今回の相場急落が5月の暴落と異なる理由、アルゴランド(ALGO)が前週比で大幅続伸
ビットコイン相場と金融マーケット
10日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比+0.91%の513万円(46,839ドル)となり、急落後にありがちな様子見基調で揉み合っている。
一方、アルトコイン市場では押し目買いが相次ぎ、一足先に反発を強めており、ソラナ(SOL)やアルゴランド(ALGO)など一部銘柄は高値を更新した。投資家のセンチメントは毀損していないように見受けられる。
オンチェーンデータ考察
主要仮想通貨取引所に預けられたスポット・リザーブ(現物の準備金高)量の変化は投資判断の参考として活用され得る。
リザーブの増加傾向は、より多くの投資家が仮想通貨を取引所に送金・売却し、米ドルや日本円などの法定通貨、あるいはUSDTなどドルの価値に担保されたステーブルコインに換える準備をしていることを示唆する。
反対に、減少傾向は、投資家が中長期保有を前提にしたコールドウォレットへの送金や、OTC(店頭)取引を通じた売却を検討していることを示唆することになる。
CryptoQuantに投稿したCristoff氏の考察によれば、主要仮想通貨取引所の”外貨準備高”は2021年初頭、大相場に向けて急速に減少していた。これは、投資家の買い集め(蓄積)行動を強く示唆するものだ。
しかし、今年5月上旬に迎えた”アルトシーズン”のピークから同メトリックは急上昇し始め、取引所内の現物売り圧力が上昇、連動するようにBTC価格も大幅下落している。
前回の暴落時は、これまでになかった中国政府によるマイニング(採掘事業者)締め付けやそれに伴うBTCハッシュレート(採掘速度)の激減、イーロン・マスク率いるテスラ社のビットコイン決済導入停止などネガティブサプライズが相次ぎ、投資家のパニック売りをもたらした。20年末から強気相場が半年以上続いていたこともあり、現物主導の利益確定売りも重なった。
その点今回は、現物売りは限定的で先物市場などデリバティブ主導の一過性の売り圧力に見舞われただけの可能性が高い。先物OI(未決済建玉)状況などを合わせて見る限り、約30億ドルの総損失を伴う大規模なロスカットによって、結果的にオーバーシュート(過剰な下落)が引き起こされたものとみられる。
今回の急落局面では、少なくともBTC準備金にインフロー超過の気配は見られず、引き続きローカルの最低水準にあるからだ。
したがって、今回はデリバティブ市場の「過熱感が一旦リセットされた」に過ぎないと見立てることに整合性は取れている。42,000ドル前後の重要なサポートライン(下値支持線)を4h〜日足実体で下回らない限り、中期トレンドが崩れたとは言い切れない。
もっとも、短期チャートが崩れていることに対する警戒感は燻っており、しばらく先行き不安定な相場になる可能性もあるなど慢心は禁物だろう。また、米株式市場など伝統金融が早期テーパリングなどの影響でリスクオフに傾けば、仮想通貨市場も影響され得るため十分留意したい。
なお、急落前後にシステムダウンを引き起こしたBitfinexなど一部取引所は、トレーダーのアクセス急増のほか、意図的に過剰な負荷をかけることでサービスを妨害する「DDoS攻撃」を受けた可能性があることも指摘されている。
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個別銘柄の動向
個別銘柄では、Coinmarketcap(CMC)時価総額ランキング17位のAlgorand(ALGO)が堅調だ。仮想通貨市場の急落があったにもかかわらず、前日比+11.1%、前週比+76.9%と続伸し、10日時点で2.14ドルに達した。
分散型パブリックチェーンAlgorandは、チューリング賞を受賞した暗号学者の米マサチューセッツ工科大学教授シルビオ・ミカリ(Silvio Micali)らによって設計された。Proof-of-Stake(Pure PoS)を採用するブロックチェーンプラットフォームであり、ALGOはそのネイティブ通貨だ。
分散型アプリケーションとDeFiプロトコル用の高速かつスケーラブルなシステムとして設計されたAlgorandは直近、DeFi(分散型金融)市場でも存在感を強めつつある。ユーザーはサードパーティの仲介なしで仮想通貨取引、借用、貸与することができる。
DeFi Llamaの統計データによれば、DeFiスマートコントラクト内にロックアップされた預入総額は約9千万ドルに達した。イーサリアムは1,250億ドル相当、ソラナは86億ドル相当と桁違いの規模であるが、ALGOの伸長率は前月比+50%と特に高い。
Algorand公式の最新の寄稿記事によれば、アルゴランドのエコシステムに初めてのDeFiであるYieldlyが21年6月に登場して以来、続々と新たなDeFiが登場しつつある。
また、1日には金融サービス会社Koibanxが、エルサルバドル政府とアルゴランドを用いたブロックチェーンインフラストラクチャをラテン・アメリカで開発する契約を締結したと発表した。7日に世界初となるエルサルバドルのビットコイン法定通貨化法案が施行されたことに伴い、思惑買いにつながっているものとみられる。
アルゴランドでは、国家レベルのプロジェクトとして、マーシャル諸島の国家通貨SOVやコロンビアのワクチン・パスポート「VitalPass」発行など、すでに多くのプロジェクトが展開されており、技術力もさることながら、国家レベルでの事業開発力も評価されている。
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