ビットコイン急落で調整局面入りか、ステーキング可能なPoS通貨に新たな試練

マクロ経済と金融市場

9日の米NY株式市場では、ダウは前日比249.13ドル(0.73%)安、ナスダックは120.94ドル(1.02%)安で取引を終えた。

先日の雇用統計結果が市場予想を大きく上振れたことから、日本時間14日にCPI(米消費者物価指数)発表を控え、手仕舞い売りが先行した。

次回CPIの指標も上振れるようだと、インフレ(物価高)がこのままピークアウトするとの楽観シナリオに黄信号が灯り、金融相場はさらなる利上げや米経済のハードランディングを織り込みにいく形で再びリスクオフに傾きかねない。

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仮想通貨市況

暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比3.95%安の21,907ドルに。

BTC/USD日足

軟調な株価指数を背景に高値を切り下げて推移する中、ネックラインを割り込み、下げ足を強めた。

アルトコイン相場の過熱感のほか、OI(未決済建玉)やFunding Rate(資金調達率)の推移から先月の大幅反発を後押しした追加燃料も不足しつつある中、調整入りは時間の問題だったとの見立てもある。

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イーサリアム(ETH)も前日比5.15%安となるなど、ここのところ過熱感のあったアルト市場でも多くの銘柄が急反落した。

Messari

地合い悪化のほか、仮想通貨市場でステーキングおよびプルーフ・オブ・ステーク(PoS)通貨に関する不確実性が強まったことが嫌気された。

米SEC(証券取引委員会)から証券法違反で起訴された老舗の暗号資産取引所クラーケンが、米国ユーザー向けのステーキングサービス提供停止と、3000万ドル(約39億円)の制裁金を支払うことで合意したことがわかった。

SECは、同社の提供していた委託型の暗号資産ステーキングサービスについて、証券性のある投資契約に該当すると指摘。昨年11月に発生した大手取引所FTXの破綻を念頭に、ステーキング資産の預入期間中はプラットフォームの存続と一蓮托生状態にあることを示唆、利用者保護の観点が背景にあるとした。

ステーキングとは

所定の期間、一定量の仮想通貨を預け入れることで報酬を得る仕組み。ブロックチェーンの運営に貢献することで、対価として報酬を得ることができる。

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これに伴い、クラーケンは自社の提供するステーキングサービス内でイーサリアム(ETH)やポルカドット(DOT)、エイダ(ADA)の報酬を受け取っていた米国居住者のユーザーに対し、強制アンステークの開始を通知した。ステーキング解除されたポジションは一定の売り圧力となり得る。

ただし、今年3月に予定される上海アップグレードの実装まで仕組み上引き出しのできないイーサリアムについては猶予期間を設ける。また、証券法の規制対象となる米国ユーザー以外には、子会社を通じて引き続きステーキングサービスを提供する。

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昨年発生したアルゴリズム型ステーブルコイン「UST(TerraUSD)」の崩壊を伴うテラ(LUNA)ショックや大手取引所FTX事件を発端に、SECは取り締まりの姿勢を鮮明にしている。

一方、今回のケースでは、実質的に利回り投資商品を販売していたとされるクラーケンのステーキングサービスの仕組みに関して、連邦証券法に基づくSECへの申請・登録や情報開示不足を指摘されたもので、既存のステーキングサービス全てが米国の証券法違反に該当するかどうかは議論の余地を残しており、米最大手取引所のコインベースが直ちにステーキングサービスの差し止め措置を受けるかどうかについては懐疑的な見方もある。

非営利経済シンクタンク「Mercatus Center」の上級研究員であるAgnes Gambill West氏は、「米国内で関連サービスの閉鎖やスタートアップ企業が海外オフショアへの移転を余儀なくされることは、米国の国際競争力およびイノベーションにとって多大な損失につながりかねない」と失望感を示した。

SECコミッショナーの1人であるHester Peirce氏は、SECの決定について、反対の意思を示す声明文を掲載。

SECは証券の募集として登録されるべきだったと主張するが、そもそもステーキングサービス申請用の登録を事前に受け付けていたのか?銘柄ごとの登録が必要なのか?と複数の疑問点を挙げた上、開示方法や会計上の問題など規制方針が未成熟であることを指摘。

「透明性を高めること自体は良いことだが、規制当局がガイダンスを提示し企業側に遵守を求める前に、強権的な“執行措置”が先行して新興産業の混乱を招いている」と主張。規制のガイダンスが明確でなかったにも関わらず、強硬的な振る舞いが先行しているとしてSECの姿勢を批判した。

詳細:米SEC「クラーケンの仮想通貨ステーキングサービスは証券法違反」

アルトコイン相場

アルト市場の個別銘柄では、Optimism Network(OP)の一時的な売り圧力で急落する場面があった。

Optimismは、総供給量の19%を段階的に分配するというイニシアチブに基づき、サプライズ的なトークンエアドロップ #2を実施した。

メインネットにおけるプラスサムガバナンスへの参加とOptimismを利用するヘビーユーザー還元策の一環として、投票権を委任したアドレスのほか、22年3月25日以降に取引手数料(Gas代)を一定以上費やしたユーザーが対象となった。

Optimism Networkのガバナンストークンである「OP」は、22年5月に総トークン供給量の5%を分配するエアドロップ #1を実施している。

Optimismは、負荷の高まり続けるイーサリアム(ETH)のトランザクション緩和のために開発されたレイヤー2スケーリングソリューションの一つであり、Optimistic Rollup技術が採用されている。

関連:イーサリアムL2需要増、Optimismトークンが過去最高値を更新 

ガバナンス投票で提案が可決されれば、今年3月に最初のプロトコルアップグレード「Bedrock」が予定される。

関連:イーサリアムL2「Optimism」、初のアップグレード「Bedrock」は3月実施を提案

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