健康が可視化された財産へ トークンエコノミーがもたらす本来のあり方

これまでの法定通貨の経済圏では出来なかった利害関係者に対して、正当な報酬が支払われることで新たに経済循環が生まれることがトークンエコノミーです。

トークンエコノミーの一つとして「健康」を定量化し、誰からも見える個人のポートフォリオにする。そんな近未来的な「健康の可視化」は、ブロックチェーンを使うことで実現可能になる。

今回の記事では、具体的にどのような形でそれが可能になるのか。また、トークンエコノミーを発展させていく上で最も重要となる、バウンティインセンティブ設計、そしていかにトークンを循環させる仕組みを作っていくのかについてお話していきましょう。

「健康の可視化」にはブロックチェーンが必要

 ブロックチェーンには、基本的なベースとして、即時性(入出金が早い)、手数料が安い、改ざんができない、分散台帳なので誰でも見れるという透明性、そしてスマートコントラクトという5つの仕組みがあります。さらに、トークンを利用した取引は、誰からも見えて公平であり、手数料もほとんどかかりません。これらの要素が、ブロックチェーンを使う主な利点になります。

 これらの仕組みを省いて「健康を可視化」することは非常に難しいと私は考えています。

例えば、ソーシャルでの「ヨガに行きました」、「健康な料理をつくりました」といった健康をアピールする投稿は、「いいね」や「シェア」などはあるものの、本当に健康につながっているのか定量化はされておらず、どちらかといったら個人の自己満足や承認欲求を満たすところに留まっています。

それを、「その人が本当に健康なのか」をみえる形にする、且つその人が本当に頑張っているのならそれを定量化して、誰からもみえるその人のポートフォリオにする、そういったことがブロックチェーンを使うことで可能になるのです。そして、健康になるような何らかのバウンティ(ステークホルダーによる報酬の取引対象となるアクション)に参加して、トークンをもらうことで健康が可視化され、そのポートフォリオは充実していきます。

また、ポートフォリオが定量化、数値化することで、健康になろうとしている人たちの中でヒエラルキーが生まれるでしょう。これまでは、なんとなく健康な人たちがいるといった感じであったのが、あなたはこういうことをしているから健康なのですという証明を、健康をトークン化することで実現できます。

そのような可視化ができるようになると、データを提供してくれた人への即時かつマイクロペイメントでの紹介料の還元なども可能です。従来の仕組みでは、そういった形でのステークホルダーへの還元は困難でしたが、ブロックチェーンを使うことで実現できます。

バウンティで広がる「健康」のトークンエコノミー

ソーシャルへ健康に関する投稿をしても、それは「いいね」などでしか定量化されませんが、バウンティに参加すれば報酬を受け取れ、なおかつその記録はブロックチェーンに刻まれるので改ざんはできません。つまり、それを行なったという事実がブロックチェーンに刻まれることになります。

また、どのようなアクションに対しても報酬を与えることができ、すべてのステークホルダーに正当な報酬を、スマートコントラクトで瞬時に渡すことが可能です。これは、従来のソーシャルでは出来ていないことです。

さて、健康食品ではどうでしょうか。

例えば、何らかの健康食品を食べて、それで健康になったということをソーシャルに上げても、健康食品を提供する企業や、それを応援するユーザーには何も報酬はありません。承認欲求で上げて、それをいいねして、なんとなくソーシャルが盛り上がるだけです。

フェイスブックなどは、それをターゲティングして広告を打ったりもしますが、そこに使われたデータを持っているのはソーシャルの集合体であり、その統計的なデータがあるからこそ成立するターゲティングであるにも関わらず、広告収入はそれらのステークホルダーには還元されません。そして、それができない理由には、広告収入を還元しようにも、少額すぎて送金が難しいという現状もあるでしょう。

しかし、トークンエコノミーのバウンティによって、たとえ100円だろうと、何かアクションを起こした人に対して瞬時に報酬を支払うことができます。今までできなかったことができるという点で、可能性は限りなく広がっていくようにみえます。

トークンのインセンティブ設計

ここで現在、私がトークンエコノミーエバンジェリストとして携わっているプロジェクトの一つであるウェルネストークンを例に紹介していきましょう。

このプロジェクトのインセンティブ設計は、いうなら「自由」です。例えば、ヨガ教室にいったことを動画にあげて、本当に活動しているということを5人中3人の第三者が承認したらインセンティブがもらえるという設計もありでしょう。

また、そういう簡単なことからはじまり、何か健康に関する財団やボランティア、そういった団体が企画したマラソン大会に参加したといった際にも、報酬をトランザクションで受け取りつつ、その参加の証明をすることができます。マラソン大会にしても様々あり、それぞれの大会の参加証はありますが、それらは個別の大会であってつながっていません。しかし、それらを、このトークンエコノミーの中のバウンティでマラソン大会を開催できるようになることで、全部につながりを持たせ、全ての活動をそこで証明できるようになります。

さらに、健康食品を食べたり、検査や採血を受けたり、ラジオ体操に参加したりなど、どんなに小さなことでも報酬をもらえたらいいと考えており、このトークンエコノミーではそれが可能になります。ここの大事な点は、トークンという報酬を何かと交換できる、あるいは現金化できるといったところよりも、その人のポートフォリオが充実するところにあると思っています

