グレースケール投信の「マイナス乖離」が過去最低の-10%台に、ビットコイン市場に及ぼす影響は?
グレースケール投信が現物相場に与える影響
米暗号資産(仮想通貨)投資企業グレースケール社のビットコイン(BTC)投資信託の価格乖離(プレミアム)が今週2日、再びマイナスに転じたことが確認された。現物価格に対するビットコイン投信(GBTC)の価格乖離は、過去最低の-10%台まで到達している。
米グレースケール社は、機関投資家および適格投資家向けの投資信託として最大手。ビットコインの総供給量(2100万BTC)の6%に相当する約65万BTC(約3.5兆円)を保管しており、資産運用の総額は3月5日時点で約4.1兆円にのぼる。
グレースケール社のビットコイン投信がマイナスに転じたのは2月末。その後一時的にプラスに転じたが、3月に入り再びマイナスとなっている。
JPモルガンのアナリストらは2日、「グレースケール社のビットコイン投信の現物価格との価格乖離(プラスの場合はプレミアム、マイナスの場合はディスカウントと呼ぶ)のマイ転は、現物市場への売り圧をかけていた」と分析。価格乖離がマイナスになった要因として、カナダでのビットコインETFの台頭や、機関投資家が高値圏のリスクオフで利益確定売りを出した、などと考察した。
2008年の金融危機を予知したことで定評がある著名投資家のPeter Schiff氏は、20年12月からグレースケール社の現物価格に対するプレミアムがマイナスに転じるとする予想が的中したと発言。グレースケール社の投資信託には年間2%のマネジメント費がかかるため、「現物保有よりリスクが高い」などと批判し、ビットコイン市場の売り圧になると指摘した。
Schiff氏は、ビットコインをはじめとする仮想通貨に懐疑的な姿勢をとることで知られている。
マイナス乖離をプラス要因とみる向きも
対照的に、ブルームバーグのシニアコモディティストラテジストのMike McClone氏はプラスに捉えている。同氏はブルームバーグが毎月発行する「Crypto Outlook」の筆者で、20年12月号ではビットコインの次の価格ターゲットを「4万〜5万ドル」、時価総額1兆ドル(約110兆円)の到達を予想。McClone氏の予想は、テスラ社のビットコイン購入などの影響で市場が高騰したことを受け、2月中旬時点で実現している。
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McGlone氏は、GBTCの価格乖離がマイナスになったことは「パニック売り」を示すと分析したものの、歴史的に見れば底値は堅く、BTC市場の成長の余地を物語ると解説した。
2017年3月にも、GBTCのプレミアムは3%台まで急落したことがある。今回のようにマイナスにこそは転じなかったものの、現物価格も連動する形で、一時+1000ドル台まで下落していた。
しかしその後、ビットコイン価格は再び高騰し、17年12月に過去最高値の約2万ドルに到達した。同氏は、今回のグレースケール・プレミアムがマイナスに転じたことは、底値を示す事例になり得ると考察する。
2017年にはグレースケール社の投資信託は、現物市場の1%しか保有していなかったが、現在同社のビットコイン保有量は飛躍的に上昇しており、影響力は当時とは比較にならないと述べた。
仮想通貨データサイトbybtによれば、グレースケール社のビットコイン保有量は20年7月時点では36万BTCだった。1年足らずで80%以上の驚異的なペースで現物流入数が増えており、機関投資家の注目度を如実に示している。
またBTC価格について、短期的には「グレースケール効果」なども相まり調整局面に入ったものの、限られた供給量(需給面)などを要因に、2021年内にビットコイン価格が10万ドル(約1100万円)に届き得ると予想した。
「逆張り的な視点から買いシグナル」
McClone氏のように、グレースケール・プレミアムのマイナス化を好材料と捉える声は少なくない。
機関投資家向けにマクロ分析を行うBianco Research社のJim Bianco氏は、今回グレースケール社のビットコイン投信(GBTC)が「ディスカウント」になるのは3度目だと説明。過去にもGBTCの価格乖離が大きく下がった後には、相場が急回復したことがあると指摘した。
直近数年間は、GBTCの価格乖離は高いプレミアムで推移していたが、逆張りの観点から「買いシグナル」だとみている。
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