米国の仮想通貨取り締まり、罰金総額は8年間で2,700億円以上=Elliptic社
米国の仮想通貨規制
英暗号資産(仮想通貨)分析企業Elliptic社は21日、米国の仮想通貨取り締まりに関するレポートを公開。ビットコインの誕生した2009年から現在に至るまで、仮想通貨関連の摘発で総額25億ドル(2,750億円)以上の罰金が支払われたとするデータを発表した。
Elliptic社はSBIも出資した仮想通貨データ分析企業。最近でも、5月に発生したコロニアル・パイプライン事件に際して、身代金受け取りに使用された仮想通貨ウォレットの特定に成功するなど、ブロックチェーンを利用した犯罪分析も手がける。
同社の調査によれば、ビットコイン誕生以降、米国の政府機関が摘発してきた件数の内訳は以下の通り。関係省庁を見ると、16.9億ドル(1,860億円)がSEC(証券取引委員会)による点だ。
また、総額25億ドルの罰金の内、13.8億ドル(1,500億円)は未登録証券の提供(≠証券法違反)によるもので、詐欺が9.23億ドル(1,000億円)、資金洗浄対策(AML)違反が1.83億ドル(200億円)と続いた。
仮想通貨取り締まりの歴史
仮想通貨関連の大型犯罪が米当局に初めて摘発されたのは2014年。ポンジー・スキームを図り、投資家から累計70万BTCを騙し取った容疑でTrendon Shavers氏とBitcoin Savings and Trust社に対して4,000万ドル(44億円)相当の罰金支払いを命じた。
また、2013年には米財務省のFinCen(金融犯罪捜査網)が仮想通貨取引所にも銀行秘密法が適用されると説明。一般的なMSB(マネーサービス事業)同様に、KYC(本人確認業務)などを通して資金洗浄やテロ資金供与などの対策を義務付けられるようになったとした。
その後、2017年には、ICOによる仮想通貨企業やプロジェクトの資金調達が主流化に。ビットコインやイーサリアム(ETH)などのクラウドファンディングを通じて多額の資金を募る企業が増加したが、投資の見返りとしてトークンなどを提供した場合や、詐欺プロジェクトも多発した。
以降、ICO提供による米証券法違反を摘発する事例が相次いだ。2019年10月にはSECがICOを実行したテレグラム社に訴訟を起こし、20年6月には同社がSECに1850万ドル(約20億円)の罰金を支払い、投資家に総額11.9億ドル(約1,275億円)の資金を返却している。
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さらに近年ではCFTC(商品先物取引委員会)やOFAC(外国資産管理局)も仮想通貨関連の摘発を強化している。CFTCは主に詐欺やウォッシュトレードなどの取り締まりを担当しており、財務省傘下のOFACは米国の安全保障に関わる組織や人物に対して経済制裁を管理する機関で、これに違反する形で仮想通貨を利用する団体を摘発している。
4月には、OFACがロシア政府の指示で2020年の大統領選挙に不正関与しようと試みた16の団体などに対する制裁措置を発表。関連組織が身分証明書の偽造などの違法サービスを購入した際に仮想通貨を利用したと述べ、取引に利用した仮想通貨アドレスがブラックリスト入りした。
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仮想通貨関連の最も大きい罰金が下された事例は以下の通り。(判決日時:企業名:罰金総額)
- 20年6月:テレグラム社:12億ドル(1,370億円)
- 21年3月:Control Finance社:5.7億ドル(630億円)
- 17年3月:Steve Chen:2.1億ドル(240億円)
- 17年7月:BTC-e社:1.2億ドル(134億円)
- 20年10月:Larry Dean Harmon:6,000万ドル(66億円)
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規制は必要
仮想通貨を利用した犯罪の摘発がある中、Elliptic社はこのような大規模な取り締まりがある事は仮想通貨が金融業界における「無法地帯」ではない点を示すと考察。規制機関による違法行為の摘発は悪質業者が繁栄できない状況につながり、既存の法律が最先端技術にどのように適用するのかを明確化すると指摘した。
そのため、仮想通貨業界に一般的なイメージとは違い、米国の規制当局は違法行為に対する取り締まりを適切に行っており、長期的には仮想通貨の正当化と、より多くの人々に受け入れられる土壌作りに貢献しているとした。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します