また、今回ヘルス(健康)トークンではなくウェルネストークンとした理由ですが、それは、トークンを、ウェルネス(元気、爽快)といった意味合いの大きなくくりの中で、医療に限らずそれぞれが健康に良いと思ったことを行なった瞬間にもらえるものとして考えているからです。簡単にして、色々なことに参加してもらうというのが、インセンティブ設計のミソになっています。

そうなると、きっとこちらが設計した以上のものが生まれてくるでしょう。最初はMicro Blood Science(MBS)が設計しますが、バウンティ登録をすること自体も自由にしようと考えているので、一般の人や企業などが思いついたことがバウンティになっていきます。

報酬をもらいつつ、それがポートフォリオという証明になって刻まれることで、お互いの企業価値が上がったり、商品が売れたりといった形で経済が活性化されていく。そこを一緒に考えられれば、バウンティを自由にすることで様々な報酬形態が生まれて、想像以上のおもしろいこともできてくるはずです。

トークンが経済圏を回る仕掛け

トークンエコノミーで一番肝心な部分は、バウンティなりトークンが使える特典を用意して、そのステークホルダー(今回はユーザー)の中でトークンが滞留しないようにすることです。今回のトークンは株と違って、ホールドしても配当がもらえたりはしないので、ホールドすることに意味はなく、使ってもらわないとなりません。大事なのはトークンをもらったり使ってもらうことでトランザクションの量を増やして、個人のポートフォリオを充実させることです。

事業の中で、そこは最重要視するべきところの1つです。もちろん、トークンの価値を上げるというところもKPIとしてみていますが、簡単にトークンがもらえる仕組み、そして簡単にトークンが使える先をどんどん増やしていかなければなりません。

実際にトークンを使える先としては、健康企業と組んで開発したトークンエコノミー内でしか購入できない製品であったりを考えています。ただ、そこでは実際に使うユーザーのポートフォリオとヒエラルキーがみえるので、健康企業からしてもそのヒエラルキーの上位10%の人しか購入できないというようなスマートコントラクトを組むことも可能です。

そして、これは生産者が消費者を選ぶことができるという意味で、これまでの仕組みとは異なるおもしろい点でもあります。生産者と消費者、お互いの可視化を、スマートコントラクトを使えば嘘がなく改ざんされにくい仕組みでつくれます。

また、そういった仕組みを取り入れながらも、もらったトークンを健康になるためにさらに使ってもらうということも必要です。このトークンエコノミーの場合、MBS(微量採血検査)もあるので、3ヶ月分くらいのトークンを溜め込んでそれで検査をしてほしいとも思っています。3ヶ月に一度くらいのタイミングで、「血液検査をしませんか?」というようなバウンティが出てくる形を想像してもらいたいです。

そのように、バウンティは報酬をもらうものだけでなく、「使う」バウンティもつくれます。3ヶ月これだけ頑張った分のエビデンスを検査でとりましょうといったように、仕掛けもしていって、ユーザーも検査を受けることで、実際にトークンを使う、健康であることを証明してポートフォリオに刻むというようなこともできます。

健康活動を行なっていた記録だけでなく、実際に健康になっていることを検査で証明したとなると、ヒエラルキーに対する見方も変わってきます。上位10%の人たちは健康活動もしてさらに検査もしているというように、そこの努力が可視化されることで、企業もそれを認めて、そのヒエラルキーに応じた特別な待遇を与えるといったことも可能です。そのようにユーザーと企業との関わり方に変化をつけることで、トークンの流動性は加速し、トークンエコノミー内で良い循環が生まれます。

企業の製品やサービスと、トークンエコノミーでのヒエラルキーやポートフォリオに対してのマッチングが行われることで、ユーザーはトークンをもらって使う。健康企業は、それぞれのバウンティをつくって、そこに多くのユーザーが参加することで、ユーザーはトークンが貯まる、企業はユーザーが気に入った製品を把握することでより的確なレコメンドをすることが可能になります。

こういったバウンティを選んでいるからこそ、こういう製品に興味を持つだろうといったように、的確でコンバージョンが高い状態をつくり出せることは、トークンが循環する仕組みを一層強化します。そのためには、その構造を色んなステークホルダーにわかってもらうことが重要ですが、それを理解した人にはすごくおもしろいものだと感じてもらえるのではないでしょうか。

自身の健康情報を公開することで、得る恩恵も大きくなるようなサービス設計をしていき、それが普通になれば、健康情報の提供に対する感覚は変わってくるはずです。その下地として、ブロックチェーンは、フェアで改ざんされにくい上に、スマートコントラクトを使うことでユーザーと企業の関係性をより発展したものにできる、良い環境であると考えています。

川本 栄介(Eisuke Kawamoto) 株式会社アヤナスシグレ 代表取締役

1999年にDMM.comへ入社。日本におけるブロードバンド黎明期の頃からインターネット事業を生業とする。その後、2006年からはDMMを離れ、楽天、サイバーエージェント、SIer、スタートアップなどで主に新規事業を中心に携わる。2016年にDMMに復帰後はオンラインサロンやブロックチェーン関連の事業部長を経て2018年9月に退職。

現在はブロックチェーンをベースにしたトークンエコノミーを生業とする株式会社アヤナスシグレ代表取締役兼トークンエコノミーエバンジェリスト。他にも、浅草農園ストラテジスト、マイクロブラッドサイエンス社顧問。東京大学にてトークンエコノミーの特別講義を実施。

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