イーサリアムL3「Pathfinder」、パブリックテストネットにローンチへ
イーサリアムの拡張性を向上
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のスケーリングソリューションを開発するMatter Labsは10日、2023年1Q(1月から3月)にL3ネットワーク「Pathfinder」をパブリックテストネットにデプロイ(展開)することを発表した。
Pathfinderはイーサリアムの仮想マシン(EVM)との互換性を備え、3層目のネットワークとして稼働。今月ローンチ予定のL2ネットワーク「zkSync 2.0」と合わせて拡張性(スケーラビリティ)を大幅に向上させ、広範囲な利用に耐えられる環境を構築することが導入の目的だ。
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Matter Labsが描くL3のビジョンは、カスタマイズが可能で、ブロックチェーンをトラストレスに接続できるエコシステムになること。EVMと互換性があり、ゼロ知識証明を活用したソリューション「zkEVM」を基盤にして、このエコシステムを構築する。
L3の導入について、今回の発表で紹介されているメリットは以下の通り。
- セキュリティ:ハッキング対策に固有のブリッジを開発
- パフォーマンス:L2は10〜100倍パフォーマンスが向上するが、L3は無限
- コスト:データコストを大幅に削減
- 利用のしやすさ:開発キットなどのツールを提供
- コンポーザビリティ(構成可能性):RustやC++、Swiftなどのプログラミンも言語もサポート
ブリッジとは
異なるネットワーク間でトークンの移動等を実現することで、相互運用を可能にする仕組みや技術を指す。ユーザーが資金を引き出せなくなったり、サイバー攻撃の被害に遭ったりする可能性があるとリスクも指摘されている。
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トラストレスに接続されるブロックチェーンのネットワークは「HyperChains」という名称。Pathfinderはパブリックテストネットにローンチされるため、自由に実験やリサーチ、開発を行うことができる。
zkSyncのエンジニアのトップAnthony Rose氏は、CoinPostの提携メディアThe Blockに対し、以下のようにコメントした。
Pathfinderによって、我々エンジニアチームは将来的なシステムの形を理解したり、過去の問題に取り組んだりすることができる。
複雑なシステムを発展させる最適な方法は、積極的にテストを繰り返すことだ。
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L3の注目度
イーサリアムではこれまでL2ソリューションの開発が積極的に行われているが、最近ではL3に対する注目度も高まってきた。
今年9月には、イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が、L3構造についてビジョンを提示。「三層構造の利点は、L2内にサブエコシステムを形成することで、L1を経由することなく領域間のトランザクションを効率的に実行できることにある。L3は、L2を補完するような機能を実装するために用いられる」と説明した。
そしてブテリン氏は、StarkWare社が提案した「ブロックチェーン三層構造」を3つのモデルに落とし込んでいる。L3の使い方は異なるが、いずれもセキュリティはL1ブロックチェーン(イーサリアム)に委ね、L2はスケーラビリティ向上が目的であるとした。
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