分散型台帳基盤のCordaとは何か?特徴やユースケースを解説

はじめに

企業がブロックチェーンの活用を検討する場合、ネットワークへのアクセス権を管理できるパーミッション型(許可型)のブロックチェーンが有力な選択肢となるでしょう。2019年現在、「Corda」(コルダ)や「Hyperledgerプロジェクト」「Quorum」(クォーラム)など、複数のプラットフォームの開発が進んでいます。

本記事では、企業においてブロックチェーン活用を検討している方に向けて、Cordaの特徴を整理した上で、Cordaに対応するBaaS(Blcokchain as a Service)やユースケースを紹介していきます。

Cordaとは?概要や誕生背景を解説

まずはCordaの概要を解説していきましょう。

概要紹介:Cordaとはなにか?

Cordaは、パーミッション型の分散型台帳基盤です。改ざん耐性やスマートコントラクトなど、既存のブロックチェーンの特徴を備えていますが、トランザクションがブロック型で処理される訳ではないので、厳密にはブロックチェーンではありません。

また、ベースレイヤーであるCorda上で「CorDapps」と呼ばれるアプリケーションを動かすことが可能であり、金融や保険、サプライチェーン、ヘルスケアなど様々な分野でのユースケースが誕生しています。

Cordaが誕生した背景

Cordaの開発を主導するのは、ニューヨークに本社を置くソフトウェア企業「R3」(R3CEV LLC)です。同社はブロックチェーンの金融領域への応用可能性を研究する目的で、2014年に設立されました。

しかし、当時のブロックチェーンでは「取引におけるプライバシーの確保」という金融取引の要件を満たせなかったため、2015年9月に金融機関などが使うのに適したプラットフォームを1から構築しようと「R3コンソーシアム」が発足したのです。

2019年9月現在、「バンク・オブ・アメリカ」や「みずほ銀行」など、200以上の企業がR3コンソーシアムに参加しています。

Cordaの特徴とは?

Cordaの主な特徴を以下の通りです。

  • プライバシーの担保
  • Cordaネットワーク上でのインターオペラビリティを担保
  • スケーラブルな分散台帳を実現

それぞれ簡単に説明していきましょう。

プライバシーの担保

Cordaでは、トランザクションの詳細が任意の関係者の間でのみ共有されます。他のユーザーはトランザクションの詳細にアクセスできません。この仕様はプライバシーへの配慮であり、エンタープライズ向けであること意識した結果です。

以下のように、Cordaネットワークの参加者が管理する台帳はそれぞれ異なります。この点は同じ取引内容を同期する分散台帳との大きな違いです。

https://docs.corda.net/key-concepts-ledger.html

上記のネットワークでは、それぞれの円が重なる部分だけが当事者間で共有された状態であることを示しています。例えば、ALICEは自身の分散台帳に「1」「7」という状態を記録しており、BOBは「1」「5」「6」「7」を記録しているのです。

Cordaにおける不正防止の仕組み

このように、Cordaは当事者間に限った情報共有が前提であるため、トランザクションの不正を防ぐ仕組みが必要です。そこで、二重取引などを防止するために、各トランザクションが一意であることを検証する「ノータリー」(公証人の意)と呼ばれるノードが存在しています。

さらに、CordaはビットコインのようなUTXOモデルが採用されており、トランザクションがハッシュチェーンで繋がっています。

Cordaネットワーク上でのインターオペラビリティを担保

Cordaは、クローズドな分散台帳ネットワークですが、他のCordaネットワークとの間での価値移転(コミュニケーション)が可能です。したがって、ネットワーク間のインターオペラビリティ(相互運用性)が担保されています。

スケーラブルな分散台帳を実現

Cordaでは、膨大な金融取引を処理するために、高いスループット(単位時間当たりの処理能力)を備えています。例えば、2018年10月に公表されたCordaのパフォーマンステストの調査結果によれば、1億件/日を超える取引を処理できることが明らかになりました。

参考:DTCC Announces Study Results Demonstrating that DLT Can Support Trading Volumes in the US Equity Markets

その他の特徴はCordaの公式ドキュメントで

上記の他にも、ファイナリティを備えていたり、オープンソースであったりと、Cordaには様々な特徴があります。詳細を知りたい方は、手始めにCordaの公式ドキュメントに目を通すと良いでしょう。

参考:Welcome to Corda !

