも通用するかは疑問です。
私はこれからスタートする仕事の関係上、短期売買はきっぱりやめて、一部コインをガチホすると自ら決めた矢先の暴落でした。相場の急展開にあわせてドッタンバッタントレードしたい性格の私にはある種、拷問でした。13日午前10時ごろから”買いたい!”とオフィスで叫び続けたので、同僚の皆さんにとってはさぞ邪魔だったことでしょう。この場を借りて謝罪させていただきますorz。

※本記事は仮想通貨取引の勧誘を目的とするものではございません。また、記事やコメントにおける投資情報は内容の正確性を保証するものではありません。
※相場変動や金利差により損失を生じる場合もあり利益を保証するものでもなく、掲載された情報に基づき被った損害について責任を負いませんので、必ず投資対象・取引の仕組み・リスクについてご理解の上、自ら情報を確認いただき、ご自身の判断と責任においてお取引いただきますようお願いいたします。

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