Layer2を従えたイーサリアムの存在が、未来のストーリーをさらに壮大に

作者:Vargason,CGV FOF リサーチャー

はじめに

過去一年の間に、BSC、Solana、Avalanche といったパブリックチェーンがイーサリアムへの挑戦状を叩きつけている。しかし、幾度となく市場の洗礼を経験したイーサリアムは、ビットコインを除く者の中では依然として強者であり続けている。

イーサリアムのセキュリティや分散性、エコシステムの発展には、エンジニアやこの領域に従事する人を引きつけて離さない魅力がある。

イーサリアムは徐々にブロックチェーンの基盤インフラへと変化していき、まぎれもないパブリックチェーンの王として君臨することになると CGV は推測している。しかし、イーサリアムにはトランザクションの渋滞やコストの激増といった問題がある。

したがって、Layer2 のようなイーサリアムのスケーラビリティを解決するテクノロジーが、今後の発展の主軸となっていくだろう。

L2BEAT のデータによると、2022 年 3 月 3 日までにイーサリアムの Layer2 上にロックされた資産の総額は 60 億ドルに上る。これはほとんどのパブリックチェーンを超えるデータである。

Layer2 のエコシステムと利用ユーザーはますます増加しており、Layer2によってイーサリアムがスケールアップを実現するということは、現在のブロックチェーンの性能的限界を突破し、さらに大きなエコシステムを構築できるということを意味する。

では、Layer2とはいかなるソリューションなのか、詳しく見ていこう。

1 Layer2のイントロダクション

Layer2 は一種のスケーラビリティソリューションであり、ブロックチェーンの“トリレンマ” であるスケーラビリティ問題を解決するものである。Layer2には単独の実行レイヤー(コ ードを実行する場所。EVM のような環境のこと)があると同時に、これは L1(ここでの L1 とはすなわちイーサリアムのこと)上で実行される。

しばらく難解な専門用語からは離れて、銀行を例に挙げてみよう。イーサリアムとはつまり中央銀行であり、Layer2はそのほかの民間銀行である。すべての貨幣・資産は中央銀行によって発行・決済されるが、中央銀行は業務の渋滞を避けるため、民間銀行に一部の業務の処理を許可する。

そしてその処理の結果を中央銀行がまとめて決算することで、業務の効率化を図っているのである。

Layer2 は Layer1 に替わって大部分の計算を行うことができる。イーサリアムのトランザクションをメインチェーン上から離すことで Layer1 の負担を減らし、処理効率を向上させることでスケールアップを実現しようとしているのである。

Layer2 は部分的なコンセンサスしか行うことができないが、さまざまな場面におけるニーズを満たすことができる。

これまで Layer2 には、サイドチェーンライトニングネットワーク、Plasma、Rollup など、 いくつかのスケーリングソリューションが登場してきた。そして、Layer2 技術が Rollup(ロ ールアップ)の段階へと進むにつれ、スケーラビリティは大きな改善を見せた。

ロールアップは、ユーザーにとっては「即時」とも言えるトランザクション速度を提供するだけでなく、コストを大幅に下げ、同時にイーサリアムのセキュリティと分散性を確保するものになっている。

現在、ロールアップには主に2種類のタイプがある。すなわち、Optimistic Rollup(オプティミックロールアップ)と Zero-Knowledge Rollup(ZK ロールアップ)である。

では、この二つのソリューションの具体的内容を見ていこう。

2 二つのロールアップ:オプティミックロールアップと ZK ロールアップ

2.1 オプティミスティックロールアップ——「不正の証明」を使った L2

オプティミスティックロールアップはL1ブロックチェーンのセキュリティを引き継ぐだけでなく、L1 よりも低いコストと高いスループットを実現する。オプティミックロールアップは、メインチェーンに送り返されたトランザクションは正当であると一旦仮定し、 バリデータが「不正の証明(Fraud Proof)」を提出してトランザクションが不当であることを証明した場合にのみトランザクションを拒否するという仕組みである。

言い換えれば、オプティミックロールアップは「有罪であることが証明されるまでは無罪である」という方式のもとトランザクションを検証するモデルである。

では次に、オプティミックロールアップを採用している二つの Layer2、Arbitrum と Optimism を紹介しよう。

2.1.1 Arbitrum

1)概要

Arbitrum は Offchain Labs によるオプティミックロールアップの一つである。Arbitrum は EVM との互換性を活かし、L1 ネットワーク上のアプリケーションを L2 にシームレスに移行することができる。

