iPhoneユーザーで、たまたまSolanaシステムやアプリケーションへの積極的な参加者・ファンであったなら、これら二つの間に既視感を覚える瞬間が多々あったかもしれない。
SolanaとApple iOSは同工異曲である——これは単なる直感にすぎないかもしれない。しかし、この2つを歴史と現状から分析して比べてみると、あっと驚くような結果が出るかもしれない。
そう、それは「いつかSolanaは、クリプト界のApple iOSになるかもしれない」という大胆な予想が頭に浮かぶほどに。これまでの直感も、あるいは真実に近かったのかもしれない。
Apple iOSとSolanaは、インターネットとクリプトという2つの異なる世界に属しているものの、その開発を支える第一原理のロジックは非常に似通ったものであると我々は考えている(以下のコンテンツおよびその結論は、CGV FOFのリサーチチームによるものである)。
第一、究極の使用体験。
ユーザーエクスペリエンスは、製品のコアコンピテンスとしての文脈で幾度となく言及されるものだ。そして、iOSのシステムはAndroidのそれよりもスムーズであり続けるだろう。
この背景には、究極のユーザーエクスペリエンスに対するAppleの絶え間ない努力がある。
タッチスクリーンは、Appleが初めて採用したものではない。マイクロソフトやPalmなどのスマートフォンメーカーもかつて、タッチスクリーン型のスマートフォンを普及させようとしていた。
しかし、iPhoneは静電容量方式タッチパネルとマルチタッチの技術的難関を突破して、究極のタッチ体験を他者が達成不可能なレベルまで高めた。
例えば、iOSではスクリーンの反応が最優先され、Touch – Media – Service – Core アーキテクチャの順で応答する。簡単に言えば、ユーザーが画面に触れると、iOSシステムは画面表示(Touch)層の処理を最優先する。
一方、Androidシステムの優先応答層はApplication-Framework-Library-Kernelアーキテクチャと、表示に関わる画像処理の部分(Library)の優先順位は3番目にとどまっている。このような要素は他にもいくつかあり、ユーザーエクスペリエンスの大きな違いに直結している。
同様に、Solanaは、初期に誕生した元祖のパブリックチェーンではないものの、超高TPSと低い取引手数料により、当時のほとんどのパブリックチェーンが抱えていた成長のボトルネックを突破し、増え続けるクリプト開発者とユーザーを征服した。
例えば、Solanaは、400ミリ秒のスロットタイムを維持しながら、毎秒5万件以上のトランザクションを処理することができる。また、TPSの増加をムーアの法則に結びつけ、TPSスケーリングの“予測可能性”を提供する。
これに加えて、100万件のトランザクションでわずか10ドル程度という圧倒的に安い取引手数料も忘れてはいけない。
この中で、SolanaのコアをなすコンセンサスメカニズムであるPoH(Proof of History)は、信頼できる共通の時間源がない分散ネットワークにおける時間の問題を解決するために設計された。検証可能な遅延機能により、PoHでは各ノードがSHA256アルゴリズムを用いてローカルにタイムスタンプを生成することができる。
これにより、ネットワーク上でタイムスタンプの情報を送信する必要がなくなり、ネットワーク全体の効率が上げることができる。
パブリックチェーンの使用体験が優れているかどうかは、そのウォレットの数と使用頻度という指標に反映される。 例えば、Solanaで最も人気のあるウォレットの一つであるPhantomは、トークンのスワップ、NFTやコレクションの収集、ハードウェアウォレットとの接続、監視のガード、Web 3.0のサポート、SOLのステーキングによる報酬など、Solanaエコシステムのほぼ全ての機能を統合している。
ワンストップで優れたユーザー体験を提供するPhantomは、Solanaを使用する上でまず初めに選ばれるウォレットとなり、月間アクティブユーザー数(MAU)は2021年8月から10月の2ヶ月間で約5倍に増え、120万人を突破した。
第二、優れたUIデザイン。
UI(ユーザーインターフェース)は、ユーザーが求めるさまざまな機能を実現するための人間とコンピューターの対話の窓口として、ソフトウェアや製品がユーザーにとって直感的に操作できるかどうかを決定づけている。
Apple iOSは、ボタンのスタイルからアイコン、画像のサイズから解像度まで、プラットフォームごとにUIデザインの仕様が厳格に定められている。これにより、個々のプログラムやソフトウェアのスタイルが統一されるだけでなく、ユーザーを無意識のうちにiOSソフトウェアに慣れさせることができる。
丸みを帯びた長方形のフレームで、ボタンは前面に1つだけ、あとは完全にガラスパネルで覆われているデザインはiPhoneを象徴するものとなっている。
インターネットであれ、ブロックチェーンやクリプトの分野であれ、UIデザインはプロジェクトが真剣に取り組むべきものの一つだ。”ユーザーファースト”のUIデザインを携えるだけでも、多くの人を商品に引きつけ、売れ行きを良くすることができる。
