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テンセント(Tencent)はブロックチェーン領域においてどんな取り組みをしているのか

はじめに

中国のネット業界を代表する3つの会社、検索エンジンのBaidu(バイドゥ / 百度)、ECのAlibaba(アリババ / 阿里巴巴 )、Tencent(テンセント / 腾讯 )の頭文字をとって、BATと呼び、よくGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)と対比されることが増えてきました。

このBATの3社は、ブロックチェーンについて積極的な取り組みを見せています。例えば、バイドゥでは、Baidu Block Engine (BBE)というdApps開発促進のオープンソースを提供したり、アリババでもBaaSの提供を行っています。以下の記事で、アリババのブロックチェーンの取り組みをまとめましたが、 今回はテンセントに注目してみます。

テンセントとはどんな会社か

テンセントは、2019年8月時点の企業時価総額ランキングで第8位につけている大企業です。企業名は知らずとも、WeChat(ウィーチャット)というLINEのようなサービスは聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。近年はゲームの売り上げが非常に高く、今年の売り上げ予測では1.5兆円ほど見込まれています。

そんなテンセントですがブロックチェーンの領域において、どんな取り組みをしているのでしょうか。

China Blockchain Security Allianceへの参加

中国政府が支援する中国技術協会のフォーラムで、20社以上からなるChina Blockchain Security Allianceの設立が発表されました。これは、ブロックチェーンのエコシステムを利用した詐欺の防止を目的とした団体で、 テンセントやHuobiが中心メンバーとなっています。

参考:http://www.chinanews.com/business/2018/06-21/8543168.shtml

Tencent Blockchain as a Service( TBaaS)の提供

テンセントも他の大手IT企業と同様に、Blockchain as a Service(BaaS)の提供を行っています。

※BaaSについては、以下を参考にしてください。

テンセントの提供するBaaSは「Tencent Blockchain as a Service(TBaaS)」という名前で、Hyperledger FabricとBCOSの2つの台帳をサポートしています。

Hyperledger Fabricは、IBM主導で開発が行われているエンタープライズ向けの分散台帳記述で、国内での利用例が多くブロックチェーンについてある程度知識がある方であれば、耳にする機会も多くある思います。

BCOSは、中国最大のブロックチェーン・コンソーシアムの一つ、Financial Blockchain Shenzhen Consortium(FISCO)が提供する分散台帳技術です。テンセントはFISCOの中心メンバーとして参加してしています。

https://fisco-bcos.org/article_03.html

BCOSはHyperledger Fabricのようなエンタープライズ向けのコインレス台帳で、公式ページでは「Challenging Hyperledger Fabric with a Consortium Chain from China」とハッキリと書かれた記事が上がっていることから、Hyperledger Fabricを意識したつくりになっています。実際に中国国内では既に多くの事例があり、活用が進んでいます。

TBaaSはTencent Cloud上のDockerとKubernates上に構築され、 Tencent Cloud 内の他サービスと統合されているため、AIやデータ解析APIなどとの連携が可能になっています。

TBaaSのホワイトペーパーはこちら。

腾讯云区块链TBaaS 产品白皮书

“深センの地下鉄での電子請求書の発行システム

以前、下記の記事の一部で取り上げたのですが、深センの地下鉄で利用される電子請求書の発行システムは、TBaaS上で構築されています。

中国では毎月1.4億人もの人々が地下鉄を利用していることから、大規模なシステムにブロックチェーンを適用した事例の一つに挙げられるでしょう。

そんなTencentが提供するTBaaSとはどのようなものであるのか、また導入の経緯などについて解説していきたいと思います。

従来の発票システムの問題点

中国ではこれまで領収書などの発システムは用紙を利用しており、手書きで領収書の発行などを行っていました。

当然これらの用紙は国税当局から購入し、領収書を受け取った当事者は国税に提出することで経費として計上できる仕組みです。

ですが用紙を使って手書きで行うことで、領収書の管理の手間がかかってしまうだけでなく、偽造などセキュリティの面でも課題がありました。

そのためこれらの課題を解決するために発票から会計、税申告までの一連の流れを一本化するという解決策も提案されていましたが、システム開発に時間がかかることや複雑性の問題から実現されませんでした。

そこで、この問題をブロックチェーンの力によって解決しようと試みたのが、Tencentが提供するTBaaSになります。

ブロックチェーン発票システムとは?

Tencentが提供するブロックチェーン発票システムは、WeChat内のプログラムである「乗車碼(ツェンツェーマー)」に表示されるQRコードで改札を通過することで、支払った運賃の発票をブロックチェーンを利用して行うというものです。

システムを具体的に説明すると、利用者が改札を通過した際にブロックチェーン上で発票が行われ、生成された発票にはブロックチェーンに記載されたハッシュ値や情報が格納されたQRコードが記載されています。

記載されているハッシュ値は元のデータを数学的な処理で数列にしたもので、ブロックチェーンの特性上改ざんすることができないように対策されています。

また記載されているQRコードはアプリに読み取らせることで、即座に税金の還付が受け取れるようになっており、一度QRコードを読み込むことでブロックチェーン上で処理が行われるため二重トランザクションを防いでいます。

参照元:https://media.dglab.com/2019/05/05-chinanblockchain-01/

これにより還付金の処理速度が格段に上昇し、さらにwechatpayで還付金を受け取ることが可能になりました。

つまりブロックチェーンシステム一つで偽造などのセキュリティ面から、税申告の煩わしさまで全てを解決することが可能になります。

まとめ

深センで運用されているブロックチェーン発表システムはリリースから半年で1500社に導入され、150万枚が発票されておりブロックチェーンの社会実装は進んでいます。

ブロックチェーンの社会実装はこれからも進んで行くと考えられるますが、オラクル問題など、いくつか課題があるのも事実です。

今回のTencentの適格領収書 (インボイス) の発行システムは、ブロックチェーンとの相性が良い分野であったためにここまで実装が進んだと見ることもできます。

中国では様々な業界でのブロックチェーン導入のための試みがなされており、今後もブロックチェーンエコシステムは広がって行くと考えられています。

前回の記事はこちら
医療業界でも活躍が期待されるブロックチェーンの導入。一方で他業界と同様に頭を悩ませる課題もあります。前回のコラムでは、その医療×ブロックチェーンの最前線についてお伝えしていますので、ぜひご覧ください。 医療×ブロックチェーン適用事例のまとめ

原 英之(Hideyuki Hara) 株式会社digglue代表取締役

カリフォルニア州立大学を卒業後、日本で営業とエンジニアの経験を積む。

株式会社digglueのCEO。ブロックチェーンのオンライン学習サービス「EnterChain」ブロックチェーンコンサルティング及び開発、BaaSメディア「BaaS info!!」の運営を行う。

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