つまり、DeFi および NFT プロジェクトは、そのコードを比較的容 易にスケーリングソリューション中に移植できるということである。Arbitrum は、L1 と L2 の間の通信機能を活用し、あらゆる形態のイーサリアムの資産をパーミッションレスに転送することを可能にする。

Arbitrum のトランザクションはイーサリアム上で決済されるものの、Arbitrum はネイティブトランザクションデータをイーサリアムに提出するだけで、 実行とコントラクトの保存はオフチェーンで行われるため、Arbitrum に必要なガス代はイーサリアムメインネットと比較して非常に低く、しかもコントラクトは完全な互換性を持っている。

簡単にまとめると、Arbitrum は、極めて低いガス代、パーミッションレス、暗号化技術によりイーサリアムメインネットと同等のセキュリティ、EVM とほぼ 100%の互換性といった特徴を持ったスケーリングソリューションなのである。

2)エコシステムの発展

Arbitrum のメインネットがローンチされた後、Uniswap V3、Aave、Curve、MakerDAO など 74 のプロジェクトがデプロイした。Arbitrum Explorer を見てみると、Arbitrum のトランザクション数は上昇傾向にあり、その中でも、3月3日のトランザクション数は 12 万を超えている。

出典:arbiscan.io

L2BEAT のデータによると、3月3日までにイーサリアムの Layer2 上の TVL は 60 億ド ルに達し、その中でも Arbitrum は 54.3%の 32.6 億ドルを占め、TVL が最も多いスケーリングソリューションとなっている。

これらのデータが示すのは、Arbitrum がわずか半年の間に、初期に参加したプロジェクト以外の、例えば TreasureDAO のような比較的人気のあるプロジェクトが続々と参画しているということである。

※TreasureDAO については CGV Research の記事を参照

Arbitrum 上の TVL TOP10 プロジェクト

目下、Arbitrum を軸足に展開するプロジェクトとしては、GMX、Dopex、Tracer、 Premia、Umami Finance、Swapr、Cap などがあり、TVL は 2000 万ドル以上になる。

また、Arbitrum がトラフィックの流入チャネルを非常に重要視していることにも注目したい。Arbitrum は Binance、FTX、OKX、Huobi などの主要取引所や一部の決済プラットフ ォームと提携し、ユーザーが L2 で直接的に出入金できるようにし、膨大なユーザーを獲得している。

将来的には、パフォーマンスが優勢であり、エコシステムが発展し続けている L2 がますますユーザーの支持を得ていくことは疑いがない。Arbitrum はそのインフラを絶えず最適化しており、その潜在能力も花開き始めた。

始まったばかりの L2 ネットワークにおいて、Arbitrum が先行者利益を獲得していくことは間違いないだろう。

2.1.2 Optimism

1)概要

Optimism の前身は Plasma Group であり、オプティミックロールアップの開発チームである。Optimism は現在のイーサリアムエコシステムにあるツールをすべて活用し、楽観的プロトコルに基づいた L2 ソリューションを実装、オフチェーンで計算を行い、低コスト、低レイテンシ、高スループットを実現する。また、Optimism はイーサリアムメインネットから直接セキュリティを確保できるため、ネットワークのセキュリティを維持しつつ、スケーラビリティを確保することが可能となっている。

Optimism では、トランザクションデータは圧縮された後、L2 上の Sequencer Entrypoint コントラクトに送られる。Sequencer はトランザクションを正常に実行することで報酬を得られるが、担保資金を減らすなどの不誠実な行動を取ればペナルティを受ける。

このことが Optimism の資金の引き出し時間が長いという欠点を生んでいるが、Synapse、Hop exchange などのクロスチェーンブリッジはこれらの問題を解決している。

2)エコシステムの発展

優秀な互換性が Optimism のエコステム構築に極めて良い条件を与えている。3月3日までに Optimism の TVL は 4.69 億ドルに達し、Uniswap、Syntheti、Lyra、Rubicon、Kwenta、1inch、WePiggy などのプロジェクトが Optimism 上に作られている。

このほか、Optimism をサポートするウォレットやツール、ブリッジも増え続けている。

次に、データから Optimism のエコシステムの発展を見てみよう。Optimism の1日あたりのトランザクション数は 2021 年 11 月以来右肩上がりで、最大で 90,805 に上る。最近では 下火になりつつあるものの、20,000 以上を維持している。

