「銀行ネットーワーク」のようなカストディが、新たなセキュリティのソリューション

業界全体でセキュリティを高める施策の1つに「銀行ネットワーク」のようなカストディの設立があります。これは本来のカストディの機能に加えて、業者間の清算的なものを一手に引き受けるような機関です。

なぜその存在が安全性の向上に繋がるのか、またどのような形での実現が有りえるのか。今回の記事ではそれらに対する私の見解をお伝えします。

「銀行ネットワーク」のようなカストディ

カストディは、業界全体で取り組める流出リスク低減策につながるので、カストディ機関を設けて、中央集権的な清算機関を持つことは可能性として大いにあります。

暗号資産の入庫の受け入れ元と出庫の払い出しの情報について、受け入れと払い出し側で情報連携して協力することが、勧告で定義づけられています。これを文字通り実装した場合の最も分かりやすい例が「銀行ネットワーク」です。

例えば、AさんがBさんにお金を振り込む場合、同じ銀行内であれば帳簿上を書き換えるだけです。また、銀行をまたぎ100万円を振り込む場合、帳簿上は100万円は動きますが、現金自体の100万円は動いていません。

では現金自体の100万円がどう動いているかというと、日本全体を網羅しているカストディ「日銀」の当座預金である銀行からある銀行に移動しています。この仕組みだと流出はしません。

この場合カストディは、お客様の財産の保護と帳簿の書き換えの両方を行います。業界の16社が乗っかっているカストディ機関のようなものと、業者間の清算的なものを一手に引き受けるような中央集権的な機関を作るというようなことであれば、流出のリスクは非常に低くなるでしょう。

このような仕組みを作ると、カストディの帳簿の中で各社間の資金が動くだけです。資金が外に出ていく場合は、全員で承認するであったり、16社中の10社の承認があれば外に出せるというような状態にします。

この仕組みだと、全部の会社の鍵を盗まないといけなくなるため、流出のリスクはほとんど抑えることができます。

実装事例で言うと、クリプトガレージがやっているテストはまさにそのネットワークです。そこに乗っている人たちが自分たちのビットコインを投げると、その分の証明書トークンのようなものが発行されて、その証明書トークンをネットワークでやりとりしています。

また、このネットワークでは3分の2の承認を得れないと資金は出ないようになっています。ただ、この状態であれば安全性は高まるのですが、中央集権的になります。

カストディ設立はセキュリティの新たなソリューション

私はこのようなカストディをやるべきだと思っています。

ただ一方で難しいことがあって、それはこの仕組みに対してのコスト負担をすることに業界の全社が賛同できるのかという部分です。

また、カストディを担う会社が公的機関ではなく私企業である場合、その私企業への信頼が保てるのかどうかということもあります。

これはロジカルな問題ではなく、エモーショナルかつポリティカルな問題です。共同出資のような形でやるのであれば、取引所の株を証券会社が持っていた時代のように、参加企業が応分の株を持つなどもあるかもしれません。

中央清算管理をするようなカストディという仕組みを作ってやっていく場合、かかったコストというのは基本的には、利益を多大にあげるわけではないけれど、赤字になることは許されません。そのためカストディ費として負担する形を、とってもいいのではないかなと思いますし、これが実現した場合安全性はかなり高まるでしょう。

当社はこの部分に強く興味を持っていて、カストディということを勉強しています。クリプトガレージというところに参加しているのはそういうことです。

これは、ホットウォレットであっても安全性が100%に近い形で担保された状態を保てる仕組みなので、コールドウォレットと同等です

エモーショナルかつポリティカルな問題を克服できるのであれば、私はカストディ的なネットワークであったり、中央集権的な清算機構というようなものは、安全性を高めたり、利便性を高めることについて非常に役に立つと思っています。

田口 仁 DMM Bitcoin 代表取締役

埼玉県越谷市出身。早稲田大学政治経済学部を1994年に卒業し、三菱商事株式会社に入社。 その後は、ライブドア、DeNA、EMCOMなどで様々な事業立ち上げや運用に携わり、現在は「DMM Bitcoin」の代表取締役社長。

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