Deep Tier Financing ブロックチェーンで製造業を支える金融ソリューション on Corda — 後編 — 2020/09/17 17:00 09/17 17:00 SBI R3 Japan この記事は サプライチェーン・ファナンスってなに??ブロックチェーンで製造業を支える金融ソリューション on Corda — 前編— の後半です。 より様々な内容の記事に興味のある方は、是非こちらにも訪れてみてください。 ⇒ SBI R3 Japan公式 Medium 目次 Deep Tier Financing ~サプライチェーンファイナンスの先へ~ 終わりに さて、サプライチェーンファイナンスの話に戻ります。 例えば縦のサプライチェーン、ここではバイクメーカーを例にとります。 筆者は車よりバイクが好きです 完成品であるバイクを製造するメーカーは、すべての部品を自社で製造しているとは限りません。多くの場合エンジンやタイヤをそれぞれメーカーに発注しています。 またそのエンジンやタイヤのメーカーも、使われているネジや細かい部品を自社で製造せず部品メーカーに発注することもあります。 この縦のサプライチェーンにおいて、ブロックチェーンを使ってサプライチェーン上のデータを可視化できているとしたら、サプライチェーンファイナンスはこんな嬉しいことを実現できます。 金融機関は融資にかかるコストを削減でき、サプライヤーがスムーズに運転資金を調達できることにより、持続可能性の高いサプライチェーンを実現します。 完成品メーカーからすれば、下流のサプライヤーが資金不足に陥って部品が一部でも届かなければ、不利益をこうむります。コロナウイルスの影響で中国に生産ラインを持っていたメーカーが軒並み大打撃を受けたことが記憶に新しいですが、持続可能性の高いサプライチェーンを実現することは完成品メーカーにとって非常に大切なことです。 ちなみに「ブロックチェーンで発注書や請求書の情報を全員で共有してしまったら、川上のバイヤーが川下のサプライヤーの部品の原価を見れるようになってサプライヤーが困るじゃないか!」という声も当然あると思います。 しかし、Cordaはブロックチェーンでありながら全員ではなく取引の関係者のみに改ざん不可能な情報を共有するというユニークな設計をしています。よって「9月15日までにバイクのエンジンが2000個エンジンメーカーから納品される予定だ」「バイクのエンジンを構成するピストンは無事に8月1日にエンジンメーカーに納品された」「予定通りエンジンメーカーにピストンが納品されたこと自体はわかるが、原価はわからない」といった仕組みを構築することが可能です。 タイでは東南アジア最大の建材・素材メーカーがCorda上にB2Pという受発注プロセスの電子化ソリューションを構築しました。すでに5000社以上に導入されており、提携するサイアム商業銀行がサプライチェーン上の企業に売掛金担保融資を提供しています。 また、横のサプライチェーンでは三井住友銀行がMarco Poloという貿易金融ソリューションを日本で展開予定です。紙中心だった貿易取引業務をWeb画面で完結させ、サプライヤーに運転資金ソリューションを提供する試みが、もう秒読みのところまで来ています。 ブロックチェーンはあなたの業界をどう変えるのか? -Corda導入事例-貿易、サプライチェーン、金融 *張り付けた記事は去年の12月作成なので、情報がかなり古いですが参考までに。 ・・・ Deep Tier Financing ~サプライチェーンファイナンスの先へ~ 今回紹介する『Deep Tier Financing』は、ブロックチェーンを用いたサプライチェーンファイナンスの1つの考え方です。 主に階層構造になっている縦のサプライチェーンに向けたサプライチェーンファイナンスソリューションで、完成品メーカーの売掛債権をトークン化して下流のサプライチェーンに流通させることで、中小企業でも比較的低い利息で運転資金を確保できます。 少し複雑なので以下の図を用いて順を追って説明します。主な登場人物はバイクメーカー、タイヤメーカー、ホイールメーカー、ナットメーカーに加えて銀行です。 サプライチェーンの完成品メーカー(ここではバイクメーカー)は分割可能な売掛債権トークンを発行します。 金融機関はアプリの提供と売掛債権トークンの管理・償還を行います。 電子化された売掛債権トークンは、アプリ上で銀行に提示すると現金に替えることができるし、そのまま同一サプライチェーン上の他の企業への支払いにも使えます。 