イーサリアム20万円の大台回復、「強気相場」再開に4つの背景
イーサリアムの高騰理由
時価総額2位のイーサリアム(ETH)が大幅上昇。前日比+7.12%となり、20万円台を回復した。
すでに過去最高値近い水準まで大幅反発しているため、「強気トレンド」に復帰したといっても過言ではないが、この背景には4つの理由が考えられる。
理由1. 中国企業の大量保有
香港証券取引所に上場する中国企業「Meitu(美図)」が、財務準備資産を利用してビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を購入したことを発表したことが好感された。
仮想通貨取引禁止政策を押し出すなど強硬姿勢を貫いてきた中国政府の意図について思惑が持ち上がったほか、イーサリアムが上場企業(非仮想通貨関連企業)の財務資産として組み入れられた初事例となったこともあり、高い関心を集めている。
詳細:香港上場の中国企業、ビットコインとイーサリアムを大量購入
米証券取引委員会(SEC)が20年12月にXRPの有価証券問題で米リップルを提訴したことで、他通貨への波及も警戒されるなか、イーサリアムについては2018年、「分散化したネットワークを持つ暗号資産は有価証券に該当しない」との判断を下している。また、19年に開催された国際カンファレンスで米商品先物取引委員会(CFTC)は、「イーサリアムはコモディティにが該当する」との見解を示した。これらの既成事実は、上場企業によるETH保有の後押しになったものと思われる。
米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)にて、米国の規制に準拠したイーサリアム先物取引が2月から始まったことも、潤沢な資金力を有する機関投資家のゲートウェイとしての機能を果たしており、流動性向上にひと役買っていると言えそうだ。
理由2. 大口の買い集め
仮想通貨インテリジェンスプラットフォームSantimentの分析によると、10,000ETH(約20億円)以上保有するクジラの割合が2017年の強気相場以来、最大に達した。総供給量の内、68.6%を保有しているという。
3月1日には、103万ETHが新たに加わった。
中国の上場企業がビットコインだけでなくイーサリアムを保有資産に組み込んだと報じられており、米ドルなど法定通貨のインフレヘッジ先として、新たな選択肢が示された可能性がある。
一方、上記データによると小口投資家の割合は過去3ヶ月間で急落している。ETH2.0のステーキングやDeFi(分散型金融)市場への現物イーサリアムの預け入れ(デポジット)額も強く影響しているものとみられ、「富の集中」を示唆するものだ。
デポジットコントラクトとは、イーサリアムの次世代チェーン「ETH2.0」の最初期フェーズで稼働したビーコンチェーン上でステーキングを行うための契約機能であり、市場に出回るイーサリアムの供給量(浮動数)が絞られやすい市場構造も、需給面を良化させている。
理由3. テクニカルの優位性
16万フォロワーを擁する海外の著名アナリストLark Davis(@TheCryptoLark)氏は8日、ETHチャートについて、日足の逆三尊ネックライン上抜けを指摘した。
また、Glassnodeのビットコインマイナー(採掘業者)ネットポジションを参照し、1月下旬のBTC暴落時に高まっていた売り圧力が劇的に低下していることも指摘。これを根拠に地合い好転をみている。
3日のCoinPostマーケットレポートでも掲載した、海外のアナリストLivercoin(@livercoin)氏の見解によれば、ビットコイン建ての「ETH/BTC」ペアにおけるアダム&イブのチャートパターンとトレンドラインの抵抗線上抜けを指摘。
金融市場全体の調整局面で、1ETH=16万円台を推移するなか、「注目に値する」との見立てを示していた。
理由4. 大型アップデートの好材料
イーサリアムは、メインネットで公開予定の大型アップグレード「ベルリン」を4月14日頃(ブロック高:12,244,000)に控え、テストネット第一弾のRopstenを3月10日から開始され、その後Goerli→Rinkebyと1週間毎のマイルストーンを敷いている
Redditでは、「イーサリアム1.0と2.0の互換性を高めるための統合を優先すべき」との提案がなされ、コア開発者のDannyRyan氏とVitalikButerin氏がこれに同意した。
元来、イーサリアムのガス代高騰で取り沙汰されるスケーラビリティ(拡張性)問題や、トランザクション性能向上を目的とする「シャーディング」対応方針が優先されていたが、ロールアップなどの有力な代替手段でもパフォーマンス向上策が盛んに検討され始めた。
関連:イーサリアム2.0、スケーラビリティ問題を改善するロールアップを識者が図解
現在ボトルネックとなっている「EIP1559」のガス代改善提案は、ロンドンのアップグレードで実装予定となっており、バーン(焼却)思惑もあることから、材料視されている。
関連:イーサリアムの手数料改善案EIP1559、7月頃の「ロンドン」アップグレードで実装へイーサリアムのロードマップには、現在トランザクションに使用されるイーサリアム1.0メインネットと、ステーキングに使用される次世代イーサリアム2.0のビーコンチェーンの統合が含まれる。
統合はすなわち、合意形成アルゴリズムの「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」への完全移行を示す。
ビーコンチェーンのステーキングでロックアップされたイーサリアムの引き出しも可能となるため、エコシステム全体の流動性向上に大きく寄与することになる。次世代イーサリアムにあたるETH2.0は、4大フェーズに基づき開発が進んでおり、市場参加者の思惑につながっている。
フェーズ0:2020年(バリデータを管理する「ビーコンチェーン/Beacon Chain」実装)
フェーズ1:2021年(ユーザーが利用する「シャードチェーン」実装)
フェーズ1.5:2021年(シャードチェーン・メインネット稼働、PoS移行)
フェーズ2:2021年〜(シャードチェーンの全稼働)
詳細は、以下の特集で詳しく解説している。
ビットコイン相場
9日のビットコイン(BTC)価格は、前日比+5.16%の580万円(53,300ドル)に。
先週は、株式市場のリスクオフで冷や水を浴びせられる場面もみられたが、堅調なイーサリアムにけん引されるような形で、再び強気トレンド回帰を窺っている。
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