2017年と2018年は仮想通貨業界において激動の年となりました。相場の急騰からいわゆる仮想通貨バブルの崩壊、そして世間の仮想通貨に対する認識の変化。
「DMM Bitcoin」を率いる業界のプレイヤーは、その流れをどう捉えているのか。また、2019年は業界にとってどのような年になるとみているのか。本コラムでは、交換業者独自の視点からそれについて語っていきます。
交換業者がみる仮想通貨業界の現状
交換業者も、高度な成長風景(2017年)と、その後の凋落(2018年)と、業界の裏表を経験しました。他の金融業の業態の人たちが経験してきた、高度成長と下落が非常に凝縮された状態です。
例えるなら、株式でいうところの5、6年、あるいは10年かけて経験するようなサイクルが、凝縮された短期間で展開されたような形です。それがこれまでの2年間だったのではないでしょうか。
そのような背景をふまえて、現状を理解するために、これまでの流れを説明していきます。
まず、業界における転機となったのは、2017年4月の仮想通貨交換業の登録制度の開始でしょう。これによって、仮想通貨の法律上の位置づけが明確になりました。ここが業界のスタート地点であったといえます。
また、これを契機に、一般の人たちの間での仮想通貨の認知も高まりました。日本においても、2013、2014年から先行してやってきた大手さんもいたのですが、特に一般の人たちの間では、仮想通貨とは何かというところが曖昧模糊としている状況でした。
それまで狭いコミュニティで認知されていた分散台帳技術というものが、その将来への期待感を伴いながら、一般の人々の間でも知られるようになったのがこのタイミングです。
そして、内容の実現可能性は別として、ICOプロジェクトも2017年は盛り上がりをみせ、これだけあればどれかは成功するだろうといった期待感が世間で醸成されていきました。
「ハードフォーク」への期待感で流入したニューマネー
業界の流れの中で、大きな契機の1つとなったのが、2017年8月に起きたビットコインのハードフォークです。
考え方が正しいかは別として、分散台帳技術やICOへの注目が集まる中で、「ハードフォーク前にトークンを持っていると、無償で新たなトークンがもらえるらしい」とハードフォークに対する期待感が高まりました。
その結果、多くのニューマネーが市場に流入、特に2017年後半は、ハードフォークの度にビットコインやアルトコインが大きく価格上昇するような状況となりました。
仮想通貨や分散台帳技術が、高度な成長を遂げていくと多くの人がみたのが2017年です。
不信感が高まった2018年
2018年は2017年とは対照的な1年でした。仮想通貨交換業者がハッキングされるといった重大インシデントを受けて、交換業者のセキュリティ面などに対し、世間からの不安感が高まりました。
また、イーサリアム上から独自チェーンへ移行するプロジェクトもある中で、ICOプロジェクトは次々ととん挫。仮想通貨に対する不安感や不信感が高まり、年を通し断続的な価格下落が起きました。
2017年は好意的に捉えられていたハードフォークも、分岐ごとに価格下落するなど多くが失敗におわりました。ただ、これによって「ニューマネーが流入しない中でのハードフォークは単純に価値が分化される」という、ハードフォークのある種の本質が明らかになったのではないでしょうか。
「仮想通貨は本当に存在価値があるのか」といった世間の意識が高まった年だったと思います。
仮想通貨が存続する条件とは
業界にとって険しい年となった2018年ですが、仮想通貨の存在だったり、電子的に価値や権利を証票するトークン、それらの存在意義が完全に否定されたのかというとそうではありません。
また、仮想通貨の意義が発揮できるかは別として、現時点では、仮想通貨は法定通貨との交換経路が残っている限りは存続可能です。ただし、そこがなくなった場合、仮想通貨の存続は厳しいでしょう。
トークンだけのエコノミーは理念的には正しいですが、そこで暮らすには結構なユートピアが必要。少なくとも、エネルギー源を仮想通貨で支払われない限りは厳しいです。
エネルギーを消費して何かを生産する過程では必ず、いわゆる「キャッシュ」が必要で、キャッシュと交換ができないというのは大きな問題となります。
ちなみに、日本では法定通貨との交換経路は法によって確保されているので存続可能です。資金決済法と金商法で、暗号資産という存在が確立されています。
この「存在しつづけることが出来る」というのは重要な点です。存在することが出来れば、雨が降っても嵐がきてもいつかは去っていくでしょう。
再び流れ込むマネー
2019年は、豪雨も終わり、晴れ間がさしこもうとしている状態ではないでしょうか。4月、5月の価格急騰もその証左であると思います。
価格の上限については誰にも分りませんが、少なくとも、市場から出ていくお金より、入ってくるお金の方が大きければ価格は上昇します。
価格高騰は、ニューマネーの流入を示すものであり、それを契機にまた価値が見直されていくのではないでしょうか。
2018年末は、口座の開設数も取引高も減少していましたが、特に今年の4月以降はそのいずれも増加傾向にあります。ただし、ボラティリティは依然高く、その点に留意して取引する必要があるでしょう。
2019年で注目のポイント
2019年で1つ重要な点は、特に日本における法制度の見直しなど、イベントが多く控えていることです。
それらが吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、少なくとも日本の法制度が再び見直されることは、交換業者にとって、一般の方々からみてより安全に取引、所有できるようになるという信頼につながるのではないかという点で前向きに捉えています。
他業者もそうであると思いますが、DMMは法令諸制度の改正に対して前向きな姿勢です。
信頼感があれば、出ていくお金より、入ってくるお金の方が大きくなるでしょう。そうすると、相場も安定して成長していく可能性もあります。
2017年も法改正に伴い、仮想通貨の認知が向上、市場にニューマネーが流入しました。今回の法改正によっても、同様の流れで信頼を獲得することが可能ではないかと思います。
法改正が業界に与える影響とは
法改正によって、仮想通貨交換業者個々では、内部管理体制の一層の強化、コールドウォレットで管理されていない顧客資産に関しては弁済用に財産を持たなければならないなどコスト負担は大きくなります。
ただ、事業者がそのような体制を築かなければならない環境はお客様からの安心感や安定感は高まるでしょう。
2019年は法令諸制度への対応が最優先で、安心安全な産業であることをお客様に理解を深めてもらうことが重要となります。
各業者は法令諸制度の改正にむけて財務強化をはじめています。仮想通貨交換業はこれまで以上に資本が必要となることから、スタートアップが新たに参入することは困難になることが想定されます。
また、現在登録の行列待ちがありますが法改正後は証券会社と同等の事業基盤が必要となるため、それに対応できる業者は少ないでしょう。ただこれには、登録業者はある程度の財務力があることのお墨付きを得ているといった側面もあります。
相場の回復に期待感をもって乗っていきたいと思いつつ、協会の規則も固まり、法律も改正されていく中で、それに粛々と対応しながら、業界の安心感、信頼性を高めていくことが必要であると皆が思って取り組んでいるのが現状であるといえるでしょう。
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