順番に解説すると バイクメーカーはタイヤメーカーのタイヤ代金請求に対し、銀行の提供するアプリを通じて売掛債権トークンを発行します タイヤメーカーはバイクメーカーの売掛債権トークンを銀行に売って現金を手に入れることもできますが、ホイールメーカーの請求に対しトークンで払うこともできます 分割可能なので、一部を支払い、残りを現金にすることも可能です ホイールメーカーはバイクメーカーの売掛債権トークンを銀行に売って現金を手に入れることもできますが、ナットメーカーの請求に対しトークンで払うこともできます 売掛債権トークンは償還期限が来たら自動で償還されます。 例えば、通常の売掛債権融資であれば、ナットメーカーへの融資の利率はバイヤーのホイールメーカーの支払い能力を評価することで決められます。 一方Deep Tier Financingではサプライチェーンの上から下まで、頂点の完成品メーカーの信用力をもって利率が決定されるといった特徴があり、川下のサプライヤーでも低金利で融資を受けることができます。 金融機関は完成品メーカーのみ支払い能力を審査すれば、川下のバイヤー1社1社を審査する必要なくサプライチェーン全体に融資が可能です。 Deep Tier Financingのもたらす嬉しいことを登場人物別に整理するとこんな感じです。 ・・・ 終わりに 前編に書いたようにAmazonや楽天をはじめとしたIT企業は、蓄積されたデータを武器にトランザクションレンディング等で金融サービスをどんどん拡大させています。 最近ではGoogleも銀行や保険のサービスに進出しており、伝統的な金融機関が保有する顧客情報基盤の優位性がゆらぎつつあります。 10年後や20年後、日本を支える製造業の企業たちと取引をしているのは、長年をかけて関係性を築いてきた金融機関か、新興のIT企業のどちらになるのでしょうか? ブロックチェーンプラットフォームCorda上に構築された金融ソリューションは伝統的な金融機関にとって新たな武器になるかもしれません。 三井住友銀行のように、未来に向けて走り出す金融機関がこれからどんどん増えてくることを祈っています。 ・・・ 最後までお読み頂き誠にありがとうございます。 記事へのご質問、またはブロックチェーンに関してお困りごとがございましたらお気軽に下記までご連絡ください。 ブレインストーミングやアイデアソンも大歓迎です。 お問い合わせ:info-srj@sbir3japan.co.jp Facebook: https://www.facebook.com/R3DLTJapan Twitter: https://twitter.com/R3Sbi HP: https://sbir3japan.co.jp/product.html おすすめ記事 トレーサビリティからトークンエコノミーへ(前篇)~プライベートブロックチェーンのビジネスユースケース~ https://medium.com/corda-japan/%E5%95%86%E7%94%A8%E5%8C%96%E7%9B%AE%E5%89%8D-riskstream%E3%81%AE%E8%BF%91%E6%B3%81-a9f12417777d コロナ禍でも変わらなかった業務改善に挑む~ブロックチェーンで世界を変えるための第15歩~ (記事作成:SBI R3 Japan/ Riku Nakazawa)
Deep Tier Financing ブロックチェーンで製造業を支える金融ソリューション on Corda — 後編 —
09/17 17:00 SBI R3 Japan
この記事は
の後半です。
より様々な内容の記事に興味のある方は、是非こちらにも訪れてみてください。
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さて、サプライチェーンファイナンスの話に戻ります。
例えば縦のサプライチェーン、ここではバイクメーカーを例にとります。
完成品であるバイクを製造するメーカーは、すべての部品を自社で製造しているとは限りません。多くの場合エンジンやタイヤをそれぞれメーカーに発注しています。
またそのエンジンやタイヤのメーカーも、使われているネジや細かい部品を自社で製造せず部品メーカーに発注することもあります。
この縦のサプライチェーンにおいて、ブロックチェーンを使ってサプライチェーン上のデータを可視化できているとしたら、サプライチェーンファイナンスはこんな嬉しいことを実現できます。
金融機関は融資にかかるコストを削減でき、サプライヤーがスムーズに運転資金を調達できることにより、持続可能性の高いサプライチェーンを実現します。
