- 補正推計では、預金金利0.01%上昇で10週成長率が平均15%から約6%に
- USDCの反応はUSDTより強く、準備金規制も論点に
預金金利とステーブルコインの代替関係
国際決済銀行(BIS)は13日、ステーブルコインと銀行預金が代替関係にあるかを検証したワーキングペーパー(No.1382)を公表した。両者は部分的な代替関係にあり、米国の銀行が預金金利を引き上げると、ステーブルコインの時価総額の伸びが鈍る傾向が確認された。
執筆者はBIS金融経済局のイニャキ・アルダソロ氏と、アンダーセン金融経済研究所のラシャド・アーメド氏。2019年1月から2025年6月までの米国の週次データ339週分を使い、預金金利の変化がステーブルコイン時価総額に与える影響を推計した。論文の見解は執筆者個人のもので、必ずしもBISの見解を示すものではない。
ステーブルコインと普通預金のような満期のない預金は、価格が安定し、即時に払い戻せる点で似ている。決済に使えるうえ、保有者にほぼ利息が付かない点も共通する。ステーブルコインの普及が銀行の低コストな資金基盤を奪い、融資機能を損なうとの懸念は以前からあったが、両者が実際に代替関係にあるかを示す実証研究は乏しかった。なお、論文は資産間の資金配分を分析したもので、ステーブルコインの成長が銀行預金や融資の総額を必ず減らすとまでは示していない。
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BISのデ・コス総支配人がジャクソンホール会議でステーブルコインに対する懸念を表明し、トークン化預金を推奨した。これに対しテザーのアルドイノCEOが銀行預金の「部分準備制度」への懸念を指摘し反論した。
預金金利0.01%上昇で成長率は15%から12%に
分析によると、預金金利が1ベーシスポイント(0.01%)上昇すると、その後10週間のステーブルコイン時価総額の成長率は約2.8ポイント低下する。平均成長率15%が約12%まで鈍る計算だ。ステーブルコインへの資金流出を受けて銀行が預金金利を上げるという逆向きの因果を補正した推計では、低下幅は約9.1ポイントと約3倍に広がり、成長率は約6%にとどまる。
補正には、預金金利の動き方にある「折れ目」を利用した。政策金利(FF金利)が約3%を下回る局面では、銀行は預金金利をほとんど動かさない。3%を超えると、預金金利をより大きく連動させる。短期国債(Tビル)利回りにはこうした非線形性がない。ステーブルコインを除く仮想通貨の時価総額では同様の影響は見られず、仮想通貨市場全体の循環を拾っているわけではないことも確かめた。
銘柄別では、米サークル(Circle)のUSDCの反応が強かった。補正前の推計で、10週間後の低下幅は約4.8ポイントで、テザー(Tether)のUSDTの約1.9ポイントを上回る。論文は、米国の機関投資家やDeFi利用者が多いUSDCでは預金との乗り換えが起きやすく、オフショアや新興国での利用が中心のUSDTは反応が弱いと説明した。
準備金規制と利息付与が論点に
論文は、成長が鈍っても時価総額が減少に転じるとは限らない点を強調する。補正前の推計に基づくと、平均的な10週間の伸びを打ち消すには、1週間で約5ベーシスポイントという、標準偏差の6倍に当たる預金金利の上昇が必要になる。2022年から2023年の利上げ局面では時価総額が約30%減った。論文は、預金金利改定の影響の積み重ねに、FRBの利上げやテラUSD(UST)の崩壊、FTXの破綻が重なった結果と整合的だとしている。
政策面では、準備資産の一部を銀行預金で持つよう義務付ける案の是非を検討すべきだとした。銀行の資金基盤への悪影響は抑えられるが、預金保険の対象外となる大口預金が少数の銀行に集中し、金融システムが脆くなるおそれもある。発行体が保有者に利息を払うことを認めるかどうかも論点に挙げ、マネーの形態ごとに許される利回りが預金とステーブルコインの境界を決めるとの考えを示した。
分析の限界も明記している。補正に使った変数の強さを示すF値は9.78で、目安とされる10をわずかに下回る。データに含まれる高金利局面は2022年から2025年の1回だけで、利回り付きステーブルコインやトークン化MMFの拡大で代替の構図が変わる可能性も論文は指摘した。
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