人間とコンピュータの相互作用における専門家であるニールセン博士は、「インターネットではユーザビリティが生存の要件である」と指摘している。使いにくいサイトでは、ユーザーはすぐに離れていってしまう。
「トークンを買うときはプロジェクトのロゴしか見ない」という人もいるほどだ。もちろん、これは笑い話の類ではあるが、少なくともプロジェクトのビジュアルデザインの重要性を示してはいる。
Solanaのロゴは少なくとも、細部にまで気を配られており、チームの美意識の高さを示している。
Solanaロゴの色は、緑から紫へのグラデーションで、自然界でもこのような色彩を見ることができる。例えば、神秘的で高貴な印象を与えるオーロラである。
また、サイバーパンクをテーマにしたSF映画では、紫、緑、青の色調が映像に多く使われており、Solanaの革新的なブロックチェーン技術の未来を反映したものとなっている。
Solanaをベースにした多くのプロジェクトは、一見すると同じデザイナーが手がけているように見える。その配色やインターフェースデザイン、インタラクションデザインなどには一貫性がある。
インターフェースは直感的でシンプルかつ使いやすく、ユーザーはインターフェース上の機能を一目で理解できるため、特別な学習をしなくても簡単にSolanaシステムを使用することができる。
CGV FOFのリサーチによると、有名なSolana IDOプラットフォームでは、プロジェクトの審査時にUIデザインがより優先される。Solanaは、優れたUIを持つプロジェクトをより多くインキュベートし、サポートすることで、Solana利用の受容性を高めるよう、トップダウンで取り組んでいるようだ。
第三、強大なエコシステムによるサポート。
熱力学第二法則によれば、孤立したシステムは環境とのエネルギー交換を行わず、常に乱雑さ(エントロピー)が増大する方向に自発的に変化する、エントロピー増大則を持つ。この現象に対し、ノーベル化学賞を受賞したプリゴジンは、システムが無秩序な状態から秩序ある構造へと移行するためには、システムがオープンであること、すなわち物質やエネルギーを外界と交換しなければならないことを提唱した。
ビジネス・エコシステムを解放するためには、中核企業が自社のリソースや能力をパートナーに開放し、エコシステムへの参加を呼びかけ、相互のエンパワーメントによる価値共創を実現することが求められる。
Appleは創業当初から外部のエンパワーメントに力を入れ、外部の開発者に強固な開発ツールキットを提供し、App Storeを通じてユーザーとつながることを可能にした。その結果、Instagram、Snapchat、YouTube、WhatsAppなど、数多くの優れたアプリケーションが綺羅星のごとく誕生した。
また、Appleにおけるプロダクト流通の仕組みは他のプラットフォームに比べて公平で合理的であり、ソフトウェアショップのダウンロードランキングデータはリアルで信頼性が高く、開発者にとっても良い競争環境を形成し、ユーザーの真のニーズをより正確に把握することができる。
Solanaもまた、エコシステムの構築に力を注いでいる。優れたプロジェクトに対する長期的な資金提供プログラムを持っており、VCの紹介、技術支援、採用支援、マーケティング、法的サポートなど、あらゆるリソースを提供している。
例えば2021年、Solanaは1年間に3回連続で公式グローバルハッカソンを開催した。直近のハッカソンは、賞金総額100万ドル、登録者数15000人以上で、世界中から300以上のプロジェクトが応募。
Solanaは開発者から多くの注目と支持を集め、さらに質の高いSolanaネイティブアプリが登場した。
さらに注目に値する統計として、ハッカソンの開発者の90~95%が、Solanaブロックチェーンでの開発を長期的に続けたいと表明していることが挙げられる。これらの優秀な開発者たちは、Solanaのエコシステムに絶え間ないエネルギーを与えることになるだろう。
第四、魅力に満ちたリーダー。
Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズが世界を変えたというのは少し過激かもしれない。しかし、彼がアメリカや人類が目指す「イノベーション精神」の代名詞になったのは、間違いない事実だろう。
スティーブ・ジョブズは、テクノロジーとヒューマニティの交差点に立つ巨人であり、理想主義と完璧主義という特性を兼ね備えた彼は、Appleを従来の業界とは全く異なる路線に導いた。
”シンプルさ”を例にとると、スティーブ・ジョブズはミニマリズムを愛しており、インド仏教の教えである「言葉を使わず、心にまっすぐ届く」に触れたことが、アップルの”ボタンのない”デザインに強い影響を与えたと言われている。また、シンプルなデザインを追求することに加え、ジョブズは多くの製品ラインを率先して削減した。
数としては1年に1〜2製品しか発表しないが、その製品はどれもベストであることが保証されているのだ。
