ステーブルコイン発行のFrax Finance、準備金にL1チェーンの仮想通貨導入を検討
FRAXの担保資産の多様化
米ドルの価値に固定されたステーブルコイン「FRAX」を発行するFrax Financeは、準備金にイーサリアム(ETH)をはじめとするL1ブロックチェーンの暗号資産(仮想通貨)の導入を検討している。この戦略は、準備金にビットコイン(BTC)を保有するテラ(LUNA)と類似する。
Fraxは価格を一定に保つためにアルゴリズムを活用しており、ガバナンストークンのFrax share(FXS)とFRAXをそれぞれ発行・バーン(焼却)することで供給量を調節し、価格を維持する仕組み。さらに、USDCによって部分的に担保する「フラクショナル・リザーブ(部分的な準備金)」モデルで安定性を高めている。
プロジェクトは発足当初から、システムが軌道に乗った時点でイーサリアムやビットコイン(BTC)といったL1ブロックチェーンの仮想通貨を担保に追加することを計画していた。CoinGeckoのデータによると、FRAXの時価総額は約3,000億円(27億ドル)でステーブルコイン銘柄としてはテラUSD(UST)とダイ(DAI)に次ぐ時価総額6位(執筆時点)。
仮想通貨メディアThe Blockに対しFrax FinanceのSam Kazemian共同創設者が7日に語ったところによると、L1資産を準備金に含める動きはFRAXのマルチチェーン戦略の拡大を見据えた動き。仮想通貨の購入を通じて、各ブロックチェーンでFRAX建ての取引シェア拡大につなげるねらいだ。
FRAXのマルチチェーン戦略
現在のところ、FRAXはイーサリアム上で最も流通しているが、アバランチ(AVAX)、BNBチェーン(BNB)、ポリゴン(MATIC)、ソラナ(SOL)など他の12種類のチェーンでも取引されている。
Kazemian氏によると、ステーブルコインFRAXの需要に比例して各チェーンで購入する仮想通貨の比率を高めていく。資金源となるのはFRAXのシニョリッジ(通貨発行益)と、レンディングや流動性提供といったDeFi(分散型金融)における運用益とされる。Dune Analyticsによると、Fraxのトレジャリーは仮想通貨とステーブルコインで計2,500億円(20億ドル)相当に上る(執筆時点)。詳細はガバナンス投票を経て決定される。
ステーブルコインの準備金に仮想通貨を含める動きは、「TerraUSD(UST)」を発行するテラ(LUNA)が先行している。22年2月に、USTの拡大に向けてLUNAと相関性が低いビットコインについて、USTの準備金への導入が開始。テラ(LUNA)の非営利組織である「Luna Foundation Guard(LFG)」は6日時点に35,767.98BTC(2,000億円相当)を保有していた。さらにLFGは8日、124億円(1億ドル)に相当するアバランチ(AVAX)をUSTの準備金として購入する予定を公表した。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します