ビットコイン購入を承認したテスラ取締役会のメンバー、仮想通貨企業2社に出資──利害対立を招く可能性も
仮想通貨企業2社に出資
米電気自動車(EV)メーカーのテスラがビットコイン(BTC)を購入することを承認した同社取締役会のメンバーが、暗号資産(仮想通貨)関連企業に出資し、その企業でも取締役会に所属していることが分かった。
英メディア「The Telegraph」によると、「この兼任が利害対立を招く可能性がある」と指摘する声が専門家から上がっている。
テスラについては今月、総額15億ドル(1,600億円相当)のビットコインを購入したことが明らかになった。これを受けてビットコインの価格が過去最高値を大幅に更新するなど、市場にも大きな影響を与えている。
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今回問題視されているのはテスラの社外取締役Antonio Gracias氏で、同社監査委員会のメンバーの1人だ。
Gracias氏は投資企業「Valor Equity Partners」の創設者で、同社の公式ホームページによると、最高経営責任者(CEO)と最高投資責任者(CIO)でもある。
金融情報サービス企業「PitchBook」のデータによると、Gracias氏は仮想通貨のカストディ企業BitGoと機関投資家向けの取引所ErisXの取締役も兼任しており、両企業に出資もしているという。
テスラが投資方針を変更してビットコインを購入するという投票に、Gracias氏が参加していたかは明確になっていない。しかし複数のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の専門家が、この兼任が利害の対立を招く可能性があると述べている。
コロンビア・ビジネス・スクールでマネージメントを教えるBill Klepper教授は、「Gracias氏はビットコインを購入するかの判断に参加するのであれば、事前に法律顧問に相談すべきだったが、実際に行なったかは不明だ」と指摘。
デラウェア大学で金融を専門にするCharles Elson教授は、複数の仮想通貨企業に関与していることについて、「Gracias氏の立場で慎重に行動するのであれば、ビットコイン購入の判断には関与しないことが賢明だ」と説明した。
テスラのコーポレート・ガバナンス
テスラのコーポレート・ガバナンスは、以前に問題になっている。
イーロン・マスクCEOが以前、ツイッターに同社の株を非公開化することを検討しているなどと書き込み、その後に撤回。その際に株価が大きく動いたことを受け、SEC(米証券取引委員会)は投資家を欺いたと指摘した。マスク氏は2018年、罰金を支払い、当時の会長職を退くことで和解している。
この時にテスラのコーポレート・ガバナンスが機能していないことを問題視する声が上がった。マスク氏に権限が集中して、監査役となるはずの取締役会が行動を制御できなかったという。
マスク氏に長期に渡って協力し、2007年からテスラの取締役会の役員となったGracias氏は、今年同社の社外取締役を退く予定だと報じられている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します