Cordaに対応しているBaaS

2019年9月現在、以下のBaaS(Blockchain as a Service)がCordaに対応しています。

  • AWS Blockchain Templates
  • Microsoft Azure
  • Accenture
  • Hewlett Packard Enterprise

前半の「Amazon」と「Microsoft」では、少ない工数でセキュアなCordaネットワークを構築できる開発環境を提供しており、各BaaS上でデプロイする手順はCordaの公式ドキュメントで紹介されています。

参考:Azure MarketplaceAWS Marketplace

また、後半の「Accenture」と「Hewlett Packard Enterprise」は、ブロックチェーンの導入支援(コンサルティング)などが利用できるサービスとなっています。

R3 Cordaコンソーシアムの事例

2019年9月現在、Cordaベースのコンソーシアムが数多く構築されています。本記事の最後に主な事例を紹介していきましょう。

Marco Polo

「Marco Polo」は、貿易金融(トレードファイナンス)の電子化プロジェクトです。現在の貿易では、請求書などの必要な資料が紙ベースでやり取りされており、十分に効率化されていません。

貿易金融のプロセスに分散型台帳技術を用いることで、透明性や改ざん耐性のあるグローバルなネットワークを構築できるようになり、貿易金融にかかる業務の効率化が期待されているのです。

また、Marco Polo Networkには、「三井住友銀行」や「マスターカード」、ドイツのメガバンク「コメルツ銀行」など、計32の企業が参画しています(2019年9月24日現在)。

Voltron

「Voltron」もMarco Poloのように、既存の貿易金融プロセスを効率化するプロジェクトです。Marco Poloが「オープンアカウント取引」を対象としている一方で、Voltronは「信用状取引」をターゲットにしています。

オープンアカウント取引は、信用力のある企業同士の貿易において採用される取引方法であり、信用状取引は買い手と売り手の間に金融機関を仲介させることで、代金の未回収リスクを減らす取引方法です。

他にも多数のソリューションが存在する

この他にも、保険契約プロセスなどを効率化する「B3i」など、様々なコンソーシアムやソリューションがCordaで構築・提供されています。本記事でも紹介した通り、Cordaでは異なるネットワーク間での価値移転が可能であるため、時間の経過と共にネットワーク全体の価値は向上していくでしょう。

なお、Cordaで開発されているソリューションは以下のページから検索できます。

参考:All Solutions

まとめ:必要な範囲でのみ情報共有できるのがCordaの特徴

パーミッション型の分散型台帳基盤であるCordaの大きな特徴は、同じコンソーシアム内であっても情報公開の範囲を制限できるという点です。したがって、例えば、利害関係にある他社との協業において、対等な立場でネットワークを構築しつつ、情報の共有範囲を厳格にコントロールしたい場合などに好都合だと言えるでしょう。

さらに、異なるクローズドネットワーク間の相互運用性が担保されているので、ユースケースが増えるほど、ネットワーク全体の価値が高まっていくと予想されます。

もちろん、ブロックチェーン(分散型台帳技術)は、プラットフォームごとに機能や特徴が異なるため、自社で導入する場合には、目的に合わせて慎重に比較検討をしていきましょう。

前回の記事はこちら
ITのエコシステム化が進んでいる中国。前回のコラムでは、その現状をお伝えする事例として中国巨大IT企業テンセントのブロックチェーンの取り組みについて紹介しました。ぜひご覧ください。 テンセント(Tencent)はブロックチェーン領域においてどんな取り組みをしているのか

原 英之(Hideyuki Hara) 株式会社digglue代表取締役

カリフォルニア州立大学を卒業後、日本で営業とエンジニアの経験を積む。

株式会社digglueのCEO。ブロックチェーンのオンライン学習サービス「EnterChain」ブロックチェーンコンサルティング及び開発、BaaSメディア「BaaS info!!」の運営を行う。

コメントしてBTCを貰おう