出典:dune.xyz

Synthetix は 1.18 億ドルの TVL でランキング1位であり、Optimism の 45.45%を占める。Synthetix のエコシステムの一部であり、オプション取引のプロトコルである Lyra は 3704 万ドルの TVL で2位である。

Optimism の主なプロジェクトは目下、Synthetix のエコシステムを中心としており、これは Synthetix がかねてより Optimism をサポートしていることと関係している。

出典::footprint.network

Arbitrum と比較すると、Optimism を囲む DApp は相対的に少ないが、その TVL はすべて の L2 の中で第4位であり、これは Optimism の互換性によるものだと CGVは考えている。 Optimism がアップデートされていくにつれ、将来的にはさらに多くのプロジェクトが Optimism 上に作られていくだろう。

2.2 ZK ロールアップ——「有効性の証明」を使った L2

ZK ロールアップの方式では、トランザクションがメインネットに書き込まれる際にその正当性を証明するための暗号化証明が生成され、暗号化証明が認証されて初めてトランザクションがイーサリアムに受け入れられる。オプティミックロールアップと異なるのは、ZK ロールアップは「無罪が証明されるまでは有罪である」という検証方法を採用している点だ。

では、ZK ロールアップを採用した二つの Layer2、zkSync と Starkware を紹介しよう。

2.2.1 zkSync

1)概要

zkSync は 2019 年 12 月に創業した、ヨーロッパチームの Matter Labs が開発したスケーリングソリューションである。ZK ロールアップを用いてイーサリアム上のトランザクションを処理することで、そのセキュリティを担保している。zkSync のガス代はイーサリアムのガス代の1%であり、これはオプティミックロールアップを使用するよりさらに安い。イーサリアムの 14TPS をはるかに上回る 2000+TPS を誇り、L1 にいつでも資産を移動することができる。

ただ、zkSync1.0 の zkr ソリューションがカバーできるアプリケーションシナリオには限りがあるため、zkSync の当面の課題は、zkSync2.0 をローンチし、その周囲にエコシステムを構築することである。プロトコル開発が成熟すれば、プライバシーと分散化の問題に焦点が集まるだろう。

2)エコシステムの発展

zkSync は最も期待された L2 スケーリングソリューションとして、2021 年 3 月には Matter Labs がシリーズ A ラウンドで Union Square Ventures をリード投資家とする 600 万ドルの 資金調達を完了している。zkSync2.0 のローンチに先立ち、zkSync は a16z、Dragonfly、1kx、 OKX などと戦略提携を結び、大量の DApp の移植や、取引所と L2 間の資金移動をサポー トする CEX の加入を実現している。

2月 22 日、zkSync は zkSync2.0 のテストネットをローンチした。これは、イーサリアムの テストネット上で初めて EVM と互換性を持った ZK ロールアップが実行されたことを意味する。

zkSync のアップグレードに伴い、zkSync の L2 ネットワークにロックされた ETH は 9万を超え、イーサリアムメインネットから zkSync の L2 に資金移動したトランザクションの合計は 35 万に上り、TVL 総額は 7200 万ドルに至った。このうち、ユニークアドレス 数は約 24 万である。

なお、ユーザーは L2 間の送金により直接アカウントをアクティベートできるため、zkSync L2 の実際のアクティベートアカウント数はユニークアドレス数より多くなるはずであることに留意したい。

出典:dune.xyz

zkSync はネットワークのガス代として使用されるトークンの発行については具体的なタイムラインを発表していないものの、運営チームは早くから、zkSync メインネットローンチ後に発行されるトークンの 1/3 はチームと投資家へ、2/3 はコミュニティへと分配することを示唆している。

出典:dune.xyz

また、Matter Labs は zkSync のエコシステム構築にリソースを重点的に投入している。今年初めには、2 億ドル規模の DAO 組織の結成を発表し、インフラ、セキュリティフレームワーク、研究開発助成金、他のクリプト系組織への投資を通じて、zkSync のエコシステムの拡大を図っている。

2.2.2 Stark Ware

1)概要

Stark Ware は 2018 年に創業した、STARK、ZK ロールアップ技術に基づいた L2 スケーリングソリューションであり、主にブロックチェーンのスケーラビリティとプライバシー問題を解決することを主眼としている。これは、STARK 技術を用い、ZK ロールアップと Validium で構成される Volition モデルによって、計算の完全性の証明を生成・検証するというものである。StarkWare の暗号化証明はゼロ知識、簡潔、透明、ポスト量子暗号を可能にする。

