DeFiで急増する詐欺やハッキング
ブロックチェーン分析企業CipherTraceが暗号資産(仮想通貨)に関する犯罪について最新レポートを発表した。2020年に仮想通貨関連の犯罪は全体的に減少したものの、DeFi(分散型金融)分野での詐欺やハッキングが増加しているという。
上図のように、仮想通貨関連のハッキング・窃盗(濃い青)、詐欺など(薄い青)は、いずれも減少傾向だ。2019年には合計45億ドル(約4,930億円)であったが、2020年には19億ドル(約2,080億円)まで大幅低下。なお、今年の1月から4月では4.3億ドル(約470億円)の被害が発生している。
一方でDeFi関連のハッキング・窃盗数が2020年第4四半期より急増、2021年の1月から5月までにはDeFiハッキングで1億5,600万ドル(約170億円)の被害が報告された。この数字は2020年全体のDeFiハッキング被害額1億2,900万ドルをすでに上回っている。
またこの他に出口詐欺などDeFi関連の不正行為は、今年すでに8,340万ドル(約91億円)に達した。CipherTraceのアナリストによると、プロジェクトの主催者がユーザー資産を持ち逃げする出口詐欺は、今年の主な仮想通貨詐欺の約47%を占めているという。
資金流入により犯罪者も増加
DeFi Pulseによると、様々なDeFiプラットフォームに預けられた資産は現在800億ドル(約9兆円)を超えており、2020年12月末の約160億ドルから5倍ほど増加している。
CipherTraceのCEO、Dave Jevans氏はロイター通信に次のように語った。
個人・機関投資家から、DeFiに流れる資金が多くなるにつれ、誇大広告を利用して人々を詐欺に引き込もうとする犯罪者や、セキュリティ監査の甘いプロジェクトを探してコードの隙を突くハッカーが増える。
多くの資金が流入しつつ、まだセキュリティや規制が整っていないDeFiは犯罪者に狙われやすい現状があるようだ。
ハイリスクなビットコイン取引は、全体の1%
CipherTraceは、犯罪被害額以外に全般的なビットコイン(BTC)トランザクションの分析も発表。マネロンなどについて「ハイリスク」と判断された取引の件数は全体の1%だったと報告している。
アナリストは、ギャンブルサイト、仮想通貨ミキサー、ダークマーケット、マルウェア、規制対応の整っていない取引所などをリスクの高い相手先と設定。取引所など暗号資産サービスプロバイダー(VASP)におけるトランザクション全体の1.2%のみが、こうしたハイリスクな相手との間で行われていた。
さらに、2020年に取引されたビットコインの額面をみると、「ハイリスク」と見なされた資金の額は、0.11%まで低下。「ハイリスク」取引で送信されるビットコインの額は一般に比較的低いことを示唆するという。
CypherTraceは比較対象の数字として、国連麻薬犯罪局の見積もりを引用。それによると1年間に世界でマネーロンダリングされている法定通貨の金額は世界のGDPの2〜5%であり、合計で8,000億ドルから2兆ドルになるとされる。