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「ETHPoW」最新情報まとめ|イーサリアムのマージ後にチェーン分岐の可能性浮上

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

イーサリアム・フォークの可能性

暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)は、大型アップグレード「The Merge(マージ)」が迫ってきたことで、ブロックチェーンが分岐(フォーク)する可能性に備えた動きが増えてきた。

マイナーや取引所らがそれぞれ対応を発表・実行しているため、現時点で新たに明らかになった内容をまとめていく。

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The Mergeとは

イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」へ移行する大型アップグレードのこと。アップグレード後もマイナーが採掘を続けることで、PoWとPoSをそれぞれ採用した2種類のイーサリアムが誕生する可能性があると注目が集まっている。

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ETHPoWの動向

BitMEXが先物取引を提供

仮想通貨取引所BitMEXは8日、PoWのイーサリアム「ETHPoW」の先物取引サービスを9日から開始すると発表。ステーブルコイン「USDT(ERC-20)」で、2倍までレバレッジをかけることができるとした。

この先物は2022年12月30日が期限の先物で、ティッカーシンボルは「ETHPOWZ22」。テストネットではすでに取引されており、本記事執筆時点で価格は約6,800円(50.9ドル)である。BitMEXのリサーチ部門は1日、ETHPoWが誕生する場合は「魅力的なトレード機会になる」として、想定される戦略プランをブログで提示していた。

出典:BitMEX

PoloniexがIOU現物取引を提供

仮想通貨取引所Poloniexは8日、イーサリアムのマージ後の分岐(フォーク)を想定した2つの通貨、「ETHW」と「ETHS」のIOU(借用証書)現物取引を開始した。それぞれイーサリアム(ETH)、テザー(USDT)、トロンのステーブルコインUSDDとのペアが設置されている。

Poloniexによると、ETHPoWを表すETHWトークンは約15,000円(113ドル)、1ETHの約6.3%で取引されている。一方、マージ後にPoSに移行したイーサリアムを表す「ETHS」トークンは224,500円(1,664ドル)、1ETHの約93%で取引されている(9日午後1時30分時点)。

なお、2つの資産はマージ後に配布されるもので、現在は外部に送金できない。ハードフォークが成功すれば、Poloniexでイーサリアム(ETH)の保有していた者はETHWトークンを受け取ることができる。反対にETHPoWのフォークが失敗に終わった場合、ETHWのIOU市場は廃止されることになる。

Poloniexの所有者であるトロン創設者のジャスティン・サン氏はツイッターで、PoloniexでETHWやETHSの取引から現在手数料を取っていないと表明。自身のETHPoWヘのサポートは「公共の利益のため」と主張した。

同氏は、ETHPoWのエコシステム構築のために自身が受け取る可能性があるETHWの一部を寄付することを表明していた。

バイナンスやOKX

バイナンスは「マージ」に対応し、PoWフォークによる新規トークンの発行については配布と出金に関する対応を評価する予定。

関連バイナンス、イーサリアムPoWフォークにどう対応か

また、グローバル版FTXは15日に対応方針を表明した。バイナンスと同様、配布と取扱に関する対応を状況を踏まえた上で評価する予定だ。

関連グローバル版FTX、イーサリアムPoWフォークの対応方針を表明

f2poolの見解

イーサリアムの大手マイニングプール「f2pool」は、PoWのイーサリアムをサポートし続けるかはマイナーによるとしながらも、「我々はPoSという新しい時代に移行すべきだ」と主張した。

「Wu Blockchain」を運営する仮想通貨ジャーナリストColin Wu氏によれば、f2poolは「PoWの時代は終わりを迎える」とし、「7年間もイーサリアムを支えたマイナーは影のヒーローだ」と讃えている。

「EthereumPoW」を創設

また先月には、PoWのイーサリアムを支持するコミュニティ「EthereumPoW」が創設された。公式ウェブサイトも立ち上げており、「EthereumPoWとは何か」などを説明するほか、PoWのイーサリアムへの対応を表明している組織も掲載している。

出典:EthereumPoW

国内取引所コインチェックの関連企業「コインチェックテクノロジーズ」の名前が明記されている一方で、コインチェックの大塚雄介執行役員はEthereumPoWが勝手にロゴを掲載しているだけと指摘。情報のファクトチェックには注意が必要だ。

このように、イーサリアムの分岐に関する見方は様々だ。イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、PoWのイーサリアムは長期的には普及するとは思っていないと否定的な見解も示している。

有識者の見解

Paradigm社のFlashbots戦略リーダーで研究協力者を務めるHasu氏(仮名)は、ETHPoWが「マイナー、取引所、トレーダーが利己的な理由で推し進める、巨大な一般投資家のトラップ」だと、辛辣に批判した。

