仮想通貨の普及には何が必要となってくるでしょうか。DeCurretは、既存の金融プラットフォームとの連携がそのカギであると考えています。
仮想通貨による電子マネーのチャージでも話題を呼んだDeCurretがみる業界の展望とは。本記事では独自の視点からその点について語っていきます。
インターネット黎明期から現在に至るまで
私は、ちょうどインターネットが台頭した頃である1995年にIIJの創立から携わっており、インターネットの変遷と共にさまざまな金融事業やクラウド事業の立ち上げを行なってきました。
そして1999年には株式の手数料が自由化され、ネット証券が誕生。IIJは住友銀行グループと共に楽天の前身である外資系企業DLJに出資し、合弁会社を設立しました。
また、まだネットで株を購入する人がいなかったこの時期にオンライン証券を立ち上げ、その後インターネットバンキングやFXなどの事業の立ち上げにも関わっていきました。
昨今は、SNSやスマホの普及によって、リアル社会とネット社会が融合し、大体のことがネットの中で行えるようになっています。
その変化のスピードに金融サービスが遅れをとらないためには、金融インフラのさらなる進化が必要となります。その手段のひとつが、現在私たちが取り組んでいる「仮想通貨」を使ったアプローチなのです。
お金の形、デジタルの世界
世界でキャッシュレス化が進行する最中、日本国内ではまだ現金の利用が多いと聞かれた事があるのではないでしょうか。
ある意味、国内の金融インフラが安定している状態を表しているといえます。しかし、これは先進国に限った話であって、途上国に目を向けると半数以上の人々が自国の通貨を信用していなかったり、銀行口座を持っていなかったりするのが現状です。
そんな中で2009年に、ネットの中だけに存在し、ネットの中で価値が移転できるビットコインが誕生。リアル社会で何か手続きを行うなどの仲介が一切入らないというその仕組みは大きなインパクトを人々に与えました。課題やネガティブな側面もあるものの、その技術や仕組みはインターネットと同じくらいのイノベーションを生む可能性があります。
そこで私たちは、ビットコインなどの仮想通貨やステーブルコイン、電子マネー、証券トークンなどのあらゆる価値をネット上で安全に交換できるプラットフォームがあれば、さまざまなプレイヤーが参入し、既存の金融インフラの隣にデジタル専用の金融インフラが構築できると考えました。そこから生まれたのが「DeCurret」です。
2つの観点からみる仮想通貨の発展
仮想通貨の発展について、私は大きく2つの捉え方があると考えています。
1つ目は「決済手段」としての発展です。
例えば、仮想通貨による電子マネーのチャージです。今日使用されている既存の金融サービスと連携することで、投資以外に使用する場所がない仮想通貨の使い道を、ユーザーに提供することが可能になります。
そこで我々が重要だと思うのは、いかに既存の金融サービスとシームレスにつながるかという部分です。既存の金融インフラのとなりにデジタル専用の金融インフラをつくり、金融サービスを更に使いやすしていきます。
2つ目が「投資対象」としての発展です。仮想通貨の高いボラティリティは投資商品としても魅力的です。
また、既存の法定通貨と違って、仮想通貨の世界では今日もたくさんの通貨が新しく開発されています。ここで我々が重要だと思うのは、そのような新たな通貨の選考におけるセキュリティや発行体の安全性に対しての基準づくりです。
今後もこのような基準をクリアした上で開発が進み、投資としても魅力的な仮想通貨が出てくることには、仮想通貨の発展という側面から期待をしています。
ステーブルコインやセキュリティトークンの発行も視野に
現物取引、次に証拠金取引など仮想通貨でできることは一通り年内に提供する考えがあり、通貨の追加、さらに仮想通貨の決済サービスとして、電子マネーチャージの開始も7月に予定しています。
その後も、様々なかたちでDeCurretを介して交換が行われるような機能を、API提供も含めて随時開発していきたいと考えています。
例えば、ステーブルコインとSTOは来年度以降に展開していきたいと考えています。
日本円そのものをデジタルな日本円に交換したり、それを仮想通貨に、あるいは、株や証券、債券といったものをトークンとしたものと交換したりするなど、可能性は多岐にわたります。
これが完成すると、既存のポイント、ギフト、電子マネーや既存のデジタル金融サービスの商品をプラットフォームへ持ち込み、簡単な手順で交換することが可能になります。
そうなってくると、価値が計算出来るものはプラットフォーム上に置くことが可能なため、証券の枠を超える、例えば金や原油といった資源やいずれはブランドや著作権や不動産といった権利系を扱うこともできるようになります。
法改正は金融インフラ化への一歩
仮想通貨交換業はこの1年で大きく変化しました。規制などの面からも従来は参入しやすい分野でしたが、今は一般の金融業と同じようなレベルの内部管理体制が要求されるようになり、厳重な安全対策が必要です。
