イーサリアムL2ソリューション「Arbitrum」ローンチへ 最大手DEXのUniswapでも採用検討
Arbitrumがローンチへ
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のレイヤー2ソリューション「Arbitrum(アービトラム)」が、5月28日にローンチ予定であることがわかった。海外版CoinDeskの取材で判明した。
Arbitrumは、米プリンストン大学の研究チームが主となる開発企業Offchain Labが開発したもので、2020年10月にテストネットをローンチした。
このレイヤー2技術は、イーサリアムバーチャルマシン(EVM)にフル対応するoptimistic rollupを採用している。主に、イーサリアムのネットワークトラフィックによる実質手数料にあたる「ガス代」高騰問題を解決するために開発されたソリューションだ。
Optimistic rollup(オプティミスティック・ロールアップ)といえば、「optimism(オプティミズム)」が代表的で、今年1月にメインネットがローンチされた。
Arbitrumの特徴としてはオンチェーンに保存する情報が少ないことや、イーサリアムのガスリミットを超えるような計算とストレージが必要なコントラクトを処理できることがあるという。(LayerX資料参照 )
また、Arbitrumのロールアップ技術では、現在イーサリアムのガス代より270分の1に削減可能で、送金速度もメインネットより早いとされる。直近ではレイヤー2ソリューションである「Polygon」のMATICトークンの価格高騰がエンジニアや投資家の関心を集めており、イーサリアムのスケーラビリティソリューションへの期待は大きい。
一方、ArbitrumやOptimismはネイティブトークンを設けていないネットワークだ。
Offchain Labは、Arbitrumがイーサリアムのデフォルトレイヤー2ロールアップの基準になることを目指している。すでに大手仮想通貨取引所OKExはArbitrumへの対応を発表しており、150以上のプロジェクトがローンチ日よりArbitrumへアクセスできるようオンボーディングしているという。
UniswapもArbitrum採用検討
Arbitrumのローンチ日が迫る中、最大手分散型取引(DEX)のUniswapでは、Arbitrumへの移行がコミュニティから提案された。
Uniswapは先日、v3バージョンにアップグレードしたが、ガス代の改善ではOptimismのoptimistic rollupを実装しておらず、スケーリング法が待たれる状況だ。
Uniswapの責任者Hayden Adams氏はSNSで今回の提案の投票進捗を報告。現在、賛成票が4141万UNIで99%近く、不賛成はたったの203UNIトークンとして投票されている。
Arbitrumを実装する可能性について、Adams氏は提案が可決されることを予測し、すでにインターフェースのサポート作業に取り掛かっており、スマートコントラクトの実装作業も予定していると話した。また、「レイヤー2を実装することによってUXのベネフィットを最大限で受けることが可能だ。しかし、この技術は未だ試験的な技術であるため、慎重に行っていく必要がある」と指摘した。
また、本来計画するOptimismへの移行については、「依然としてOptimismの技術を期待しており、将来のデプロイメントに向けて継続的に作業を続けていく」と展望を語った。
5月29日追記情報
「Arbitrum」のメインネットベータ版は日本時間29日に正式にローンチされた。
ローンチされたのは、「Arbitrum One」というベータ版ネットワークで、開発者向けのものだ。
また、すでにEtherScanやMCDEXなど一部のArbitrumのエコシステムパートナーについて発表しており、今後は全てのユーザーにリリースできるようアプリやインフラのオンボーディングに取り掛かっていると説明した。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します