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BIS総支配人、ステーブルコインは大規模決済に不適格と指摘 テザーCEOは反論、銀行の部分準備を問題視

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ステーブルコインの3つの課題

国際決済銀行(BIS)のパブロ・エルナンデス・デ・コス総支配人は28日、ジャクソンホール会議で、現在のステーブルコインは大規模な決済手段として信頼に足るものではないと批判した。その上で、銀行預金をトークン化した「トークン化預金」の方が、将来のデジタル決済基盤としてより有望だとの考えを示した。

デ・コス氏は同会議の講演で、ステーブルコインとトークン化預金を「通貨に求められる特性」という観点から比較し、ステーブルコインは、必要とされる以下の三つの要件を満たしていないと述べた。

  • 単一性の欠如
    異なる銘柄(例:USDTとUSDC)間では、二次市場での売買が必要となり、額面から乖離するおそれがある。額面での確実な償還を強制する仕組みも存在しない。
  • 相互運用性の不足
    ステーブルコインが流通するパブリックブロックチェーンは分断されており、チェーン間の移動にはリスクやコストが伴う。
  • 金融健全性の課題
    自己保管型ウォレットでの保有が多く、特にウォレット間の直接送金ではマネーロンダリング・テロ資金対策の適用が難しい。不正取引への利用増加も懸念されるほか、プライバシー・データ保護とのバランスも今後の課題となる。

一方、トークン化預金は口座型の銀行債務であり、中央銀行マネーによる銀行間決済を通じて、同一通貨単位の価値を額面通り維持できるとデ・コス氏は説明した。既存の金融システムの基盤を維持しながらトークン化技術を活用できる点で、より有力な選択肢と同氏は主張する。相互運用性やクロスボーダー決済における摩擦といった課題は残るとしつつも、中央銀行マネーと監督下にある民間金融機関から成る二層構造が、金融システムへの信頼を支える基盤となっていると強調した。

関連記事:ダラス連銀が警告、トークン化預金は銀行にとって諸刃の剣か 

米ダラス連銀は、トークン化預金は迅速な決済や効率的な流動性管理をもたらすと期待される一方で、その普及が銀行預金の安定性を低下させ、金利リスク許容度を最大7,000億ドル縮小させる可能性があると分析した。

マクロ金融面への影響

BISが懸念するのは、ステーブルコインの普及によって銀行預金が流出し、銀行の資金調達や信用供給に影響が及ぶ可能性だ。

デ・コス氏によれば、ステーブルコインの準備資産の構成が、マクロ経済への影響を左右する重要な鍵を握る。

準備資産を卸売銀行預金とすれば、銀行の資金調達コストが上昇し、信用供給が引き締まりかねない。短期国債を保有する場合は、銀行から高品質流動資産が流出し、中央銀行準備金を保有する場合は、銀行部門から準備金が吸収される。

いずれのケースでも、当初は銀行の流動性指標が悪化する。その後、銀行は貸出金利の引き上げや流動性資産へのシフトといった対応を迫られるだろう。デ・コス氏は、こうした影響が特に中小銀行や中小企業向け融資に及びやすい点を懸念事項として挙げた。

また、ドル建てステーブルコインへの海外需要は、短期国債への純需要を押し上げ、短期金利を低下させることで、米国の財政余地を拡大させる可能性がある。その一方で、こうした普及は米国外での「デジタルドル化」を促進し、各国の金融政策の独立性や通貨主権を脅かすリスクも高めると同氏は警鐘を鳴らしている。

テザーCEOが反論

ステーブルコインUSDTを発行するテザー社のパオロ・アルドイノCEOは30日、X上でデ・コス氏が支持したトークン化預金を厳しく批判した。

ステーブルコイン

→ 流動資産(国債など)で100%裏付けられた金融商品
対
トークン化銀行預金

→無保険で、実質的には「指切りげんまん」に過ぎない銀行預金(通常、流動資産による裏付けは10%程度)

BISがステーブルコインを警戒するのは当然だ。ステーブルコインによって、銀行の「裸の王様」のような実態が露呈しているからだ。

アルドイノ氏は、完全な準備金に裏付けられたステーブルコインが存在するなかで、なぜ利用者が部分準備型の銀行預金に貯蓄を置く必要があるのかと疑問を投げかけた。ステーブルコインの方が安全だと認識した利用者が、銀行預金からステーブルコインへ資金を移し始めれば、金融システムに大きな変化が生じかねないというのが同氏の見立てだ。

銀行預金からステーブルコインへの資金移動が進めば、銀行は安定した預金基盤の一部を失うことになる。アルドイノ氏は、こうした動きによって銀行の部分準備の構造的な問題が浮き彫りになると主張する。

「われわれはいま、その結果を思い知る段階に入っている」 ー アルドイノ氏はそう投稿を締めくくった。

関連記事:JPモルガンなど米銀、ステーブルコイン反対から発行検討へ転換か=報道

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