完成品メーカーからすれば、下流のサプライヤーが資金不足に陥って部品が一部でも届かなければ、不利益をこうむります。コロナウイルスの影響で中国に生産ラインを持っていたメーカーが軒並み大打撃を受けたことが記憶に新しいですが、持続可能性の高いサプライチェーンを実現することは完成品メーカーにとって非常に大切なことです。
ちなみに「ブロックチェーンで発注書や請求書の情報を全員で共有してしまったら、川上のバイヤーが川下のサプライヤーの部品の原価を見れるようになってサプライヤーが困るじゃないか!」という声も当然あると思います。
しかし、Cordaはブロックチェーンでありながら全員ではなく取引の関係者のみに改ざん不可能な情報を共有するというユニークな設計をしています。よって「9月15日までにバイクのエンジンが2000個エンジンメーカーから納品される予定だ」「バイクのエンジンを構成するピストンは無事に8月1日にエンジンメーカーに納品された」「予定通りエンジンメーカーにピストンが納品されたこと自体はわかるが、原価はわからない」といった仕組みを構築することが可能です。
タイでは東南アジア最大の建材・素材メーカーがCorda上にB2Pという受発注プロセスの電子化ソリューションを構築しました。すでに5000社以上に導入されており、提携するサイアム商業銀行がサプライチェーン上の企業に売掛金担保融資を提供しています。
また、横のサプライチェーンでは三井住友銀行がMarco Poloという貿易金融ソリューションを日本で展開予定です。紙中心だった貿易取引業務をWeb画面で完結させ、サプライヤーに運転資金ソリューションを提供する試みが、もう秒読みのところまで来ています。
*張り付けた記事は去年の12月作成なので、情報がかなり古いですが参考までに。
Deep Tier Financing ~サプライチェーンファイナンスの先へ~
今回紹介する『Deep Tier Financing』は、ブロックチェーンを用いたサプライチェーンファイナンスの1つの考え方です。
主に階層構造になっている縦のサプライチェーンに向けたサプライチェーンファイナンスソリューションで、完成品メーカーの売掛債権をトークン化して下流のサプライチェーンに流通させることで、中小企業でも比較的低い利息で運転資金を確保できます。
少し複雑なので以下の図を用いて順を追って説明します。主な登場人物はバイクメーカー、タイヤメーカー、ホイールメーカー、ナットメーカーに加えて銀行です。
サプライチェーンの完成品メーカー(ここではバイクメーカー)は分割可能な売掛債権トークンを発行します。
金融機関はアプリの提供と売掛債権トークンの管理・償還を行います。
電子化された売掛債権トークンは、アプリ上で銀行に提示すると現金に替えることができるし、そのまま同一サプライチェーン上の他の企業への支払いにも使えます。
順番に解説すると
分割可能なので、一部を支払い、残りを現金にすることも可能です
例えば、通常の売掛債権融資であれば、ナットメーカーへの融資の利率はバイヤーのホイールメーカーの支払い能力を評価することで決められます。
一方Deep Tier Financingではサプライチェーンの上から下まで、頂点の完成品メーカーの信用力をもって利率が決定されるといった特徴があり、川下のサプライヤーでも低金利で融資を受けることができます。
金融機関は完成品メーカーのみ支払い能力を審査すれば、川下のバイヤー1社1社を審査する必要なくサプライチェーン全体に融資が可能です。
Deep Tier Financingのもたらす嬉しいことを登場人物別に整理するとこんな感じです。
終わりに
前編に書いたようにAmazonや楽天をはじめとしたIT企業は、蓄積されたデータを武器にトランザクションレンディング等で金融サービスをどんどん拡大させています。
最近ではGoogleも銀行や保険のサービスに進出しており、伝統的な金融機関が保有する顧客情報基盤の優位性がゆらぎつつあります。
10年後や20年後、日本を支える製造業の企業たちと取引をしているのは、長年をかけて関係性を築いてきた金融機関か、新興のIT企業のどちらになるのでしょうか?
ブロックチェーンプラットフォームCorda上に構築された金融ソリューションは伝統的な金融機関にとって新たな武器になるかもしれません。
三井住友銀行のように、未来に向けて走り出す金融機関がこれからどんどん増えてくることを祈っています。
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
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(記事作成:SBI R3 Japan/ Riku Nakazawa)