はじめに
ブロックチェーンの活用事例として、LVMH (※)・ConsenSys・Microsoftが発表した、イーサリアムベースのAURAプラットフォームによる、高級ブランド品の真正品証明を紹介します。
(※) LVMH (ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)は、ルイ・ヴィトン、クリスチャンディオール、タグ・ホイヤー、モエ・エ・シャンドンなど、ファッションからワインまで、75もの高級ブランドを有する巨大グループです。
参考:
- LVMH, ConsenSys and Microsoft announce AURA, a consortium to power the luxury industry with blockchain technology
- ルイ・ヴィトンの親企業などで開発、高級ブランドの真贋証明ブロックチェーンとは
- 偽ブランド品排除へ ルイ・ヴィトンが真贋証明にブロックチェーンを利用|採用は企業版イーサリアム
高級ブランド業界が抱える課題
高級ブランド業界は、新品と中古品の両方の流通において、長年、偽造品の被害に悩まされてきました。
OECD (経済協力開発機構)の発表によると、偽造品と著作権侵害物の取引は、世界全体の貿易の3.3%を占めているとのことです。
高級ブランド品は、全取引額の4分の1ほどがこのような不正な取引となっており、これは、不正取引全体の6割から7割を占めているという報告があります。
その中において、最も偽造されているブランドの一つとしてあげられるルイ・ヴィトンを有するLVMHは、偽造品撲滅に15億円以上も投入しているといった情報も見受けられます。
ブロックチェーンを活用した解決法
ブロックチェーン活用による真正品証明
ブロックチェーンの活用法の一つとして、「データ改ざんの難しさ、情報の一元化、条件遵守の自動検証」といった特徴を用いた、トレーサビリティの高度化があります。これにより、購入者は、購入商品に関する履歴情報と真正性(正規品かどうか)を確認することができます。
▼その他参考記事はこちら
ブロックチェーンを利用したSCM適用事例を徹底解説!~まとめページ~今回発表されたAURAプラットフォームも、製品一つ一つに関して、原材料・製造・流通といったプロセス全体の情報を、逐次ブロックチェーンの共有台帳に記録しています。
購入者は、商品購入時にアプリを使って商品情報を読み込むことで、真正性の証明を含む、下記のような様々な情報を確認できるとのことです。
- 商品の真正性
- (倫理面や環境負荷の情報も含めた) 商品の原材料
- 商品の取り扱い説明書
- アフターサービスや保証の有無
実装されたブロックチェーンの概要
AURAプラットフォームは、イーサリアムのエンタープライズでの活用を目指したQuorumが用いられています。
▼Quorumの詳細はこちら
そのため、ブロックチェーンはパブリック型ではなく、参加に事前承認が必要となる「許可制のコンソーシアム型」として実装してあります。
コンソーシアム型により情報管理の柔軟性が上がったことで、テイラーサービスの提供や顧客ロイヤルティの向上といった、ブランド個々の活用ニーズに合わせた利用ができるとのことです。
また、ブロックチェーンの構築は、BaaSとして様々な利用実績が発表されている、MicrosoftのAzure上で行われているとのことです。
MicrosoftとJ.P. Morganについては、戦略的パートナーシップと、Azure blockchain serviceが提供するはじめてのプラットフォームとしてQuorumが採用されたことが、2019年5月に発表されました。
▼Azure Blockchain Serviceについてはこちら
Azure Blockchain Serviceで何ができるのか、メリットと構成
今後の展開
現在、AURAプラットフォームの導入先としては、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールをはじめとする、LVMHグループのいくつかのブランドが含まれているとのことです。
今後については、LVMHグループ内だけでなく、他の高級ブランドグループへの展開も検討中のようです。この際、他の高級ブランドグループは、AURAプラットフォームが提供するAPIを通じて、ホワイトラベル形式 (=OEM形式)での利用が可能になるとのことです。
これは、AURAプラットフォームを、業界全体へ広く普及させようとしていると捉えることができるのではないでしょうか。