レイヤー3のビジョンとは
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は17日、ブロックチェーンの「レイヤー3(L3)」構造についてビジョンを示した。
L3とは、レイヤー1(L1)ブロックチェーンのスケーリングソリューションである「レイヤー2(L2)」に構築される、3つめのネットワーク層のこと。
21年12月には、イスラエルの開発企業StarkWare社が発行したレポート「L2からL3、スケーリング技術のフラクタル構造」が反響を呼んでいた。
ブテリン氏によると、三層構造の利点は、L2内にサブエコシステムを形成することで、L1を経由することなく領域間のトランザクションを効率的に実行できることにある。L3は、L2を補完するような機能を実装するために用いられるという。
ブテリン氏は、StarkWare社が提案した「ブロックチェーン三層構造」を3つのモデルに落とし込んでいる。いずれもセキュリティはL1ブロックチェーン(イーサリアム)に委ね、L2はスケーラビリティ向上を目的としているが、L3の使い方が異なる。
- L1:セキュリティ + L2:スケーリング + L3:機能のカスタム(例、プライバシー機能)
- L1:セキュリティ + L2:スケーリング + L3:アプリ性能のカスタム(例、ストレージ向けStarkNet)
- L1:セキュリティ + L2:スケーリング + L3:集中型サーバー(例、エンタープライズ水準の処理性能)
ZkロールアップのL3
なお、StarkNetとは、StarkWare社が開発するレイヤー2スケーリングソリューションの名称である。StarkNetは、オフチェーンで処理した数百件のトランザクションを1つの暗号証明に集約し、L1ブロックチェーンに保存する「ZKロールアップ(SNARK)」を採用する。競合のOptimisticロールアップより不正耐性が高く、送金の処理時間が短い等の利点がある。
StarkWare社は8月に新技術「Recursive SNARK(再帰的証明)」をメインネットでリリースしていた。Recursive は複数の暗号証明を1つに圧縮するもので、StarkWareのコアエンジニアリング部門Gidi Kaempfer責任者はRecursiveによってL2のStarkNet上にL3(第3層)を構築できると述べており、StarkNetだけでなく他のL2にも使用できる特徴がある。
ブテリン氏はブログで、「ロールアップされた(データ)をさらにロールアップすることは不可能」と述べる一方、演算についてはスケール可能としている。
(ロールアップの)計算処理は、詐欺証明またはSNARKで行われる。(略)このような方式、特にSNARKは、ほぼ無制限にスケール可能。“多くのSNARKを集約したSNARK”を作り続けるだけで、1つの証明に必要な計算量をさらにスケールできる。
ブテリン氏によると、ZKロールアップにZKロールアップを重ねることで、L1に発生するバッチ当たりのガスコストを400,000から8,000に削減可能。イーサリアムの1ブロック毎(12 秒)のトランザクション当たりガスコストが10368から501に低減できるため、バッチ間隔を長くすることなくコスト低下を実現できるという。
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