Appleにとってのスティーブ・ジョブスは、SolanaにとってのSam Bankman-Fried(SBF)だ。もちろん、Solanaを支える優秀なエンジニアや開発チームは、アップルのそれと同じように尊敬されていることを否定するつもりは全くない。
SBFはかつて、金融業界の巨頭ジェーン・ストリートでトレーダーとして活躍していた。彼は、オートトレーディングアナリスト、エンジニア、ハイフリークエンシー・トレーダーといった金融関係者で構成されたチームとともに、Alameda Research(量的取引会社)とFTX(仮想通貨取引所)を設立した。
彼らは中央集権か非中央集権かの議論にはあまり関心がなく、”このブロックチェーンは大規模にスケールできるのか?”ということに関心があった。
2017年にジェーン・ストリートを離れた後、SBFは潜在的な機会について時間をかけて考え、「暗号通貨には多くの特徴がある。これはとても非効率なシステムである可能性があり、流動性に対する需要が高い。つまり巨大な需要が突然現れ、急速に成長する可能性がある」ことを発見した。
そしてSBFは、これらの問題を解決する究極の方法を探し求め、Solanaと出会ったのである。
Solanaの共同創業者であるAnatoly Yakovenkoはかつて、Solanaのメインネット公開前(2019年)にSBFと初めて接触したときのことを次のように語っている。
このようにして、Solanaは新しいアプリケーションプロジェクトを得ただけでなく、クリプト界の偉大な代弁者(その重要性は今やNBAにおけるジェームス・ハーデンのようだ)を得ることができた。この日から正式に、SolanaはSBFと同じ時を刻むようになったのだ。
2021年1月、SBFは「みんなSOLを売ってくれ」「3ドルで買えるだけ買う」とツイートした。もちろんこれはジョークだが、SBFがSOLに大きな期待を寄せていることが分かる。
第五、情熱的なファン達。
iPhoneファンが、新世代のiPhoneをいち早く手に入れようと、ショップの前に徹夜で並び、スーパースターのコンサートのチケットを手に入れるのと同じように、iPhoneを手に入れようとした日々を覚えているだろうか。
Appleが毎年発表するiPhoneは、単なる新製品の域を超え、まったく新しい文化現象となっている。これは他社の新製品発売にはない市場の反応だろう。
CGV FOFのリサーチによると、TwitterでのSolanaのフォロワー数は、Ethereum(197万人)には及ばないものの110万人と多く、他の主流のパブリックチェーン、Polkadot(101万人)やAvalanche(45万人)、Fantom(27万人)、Near(23万人)の中ではランキング1位の座にある。
では次に、SolanaのミームコインであるSamoyedcoin($SAMO)を見てみよう。これは柴犬コイン、Sam Bankman-Fried(頭文字のS、A、M)、Solana共同設立者Anatoly Yakovenko(彼の故郷はSamoyed犬の発祥地)をモチーフにしている。
現在、SAMOはSolanaエコシステムのマスコット・象徴となっており、ピーク時の流通額は7億ドル以上にも達している。
Solanaのコミュニティでは、他のパブリックチェーンのコミュニティとはまったく違う雰囲気を感じることが多い。ネット上では、ETHとSolanaの熱狂的なファンの”叩き合い”をよく見かけるが、これはNear、Avalanche、FantomとEthereumコミュニティ間における平和で幸せな様子とは全く異なるものである。
これは、ETHの関門(EVM)を通らず、別の道を選んだSolanaの“我儘”による代償でもあるのだろう。
もちろん、こうした次元でSolanaをAppleのiOSと比較するのは無理があるかもしれない。また、最近のSolanaのネットワークの不安定さなどを批判する声もまだある。
しかし、長い目で見ればネットワークのアップグレードやサービスノードの拡大、インセンティブの調整などによって、これらの問題はSolanaの歴史の本流とは交わらない、挿話のようなものになっていくだろう。
事実、Appleの発展とて一夜にしてならず、いくつもの重要なターニングポイントを経て、後の王者としての地位を確立していったのである。
例えば、iPhone4は、携帯電話初の商用網膜スクリーン、カメラのハードウェアとアルゴリズムの二重の進化、最もクラシックな携帯電話の形状、自社開発チップの初使用…など、ハードウェア、ソフトウェア、デザインのブレークスルーに焦点を当てた画期的な製品だった。
宇宙論では、特異点によって作られたビッグバンが今の宇宙を構成したとしている。シンギュラリティは歴史の重要な転換点である。
iPhone 4の誕生は、まさにAppleの開発史におけるシンギュラリティであり、Appleを急速な成長の道へと導くものだった。
ここで、クリプト界のApple iOSになるというSolanaのビジョンの実現に向け、いくつかのシンギュラリティを挙げてみたい。
