米国初、ビットコイン利用の制裁回避で刑事告訴

仮想通貨による制裁回避を告訴

米国の連邦判事は先週、経済制裁を回避するために暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を使った被告に対する刑事告訴を承認した。仮想通貨を用いた制裁回避について、米国で刑事告訴が行われたのは今回が初となる。

起訴内容

告訴を承認したワシントンのZia M. Faruqui連邦判事の意見書によると、米捜査当局は、匿名の被告が制裁対象国に存在するオンライン決済プラットフォームの運営を米国から助けていたとしている。

この決済プラットフォームは、仮想通貨などを使用して米国の制裁を回避するためのサービスを提供していると宣伝していたという。訴状自体はまだ公開されていないため、被告やプラットフォーム、制裁対象国の名前は現時点で明かされていない。

被告は、米国拠点の金融機関口座を持っており、たびたび顧客のために数十万円(数千ドル)を受け取って、制裁対象国に送金していた。また、米国を拠点とする仮想通貨取引所にも口座を開設。ビットコインを売買し、その口座から米国外の仮想通貨取引所にある2つの口座に数千ドルを送金していたという。

被告がこれらの海外仮想通貨口座に資金を送った直後、時には数分以内に、制裁対象国に関連するIPアドレスが、これらの口座にアクセスしていた。

被告は、この2つの口座を使用して、制裁対象国のプラットフォームのために、約13億円(1,000万ドル)以上のビットコインを送信していたとみられる。

Faruqui判事は、こうした内容を引用して告訴を承認し、「仮想通貨は追跡不可能」という考えや、「仮想通貨には制裁措置が適用されない」という考えは間違っていると述べた。

また、「司法省は、仮想通貨を含め外国資産管理局(OFAC)の規制を遵守しない個人および団体を刑事訴追する能力があり、今後も訴追を行っていく」としている。

外国資産管理局(OFAC)とは

英語でThe Office of Foreign Assets Controlで略称はOFAC。米財務省の所属機関。米国の対外・安全保障政策に基づいて、経済制裁の実施を司っている。

▶️仮想通貨用語集

OFACは取引監視ツールを推奨

Faruqui判事は、OFACが、「制裁を受けた区域から仮想通貨取引所にアクセスしようとするユーザーは、仮想通貨企業にとって特にリスクとなる」と強調していると説明した。

OFACは、仮想通貨企業などに、制裁対象となる取引を識別する「取引監視・調査ソフトウェア」を推奨している。

3月には、人気NFTゲームAxie Infinity(アクシーインフィニティ)から約760億円の仮想通貨が不正流出。北朝鮮のハッカーグループ「ラザルス」がこの背後にあったとされる。

この事件で資金洗浄に使われたイーサリアムのミキシングサービス「Tornado Cash」は、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスが提供する、制裁対象アドレスからのアクセスをブロックするツールを導入することを決めていた。

関連ハッカーにも使用される大手ミキサー「Tornado.Cash」、制裁回避を防ぐツールを導入

仮想通貨関連の制裁事例

制裁関係では、OFACは7日、初めて仮想通貨ミキサーに措置を発動している。対象となったのは「Blender.io」というミキサーで、2017年以来、北朝鮮やロシア関連のハッカーグループが使用してきたとされる。

関連米財務省、初めて仮想通貨ミキサーを制裁対象に指定

OFACは、21年9月に初めて、仮想通貨取引所を制裁対象に指定。先月にも、世界最大規模のダークネット市場「Hydra Market(Hydra)」と仮想通貨取引所「Garantex」を制裁対象に加えている。

関連米財務省、仮想通貨取引所「Garantex」を制裁対象へ ダークネット「Hydra」の取引に関与

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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