StarkWare の重要な貢献として、STARKs (Scalable Transparent Arguments of Knowledge) を発明したことが挙げられる。これは、完全にトラストレスな有効性の証明であり、すべてのチェーン上の計算をオフチェーンの単独の STARK prover に移動することができる。

StarkWare の開発している製品としては、StarkNet、 StarkEx、Cairo がある。StarkNet は Stark ゼロ知識証明をベースにした非許可制の分散型 ZK ロールアップソリューションであり、StarkEX はアプリケーションの特定のニーズに合わせてオーダーメイドできるスケーリングエンジンである。

また、Cairo はチューリング完全なプログラミング言語で、StarkNet は Cairo に基づいてイーサリアム上の計算をサポートする。

dYdX と Immutable を支える Layer2 ソリューションとして、我々は StarkWare が提供する極めて高いスケーラビリティを体感することができる。つまり、StarkWare の特徴を簡単にまとめると、優れたスケーラビリティとプライバシー性能を持ち、ユーザー体験も良好なソリューションということである。

2)エコシステムの発展

StarkWare は Paradigm、Ethereum Foundation、IOSG、Multichain Capital などの有名機関から投資を受け、ZK ロールアップに可能性を見出したイーサリアム創始者 Vitalik も StarkWare のアーリーステージに投資している。

現在、StarkWare の総 TVL は 12 億ドルであり、dYdX、Sorare、DeversiFi、Immutable X、 Celer Network などの重要なプロトコルが StarkWare にデプロイしている。L2BEAT のデ ータによると、すべての L2 のロックアッププロジェクトの中で、dYdX 単体で総 TVL の 17%を占めており、その額は9億ドルに上る。

このことから、StarkWare は、パフォーマンスと運営の両面で zkSync に先んじていると言える。また、StarkWare は強力な PR チームを抱えており、プロジェクトの戦略も長期的なものである。テクノロジーとビジネスのバランスをうまく取っていると言えるだろう。

3 まとめ

CGV は、2022 年は Layer2 が爆発的に普及する年になり、イーサリアム上で実行する Layer 2の開発が経済的にも技術的にも持続可能な選択肢になると見ている。この中で、ロールアップは間違いなく選ばれるスケーリングソリューションの一つになるだろう。

Layer2 の発展は緒に就いたばかりである。今後、 Layer2 ソリューションの開発が進むにつれて、イーサリアムは徐々にブロックチェーンの基盤インフラへと進化し、従来の L1 サイドチェーンや古いパブリックチェーンの一部はイーサリアムのL2に変化する方向に舵を切り、イーサリアムの地位はさらに強固になるだろう。

チャンスという意味で言えば、今後はロールアップのネイティブトークンだけでなく、これらのロールアップにユーザー基盤を見出す新興プロジェクトにも注目する必要があると CGV は考えている。

※注意:本稿は CGV FOF の研究レポートであり、個人の投資に対して勧誘やアドバイスを行うものではありません。

CGV FOF について:CGV FOF は Crypto Fund と Crypto Studio に特化したマザーファンドです。本部を日本に構え、シンガポール、カナダに支社があります。

CGV FOF は日本、韓国、中国および台湾などにベビーファンドを設立しています。

参考文献

  1. https://arbitrum.io/
  2. https://developer.offchainlabs.com/docs/developer_quickstart
  3. https://developer.offchainlabs.com/docs/rollup_basics#executing-and-securing-the-chain
  4. https://developer.offchainlabs.com/docs/rollup_basics#submitting-transactions
  5. https://www.optimism.io/
  6. https://community.optimism.io/
  7. https://medium.com/ethereum-optimism/introducing-evm-equivalence-5c2021deb306
  8. https://research.paradigm.xyz/optimism#data-availability-batches
  9. https://community.optimism.io/docs/protocol/protocol-2.0/#
  10. https://matter-labs.io/
  11. https://cryptoexplainere60.substack.com/p/zk-world-pt-3-zksync?s=r
  12. https://vitalik.ca/general/2021/01/05/rollup.html
  13. https://starkware.co/
  14. https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-16/sequoia-led-round-values-blockchain firm-starkware-at-2-billion
  15. https://multicoin.capital/2018/10/30/our-investment-in-starkware/