今回の記事は、「SBI R3 Japan」が公開しているMediumから転載したものです。
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このエントリーはR3社の公式ブログ「Where’d you get that pork chop?」の邦訳です。
そのトンカツおいしい?その答えは人それぞれ違うかもしれません。でもおいしいかと同じくらい安全な肉かどうかも気にしたほうがいいかもしれません。
イギリス食品基準局がブロックチェーンによる豚肉サプライチェーンの透明化に成功しました。
そのトンカツの豚肉は一体どこの産地なのか。その答えにたどり着くのは、思っているほど簡単ではありません。しかし、食品の出所を確認することは、食品供給の安全性と持続可能性を確保するために不可欠な要素。そのため、国内外の食品製造業にとってトレーサビリティは重要な論点です。
①ブロックチェーン技術、②主要企業の協力体制の構築、③フードバリューチェーンが求めるより厳しい基準、この3つによって食品サプライチェーンは変化しつつあります。その結果、A)より精確なトレーサビリティ、B)食品廃棄物の削減、その結果としてC)持続可能性の向上といった改善がが見込めるかもしれません。しかし、ブロックチェーンは具体的にどのように世界のフードサプライチェーンに影響を与えているのでしょうか?
イギリス食品基準局(以下FSA)はアクセンチュアと共同で、豚肉の健康輸出認証プロセスのトレーサビリティと効率性を高めるために、ブロックチェーン技術をどのように利用できるかを評価することに着手しました。
このパイロットプロジェクトは、食品の生産と供給に関連するリスクから公衆衛生を守るというFSAの戦略的な目的が原動力となりました[1]。このパイロットプロジェクトを通じて、FSAは、オペレーション管理から規制当局、そして最終的には最終消費者に至るまで、サプライチェーンプロセス全体にブロックチェーンが与える影響を探りました。
FSAによるこのプロジェクトにはCordaが選ばれました。
選ばれた理由は、以下2点が評価されたためです。
- プライバシー要件をサポートしている
- 添付ファイルのサポートが組み込まれている
ブロックチェーンアプリケーションには、モバイルとウェブの両方のインターフェースがあり、検査データ、承認、報告書などの死前・死後の獣医師からのデータを入力するために使用できました。これにより、例えば獣医は、パレットが正しく密封されており、それ以上アクセスされていないことを証明する改ざん証明書類として、検査記録と一緒に写真をアップロードすることができるようになりました。これにより、手作業や重複したプロセスを削減し、たった一つの真実(a Single Version of the Truth)を提供することができました。
又、Corda 上に構築されたアプリケーションが、サプライチェーンの参加者間で中立的な共有データモデルを確立できること。そして、規制当局、政府、企業が協力し、サプライチェーン全体からの情報に基づいて食品の供給と消費の傾向を監視するためのフレームワークを提供できることが実証されました。
得られた洞察(Key Insights)
幾つかの重要な洞察を得ることもできました。
- ブロックチェーンソリューションが有効だと実証され、分散処理とスマートコントラクトの使用によりプロセスの簡素化と自動化が可能だと証明されました。
- ブロックチェーンを使用することで、プロセスの透明性が強化されました。FSAや規格機関のより厳格で有意義な監査を可能にし、消費者に対して、イギリスの食肉ブランドの品質をより強くアピールすることが可能だと実証しました。同時に、Cordaを用いることで取引のプライバシーを確保する事にも成功しました。
- Corda を活用したプロセスの効率化により、作業の重複やペーパーワークが削減されました。また、フードサプライチェーンの信頼性が高まり、関係者が信頼できる情報にデジタルで簡単にアクセスできるようになりました。
食料と農業の業務プロセスはブロックチェーンによって再構築されようとしています
ブロックチェーンが食品・農業業界を変革する可能性を評価しているのはFSAだけではありません。2025年までに世界の食料品業者の20%がブロックチェーンを利用していると予想されています[2]。現代の消費者を念頭に置いた時、ブロックチェーンが食品サプライチェーンネットワークに革命をもたらす可能性に世界中が注目しています。
この可能性を実現していくにあたって最大の課題は、既存のフードサプライチェーンネットワーク間の技術的ギャップを埋めることです。これは食料に関する基準遵守を重要視し、関係者間のコラボレーションを推し進めることで実現可能です。 フードサプライチェーンのような複雑なネットワークを大きく変化させるにあたっては、ブロックチェーンの持つトレーサビリティ、データの不変性、機密性、モジュール性等は大きな利点となるはずです。
これらはFSAのプロジェクトにおいても検証されており、豚肉輸出健康認証プロセス以外のユースケースでも同じように考えられています。ブロックチェーンを利用すると、運用コストを削減し、企業の収益拡大に資することが期待されています。
後半(~後編:変化を急ぐべき理由、そして数字~)に続きます。
———— 参考文献
[1] Food.gov.uk: Food We Trust [2] Coin Telegraph: Prediction: 20 Percent of Leading Global Grocers to Use Blockchain by 2025 [3] Forbes.com: IBM & Walmart Launching Blockchain Food Safety Alliance In China With Fortune 500’s JD.com; The Converstation: How blockchain technology could transform the food industry [4] [5] Food.gov.uk: Guidance on Food Traceability, Withdrawals and Recalls within the UK Food Industry [6] Statista.com: How Safe Is U.S. Food? [7] ResearchGate.com: Food Traceability on Blockchain: Walmart’s Pork and Mango Pilots with IBM [8] Phys.org: Human error major driver of food waste [9] Nielson.com: Total Consumer Report: December 2018
(記事作成:SBI R3 Japan/YuIku)