消費者市場のユーザーが1億を超える。
2021年11月7日、Solana ウォレットであるPhantomのアクティブユーザー数が100万人を突破した100万人から1億人というのはかなりの飛躍に見えるかもしれないが、クリプト界のネットワークの成長による指数効果によって、かなりスピードアップが期待できる。さらにポジティブな見方をすると、Solanaの共同創業者であるAnatoly Yakovenkoは、技術の発展とともに「10億人のユーザーを集める」ことが次の段階であると繰り返し述べている。
VISAのユーザー数が2018年の時点ですでに30億人を突破したことには着目しなければいけない。
機関投資家の取引量が8割を占める。
さらに多くの機関投資家がクリプト市場に参入することは、巨大な資本の流入に直結する。2021年のブル相場は機関投資家のブルとも呼ばれ、テスラやMicrostrategy、グレースケールビットコイン投資信託(GBTC)、”女性版バフェット”と持て囃されたキャシー・ウッドのARKファンドなど、多くの機関投資家が参入していた。
SBFは、今後5年間、主に機関投資家の潜在的な投資によってクリプト業界が成長する可能性が高いと見ている。我々としては、パレートの法則(2:8の法則)により、機関投資家がSolaba市場の一軍となり、その取引高シェアが80%を超えれば、Solanaは間違いなく新展開を迎えるだろうと考えている。
イーサリアムからSolanaへの遷移率が30%を超える。
今年6月、イーサリアムとSolanaのクロスチェーンブリッジであるNeon Labsがローンチされた。Neonを使えば、誰でもイーサリアムのスマートコントラクトをSolanaブロックチェーン上で実行でき、開発者は両方のブロックチェーンで動作するプログラムを簡単に構築できるようになる。
すでにイーサリアムで開発されているプロジェクトの3分の1以上が、同時にSolana上でもアプリケーションを構築するとしたら、これは非常に面白いことが起こるだろう。
Solanaの時価総額がイーサリアムの50%に達する。
SBFは、DeFiプロトコルを開発する独自の基盤技術がSOLトークンの価格高騰を促進し、さらにSolanaが最大の分散型金融プラットフォームとしてイーサリアムを追い抜く可能性があるとすら考えているようだ。Solanaの現在の時価総額(約550億ドル)は、イーサリアム(約4700億ドル)と比べて8倍近くの距離があるが、イーサリアムの時価総額の50%に到達すれば、Solanaの発展における重要なマイルストーンになることは間違いない。
Solanaは本当にクリプト界のApple iOSになれるのか?おそらく、答えはノーだろう。
「Solanaとイーサリアムの共存を見ることになるだろう。iOSアプリとAndroidアプリが共存しているように」。Multicoin Capital のマネージングパートナーであるKyle Samani のこうした観点には非常に賛同する。
おそらく近い将来、Solanaとイーサリアムはそれぞれクリプト界のiOSとAndroidになるかもしれない。幸いなことに、我々は皆この大きな変革に参加し、それを目の当たりにしているのである。
注意:本稿はCGV FOFリサーチレポートであり、いかなる投資を勧誘するものではありません。
CGV FOFについて:CGV FOFはCrypto FundおよびCrypto Studioに特化したアジア発マザーファンドです。CGV FOFは、日本、韓国、中国、台湾のベビーファンドで構成され、日本に本部、シンガポールとカナダに支部を構えています。
付録:参考資料
- 《Solana Summer》,Not Boring by Packy McCormick, 2021
Solana Summer, Not Boring by Packy McCormick, 2021 - 《An Introduction to Solana》,Grayscale, 2021
An Introduction to Solana, Grayscale, 2021 - 《Why Solana is the ’World Computer’ Blockchain Developers Need》, Andrew Hyde, 2019
Why Solana is the “World Computer” Blockchain Developers Need, Andrew Hyde, 2019 - 《一文读懂以太坊杀手Solana》,OKEx Research, 2020
Understanding the Ethereum Killer Solana by Reading This Article, OKEx Research, 2020 - 《Digital Assets: Beauty Is Not in the Eye of the Beholder》, Goldman, 2021
Digital Assets: Beauty Is Not in the Eye of the Beholder, Goldman, 2021