Internet Computer(ICP)の沿革
インターネットコンピュータ(ICP)は、従来の中央集権的なクラウド・コンピューティング・プロバイダーに依存するブロックチェーンとは異なり、「従来のITを必要とせず、ブロックチェーンのみで動作するワールド・コンピュータ」として設計された。AWSやGoogle Cloudのような特定企業が独占するクラウドコンピューティングサービスからの脱却を目指している。
Internet Computer(インターネット・コンピュータ)は、スイスのチューリッヒに本拠地を置く非営利組織であるDfinity財団により、2016年10月に設立された。
Dfinity財団は、暗号学者および分散型システム・プログラミング言語の専門家たちで構成され、合わせて10万近くの学術引用と200の特許を保有している他、エンジニアにはグーグルなどの大手IT企業で経験を積んだメンバーを擁する。
Dfinity財団は、Andreessen Horowitz(a16z)やPolychain Capitalなどの著名なベンチャーキャピタルや、初期のEthereum支持者数名から、2018年に総額1億2100万ドル(約137億円)を調達したことで話題となった。
Internet Computerは、AWSやGoogle Cloudのような、特定企業が独占するクラウドコンピューティングサービスへの依存からの脱却を目指すプロジェクトとして開始された。
技術面では、世界中の独立したデータセンターから提供される計算リソースをICP(Internet Computer Protocol)でまとめる。2021年5月、Dfinity財団は完全分散化に向け、Internet Computerをパブリックドメインへと移設した。Internet Computerのすべてのソースコードが公開され、数万人のコミュニティメンバーがInternet Computerネットワークを(ICPトークンを用いて)管理できるようになった。
Internet Computerの特徴
Internet Computerの設計は、従来のWebサービスとは一線を画するブロックチェーンベースのプラットフォームである。スマートコントラクト(キャニスターと呼ばれる)を活用し、シャーディング技術によってブロックチェーンデータと処理を分散させ、スケーラビリティと効率を大幅に向上させる。
この構造により、DappsやDeFiに留まらず、AI・機械学習による画像分類のような計算量とストレージ要求が高いアプリケーションも完全にオンチェーンで実行できる。
ICPのスマートコントラクト
Internet Computerのスマートコントラクトは、従来のWebリソースのホスティングも可能であり、バックエンドとフロントエンドの両方を完全にオンチェーンで実行するWeb3アプリケーションの開発が行える。
HTTPリクエストを通じて、他のブロックチェーンのRPCノードやWeb2サーバーとのやり取りも可能なため、スマートコントラクトでイーサリアムなど他のブロックチェーン上のスマート・コントラクトを呼び出すことができる。
2022年末には、ビットコインとの統合がメインネットで開始され、ビットコインによって 1:1で裏付けられたChain-key Bitcoin(ckBTC)がローンチ。23年にビットコインOrdinalsマーケットプレイス「Bioniq」も立ち上がった。
23年末には、イーサリアムとの統合により、Internet Computer上でckETHやckERC-20トークン(例:ckUSDCやckUSDT)が使用可能になるなど、幾多の成果を挙げている。
ICPトークン
ICPトークンに関しては、Internet Computer上で構築されたスマートコントラクトサービスを利用する際に重要な役割を果たしている。ICPトークンはガバナンストークンとして利用され、ガバナンス権の行使やステーキングが可能である。また、ユーティリティ・トークンとしても機能し、キャニスター・スマートコントラクトの計算や保存のための「サイクル」を獲得するために使用される。さらに、計算やストレージを提供する「ノードマシン」プロバイダーへの報酬としても使用されている。
ICPトークンの時価総額は8,547億円に達し、市場ランキングで24位に位置している(2024年5月時点)。このトークンは、米国のCoinbaseや世界最大規模の暗号資産取引所(Gate.io、Binance.comなど)での取引が活発だ。
現時点では、ICPは国内の取引所に上場していないが、海外や分散型取引所で取引が可能。購入するためには、まずメタマスクを用意し、国内の取引所でイーサリアム(ETH)を購入。その後、購入したETHを自分のメタマスクウォレットに移し、関連する分散型取引所でICPを購入できる。