DeFiの「TVL」過去最高更新でイーサリアム相場を後押し、下落基調のビットコインと明暗を分ける
ビットコイン相場と金融マーケット
月が明け1日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比-0.63%の516万円(46,854ドル)で推移している。
8月下旬以降、上値の重さの目立つビットコインと比較して、相対的に強いのがイーサリアムである。ETH価格は8月31日にレジスタンスライン(上値抵抗線)をブレイクして直近高値を更新。前日比+5.79%の3,400ドル台に達した。
上昇の背景には、連日のように報じられるDeFi(分散型金融)やNFT(非代替性資産)市場における機関投資家の参入と市場規模の急拡大、ロンドン・ハードフォーク後の大量バーン(焼却)、次世代チェーンETH2.0の思惑など複数要因がある。
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下図にあるように、BTC建てでみるとより顕著だ。ロンドン・ハードフォークの実装された12,965,000ブロック(8月5日)以降のパフォーマンスでは、相対的な強さが際立っているように見受けられる。
DefiPulseのデータでは、DeFiプロトコルへの預け入れ総額を示す「Total Value Locked(TVL)」が、今年5月のアルトシーズンのピークを上回り、過去最高の9兆円規模を記録した。牽引するのは、レンディングプラットフォームAave(AAVE)やMaker(MKR)だ。
国内では20年10月、学習履歴をブロックチェーンで管理するeラーニングプラットフォーム「PoL」を運営するtechtecが、日本企業で初めて英Aaveからシードラウンドの資金調達を実現している。
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一方、NFT市場の発展と基盤となるイーサリアム経済圏の飛躍に伴い、ネットワーク手数料(Gas代)などのスケーラビティ問題も深刻化。ここ最近の相場で資金流入が目立つソラナ(SOL)やポルカドット(DOT)など新興勢力の台頭に繋がっており、今後も注視すべき構図と言えよう。
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時価総額TOP10銘柄でのパフォーマンスでは、ソラナが前週比+52.9%と群を抜いているほか、ポルカドットは、前日比+12.7%と直近24時間で最も高い騰落率を記録した。
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オンチェーンデータ分析
オンチェーンデータ分析企業のGlassnodeの週次レポートによれば、現在の仮想通貨市場は、大量のオンチェーン・ボリュームノードのトップエンドという重要局面に位置している。 BTCコインの供給量が最後に取引された価格帯を考察したデータでは、3つの重要なオンチェーンボリュームバンド(価格帯)が示された。上図の緑のゾーンは、年初の21年1月と21年5月〜7月に推移した価格帯の重なる「31,000ドル〜40,000ドル」。ここでは、約300万BTCもの大量の買いが入って蓄積されており、強力なサポートゾーンとして機能し得るとした。
オレンジのゾーンは、9月1日時点で推移する「45,000ドル〜50,000ドル」の価格帯だ。165万BTCのコストベースがあり、これもサポートとして機能する可能性はあるとしている。そして赤のゾーンは、21年3月から5月の間に蓄積され、未決済建玉で含み損を抱えている「53,700ドル〜59,000ドル」の価格帯となる。
今年5月の暴落局面では最大-50%以上のマイナスに達した。投資家がコストベース(建値付近)で撤退しようと試みた場合、次の上昇局面でオーバーヘッドの上値抵抗帯になる可能性もあるとの見解を示した。
Glassnodeがもう1つ示した指標が、「aSOPR(Adjusted SOPR)」だ。SOPRは「Spent Output Profit Ratio」の略で、BTCの利益率を表す。
買値と売値の価格差から算出していて、「1.0」を超えると投資家平均が利益確定出来ていることを示しており、「1.0」を下回ると、投資家平均が損切り水準にあることを意味する。
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Glassnodeは過去に、「aSOPR」が極端に高いと弱気相場が始まるサイン。「aSOPR」がマイナスから「1」に戻った時が、弱気相場から強気相場に転じるサインだと言及していた。
今回の相場は、20年3月のコロナ・ショック後と同様の「aSOPR」と価格の推移を辿っており、投資家の投げ売りを示す「キャピチュレーション(降伏期間)」を経て、その後売り圧力を吸収するようにして上昇した点を指摘。「(大口)投資家が、押し目(dip)を買い入れたことを示す」とした。
Glassnodeはこのような傾向から、「BTC価格及びブロックチェーン上の活動記録、供給のダイナミクスの間でチェーン上の相違が生じ、初期の”強気衝動”と酷似した市場構造が生まれた」と総括している。
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