特に安全対策やマネーロンダリングということに関しては、過去に資産の流失もあったので他の業種よりも厳しくなりました。そのため新規業者にはなかなか登録が下りないといわれています。
実際に、この1年で登録業者となったのは、新規では我々一社のみです(※2019年7月1日時点)。我々は、最終的にはデジタル金融のプラットフォームを運用するために必要な安全対策や内部統制、厳格な管理体制が必要であることを前提で取り組んでいたので、登録の基準が高くなったことに対してそれほどギャップはありませんでした。
仮想通貨交換業の規制は、これまでにない新たな金融インフラを形づくっていく上で重要なものです。その点を鑑みるとある程度厳しくなるのは正しいことではないでしょうか。
ステーブルコインやSTOの法整備は喫緊の課題
ステーブルコインやSTOはいろいろと議論が始まってはいますが、まだ明確に規制枠組みの方針が打ち出されていないのが現状です。
ここは業法の整理をしながら、例えばどの業が法定通貨Aを担保にコインを発行することができるのか、誰がセキュリティトークンを流通をさせられるのか、また仮想通貨交換業はどこまでの範囲が対象なのかといったことをしっかりと議論する必要があるでしょう。
一方ステーブルコインでいうなら、米国では何種類ものドルペッグの通貨が存在し、取引所が発行もしていて流通量も増えています。
実際にそちらのステーブルコインを発行している会社とも話をしていますが、運営体制も整備されていて、仕組みもかなりしっかりしている印象を受けます。日本も早く取り組みを始めないと、遅れをとってしまうでしょう。
閉鎖的な「仮想通貨業界」をひらいていく
既存の金融機関や大手企業と、仮想通貨業界の間にはまだ壁があるといわざるを得ないでしょう。そういう方々をこの世界につなげる役割、それが我々の価値だと思っています。
仮想通貨コミュニティは、閉鎖的ゆえに魅惑的で面白いところがあるのも事実です。しかし、今の世界と融合させるためにこれを開いていくのがディーカレットの役割ではないかと考えています。
それを達成までにはいくつかの段階がありますが、ステーブルコインに関連したものになると多くの人が関わってきます。そして、ここはディーカレットの株主が期待している分野です。
ただ、そこにいく前に仮想通貨で色々なことができるということを証明できればと思います。そして、それが既存の金融サービスとの連携です。
今までは閉鎖的な仮想通貨に対して、そっちからこっちのサービスに入ってくるのはやめてくれというような雰囲気がありました。ただ、我々だったら話をしてくれる、そういったお客様や企業も多くあります。
説得には時間がかかるでしょう。でも1つ1つ丁寧に説明して「他の金融サービスとなんら変わりはない、むしろもっと高いレベルで新しいものをやっている」ということを伝えています。電子マネーチャージもその一環です。
これを進めていけば、仮想通貨を持っている人たちが段々と既存のサービスにつながっていくと思います。また、今は始めていない人もちょっと面白そうだからやってみようかという動機付けにつながるのではないでしょうか。
仮想通貨のそれぞれの個性をみてほしい
仮想通貨は、「通貨」そのものが実質的な商品です。また、通貨の魅力を高めたいし、通貨についての理解を一層深めていってもらいたいと思っています。
今は仮想通貨=ビットコインみたいなところがありますね。たしかにビットコインそのものは魅力的です。でも他にも様々な魅力をもったコインがあるのです。
株で好きな銘柄があってその銘柄ばかり扱っている人がいるように、通貨をよく理解していただいて、通貨に興味を持ってもらいたいと思っています。
新規銘柄は「セキュリティ」が最重要
通貨を追加していきたいという意思は持っていて、そこに対して取り組みを進めたい思いはあるのですが、通貨の追加における審査は非常に厳しくしているのが現実です。
我々の中で、通貨の選定基準をしっかり持っていて、通貨を選定するにあたって細かい調査があります。そうなると、やはり少し時間はかかってしまいます。
また選定において最も重要になるのはセキュリティです。お客様の大切な資産になるので、どんなことがあっても流出しないということが最低条件になります。
あとは人気があるのかどうかも重要な要素となります。セキュリティ、そして市場としてニーズがどれだけあるか、この2つが重要です。
デジタルとリアルをつなぐ唯一無二の存在として
この業界に対して、気にはなるけど入り込めないといったある種の壁を感じる方も少なくないでしょう。その原因は、この業界がどのようなものかというのがなかなか正しく知れ渡っていないところにあると思います。
通貨そのものの魅力も然りですが、実際の世界でも使えるということ、そして安心安全のためにこういう努力をしているということをできるだけ正しい情報として発信していきたいというのが、そこでの我々の考えです。
デジタルとリアルの両方に信頼いただける唯一無二の存在として、双方の世界をつなぎ、相乗効果を生み出し、新しい金融インフラを盛り上げていく。一日も早くその夢が実現できるように、全力で突き進んでいきます。