同氏によると、これまでコミュニティが分裂した結果として誕生したフォークコインと、ETHPoWとは本質的に別物だ。ビジョンを持って生まれたビットコインキャッシュ(BCH)やビットコインサトシビジョン(BSV)、そしてイーサリアムクラシック(ETC)には、開発者がいてそれを信じる投資家もいた。

しかし、「彼らの1%程のサポートさえETHPoWは得られていない」として、短期的な売買に使われるだけだと指摘した。

Hasu氏はまた、ETHPoWに短期的にハッシュパワーが集まるかもしれないが、それ自体には意味はないと指摘。ネットワーク価値の源泉はエコシステム(トークンやプロトコル)を取り巻く「社会的コンセンサス(相互承認)にあり、それはコピーすることができないもの」と加えた。

今日の多くのアルトチェーンはイーサリアムのフォークだが、イーサリアムの状態をフォークしたものはない。なぜなら、それを考えなかったのではなく、完全に愚かな考えだからだ。

イーサリアムの共同創設者のブテリン氏もHasu氏と同様に、エコシステムにフォーカスして動向を見ているようだ。

同氏は5日に開かれたウェビナーで、「ETHPoWフォークを支援する事業者の多くは取引所を持つ少数のアウトサイダー」で「手っ取り早く儲けたいだけ」と指摘。

また、「より優れたコミュニティとプロダクトを有すイーサリアムクラシック(ETC)がPoW(プルーフオブワーク)を推進している中で、ETHPoWの長期的な普及は見込めない」と語った。

一方、イーサリアムのエコシステムに関しては、「ほとんど全員」がマージ後のプルーフオブステーク(PoS)移行を支持して結束しているため、「フォークによって大きな打撃を受けるとは思わない」と述べている。

米最大手仮想通貨・ブロックチェーン持株会社のデジタル・カレンシー・グループ(DCG)社のバリー・シルバートCEOは、イーサリアムクラシック(ETC)とマージ後のイーサリアムの両方の支持を表明している。

私たちはETCに加えてETH PoSも全面的にサポートする。ETH PoWのいかなるフォークもサポートするつもりはない。ETHマイナーは、長期的な収益最大化のためにETCに移行すべきだ。

DCGは21年6月、子会社である仮想通貨投資企業グレースケールが提供するイーサリアムクラシック投信を55億円(5,000万ドル)分購入。グレイスケールは2017年以降、イーサリアムクラシックの開発者に資金を提供し、信託の管理手数料から100万ドル以上を寄付している。

Chainlinkは「フォークをサポートしない」と表明

ETHPOWは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)のコンセンサスとイーサリアムの完全なステート(取引履歴や資産記録)を維持する。しかし、約5兆円(400億ドル)に拡大したイーサリアムのDeFi(分散型金融)エコシステムのほとんどは、これまで通り機能しない可能性がある。

大手オラクルプロバイダーのChainlinkは8日、ETHPoWフォークをサポートしないことを公表した。

PoWフォークを含むイーサリアムのフォークバージョンは、Chainlnkでサポートされないことをユーザーは認識する必要がある。これは、PoSコンセンサスにアップグレードするという、ソーシャルコンセンサスを通じて達成したイーサリアム財団とコミュニティの両方の決定に沿うものだ。

Chainlinkのオラクルサービスは、DeFiに必須の価格フィードを含む、オフチェーン情報をスマートコントラクトに供給する。同社はマージ中もマージ後も継続してイーサリアム上で運用し続けると加えた。

Chainlinkはまた、マージに向けた移行戦略が不確かなdApps(分散型アプリ)や開発者は、エンドユーザーを保護するためにネットワークが安定するまでスマートコントラクトの運用を停止するよう助言した。

ETHPoWフォークを含むイーサリアムのフォーク版で動作するdAppは、プロトコルレベルで予期せぬ動作をする場合があり、ユーザーにとってリスクが増大する恐れがある。開発者は、コントラクトが接続している外部関係が、マージ中とマージ後に期待どおり動作することを確認する必要がある。

イーサリアムのマージ後にフォークコインが誕生しただけで、新たなDeFi経済圏が出来上がる訳ではない。ETHPoWは開発者やステーブルコイン、オラクルネットワークのサポートを得て、エコシステムを構築する必要がある。Chainlinkはイーサリアムが分岐した場合に、フォーク版をサポートしないことを明言することで、開発者やdAppsに立場を明確にした。

サークル・テザーもフォークに対応しない

ステーブルコインUSDCの発行企業サークルはフォーク版ETHブロックチェーンに対応しない声明を出している。

USDCは来たるPoS版イーサリアムのみに対応し、PoW版でローンチしない。また、USDTの発行企業テザーも同様にPoS版に対応すると発表した。

関連イーサリアム共同創設者ブテリン氏が語る、ロールアップ技術の展望と課題

フォークに関連したこれまでの内容は、以下の記事にまとめている。

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