イーサリアムPoWフォーク(ETHW)が誕生 FTXやOKXで現物取引開始
ETHW、始動
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の大型アップグレード「The Merge(マージ)」実装から数時間後、PoWフォークである「ETHW」が開始された。
ETHWはOKXやFTX、Bybitなどに新規上場し、執筆時は約13ドルで取引されている。
一方、初期からETHWのIOU取引を提供していたPoloniexは「ETHW」ではなく、「EthereumFair(ETF)」という別のハードフォーク銘柄を「大多数のコミュニティがサポートするPoWチェーン」とした。ETFは執筆時、18.8ドルで取引されている。
EthereumPoWは15日11時ごろに、最終コード、設定ファイル、バイナリ、ノードデータ、RPC、エクスプローラ情報などETHWの重要リソースを公開。リプレイアタックを防ぐチェーン識別子「Chain ID」は、「10001」に切り替わっていることが確認されている。
ブロックにトランザクションが含まれるようになり、ユーザーはETHWを送信できるようになっている。
ChainIDとは
イーサリアムで分岐チェーンを見分けるための識別子。2016年にメインのETHチェーンと、分岐のETCチェーン間のリプレイアタックを防ぐためにEIP-155で導入された(ChainIDはETH:1、ETC:61)。トランザクション署名時に含めるChainIDを変更することで、ハッシュが代わり、取引のリプレイ(再生)を防ぐ。
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ETHWとは
ETHWは、マイナー主導の暫定ガバナンスグループ「EthereumPoW」によってマージ前のイーサリアムから分岐され、新ルール適用により延伸されたブロックチェーンの仮想通貨である。
15日のマージを経て、イーサリアム・ネットワークのコンセンサス(合意形成)アルゴリズムが従来のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフオブステーク(PoS)への移行が完了。イーサリアムのマイニング(PoW)が停止し、後続のブロックはバリデーター(PoS)に生成されている。
この影響で、これまでETHを採掘してきた約6,600億円(50億ドル)規模とも推測されるマイニングマシンが代替チェーンを探す必要が生じていた。
既に、F2Pool、Poolin、BTC.com、Nanopoolといった主要なマイニングプールがEthereumPoW(ETHW)のサポートを表明しているため、マイナーはスムーズに「ETHW」へと採掘対象を切り替えることができる。
一方、分散型取引所Uniswapを初め、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」などNFTコレクションを複数手掛ける制作スタジオYuga Labs等は、ETHWをサポートしないことを表明している。
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米コインベースやバイナンスなど海外取引所の一部は、ETHWの新規上場についてリスティング基準をもとに審査する意向を示してきた。国内取引所を含む個別のETHWの対応内容については別途チェックしておきたい。
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また、マイナーにとって別の採掘候補として、イーサリアムクラシック (ETC) が浮上しており、ETCの時価総額は過去3か月間で2倍以上に増加している。
2016年にイーサリアムの分岐により出現したETCは、ETHと同じGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)で採掘でき、既に一定規模のエコシステムを形成している。
仮想通貨マイニングプール大手AntPoolは7月、イーサリアムクラシック(ETC)のエコシステムに13億円(1,000万ドル)を投資すると発表。
イーサリアムクラシック(ETC)に投資している、米最大手仮想通貨・ブロックチェーン持株会社のデジタル・カレンシー・グループ(DCG)社のバリー・シルバートCEOも、「ETHマイナーは、長期的な収益最大化のためにETCに移行すべき」と主張した。
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マイニングプールとは
ネットワーク上で複数のマイナーのハッシュレートを集めて、マイニングを行う組織のこと。採掘の結果、見つかった報酬は、参加したマイナーが貢献した度合いに応じて分配される。
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