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イーサリアム共同創設者ジョセフ・ルービンが語る|金融インフラとしてのイーサリアムとWeb3の未来

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

イーサリアムの共同創設者であり、ブロックチェーン技術企業ConsenSysの創設者でもあるジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)氏に、CoinPostがインタビューを実施。

米国ではトランプ政権の発足以降、SECが暗号資産に対する姿勢を大きく転換。SwiftやNASDAQといった主要金融インフラがイーサリアム基盤の技術を採用し始めるなど、機関投資家の本格参入が加速している。こうした転換期において、イーサリアムエコシステムの中核を担うルービン氏は、業界の現在地と今後の方向性をどう見ているのか。

DeFiと伝統的金融の融合をはじめ、デジタルアセット・トレジャリー(DAT)の可能性、そして日本市場への展望について話を聞いた。

ジョセフ・ルービン (Joseph Lubin)
イーサリアム共同創設者 / ConsenSys創設者 CEO
プリンストン大学で電気工学とコンピュータサイエンスの学位を優等で取得。ゴールドマン・サックスではソフトウェア工学・金融・暗号関係の業務を担当。2014年にイーサリアムプロジェクトを共同創設し、同年10月にConsenSysを設立。MetaMask、Infura、Lineaなどのイーサリアムエコシステムにおけるコアインフラの開発を主導している。ConsenSys Meshの会長、SharpLink Gaming($SBET)の会長も務める。
ジョセフ・ルービン氏

イーサリアムが金融インフラへと進化する理由

イーサリアムが暗号資産のエコシステムから、中核的な金融インフラへと進化しつつあるとのことですが、その背景について教えてください。

イーサリアムは、自分たちのエコシステムを構築することに注力してきたフェーズから、いよいよ「本番」を迎える段階へと移行しています。伝統的な金融企業やグローバルな大企業が利用できる段階に入りつつあります。

その背景には複数の要因があります。大きな構図として、世界はここ数十年にわたり、ますます複雑化してきました。人々や小規模な組織は、政府システム、大手銀行、宗教的な制度など、中央集権的なシステムへの信頼を失ってきています。

今、世界は大きな転換点にあります。まだ行き先は完全には見えていませんが、グローバルなマクロ経済や地政学の面では、確実に大きな変動が起きています。貿易関係の再編が進み、市場には大きなボラティリティがある。金や銀が急騰しているのは、既存のシステム、特に通貨制度への信頼が低下し、人々が米ドルから離れようとしているからです。

中央集権への信頼低下は、サトシ・ナカモト以前から指摘されてきたことです。サトシはその課題に対し、「誰もが信頼できる仕組みがあればよいのではないか」と考えました。そして生み出したのが「分散型の信頼」中央の管理者に頼らずとも成り立つ、極めて堅牢な信頼の仕組みです。サトシはそれをビットコインという形で実用化してみせました。

数年後、多くのプロジェクトが「この仕組みは素晴らしい。狭義の貨幣だけでなく、より広い用途に応用すべきだ」と考えるようになりました。そしてヴィタリック・ブテリンが2013年11月にホワイトペーパーを発表し、あらゆるプログラマブルな用途に対応できるプラットフォームの構想を描きました。

私自身は2011年にビットコインに参入し、ヴィタリックがホワイトペーパーを書いた1か月後にはイーサリアムプロジェクトに合流しました。約1年半の開発を経て2015年半ばにイーサリアムをローンチし、それ以来、約20回の大規模アップグレードを行いながら、ダウンタイムゼロで稼働し続けています。これまでに極めて高い信頼性を実証してきました。

スケーラビリティも向上しており、世界中の取引を処理できる水準に近づいています。レイヤー1では数セント、レイヤー2ネットワークでは1セント未満、レイヤー3では実質ゼロに近いコストでトランザクションが可能です。AIをインターフェースに組み込むことで、ユーザビリティもますます向上しています。

米国では前政権の下、SECやバイデン政権がこの技術を抑制しようとし、企業や金融機関はトークンの利用に消極的でした。しかし今や、主要な金融機関がSECから株式のトークン化を奨励されています。Swiftは私たちのLinea(レイヤー2ネットワーク)上で「Swift Ledger」を構築しています。NASDAQをはじめとする主要取引所もトークンを私たちの技術基盤に移行させています。

Swift Ledgerとは

ConsenSysのレイヤー2ネットワーク「Linea」上に構築される、Swiftのブロックチェーン基盤の金融メッセージングシステム。既存のSwiftネットワークをブロックチェーンに拡張し、参加銀行がトークン化資産やDeFiプロトコルにアクセスする基盤となることを目指している。

大手銀行はMetaMaskのようなウォレットの利用やLineaの決済レイヤーとしての活用に関心を示しています。こうした金融機関の多くは、以前から私たちのイーサリアムクライアント「Besu」を使ってプライベート版のイーサリアムを構築していたため、技術には精通しています。今やパブリックなネットワークに接続し、ステーブルコインやRWA(実世界資産)の発行、DeFiへの参加が可能になりました。金融機関は、このエコシステムにできる限り早く参入しようとしています。

Besu(ベス)とは

ConsenSysが開発するオープンソースのイーサリアム実行クライアント。企業がプライベート・パーミッション型のブロックチェーンネットワークを構築する際に広く採用されており、パブリックチェーンとプライベートチェーンの両方に対応する。

ブロックチェーンとAIの交差点

ブロックチェーンとAIの融合について伺います。両者の相乗効果は具体的にどのような形で実現するのでしょうか。

ブロックチェーンは複雑な技術です。そもそも現代社会はすでに複雑で、ソフトウェアの利用規約を読まずに同意する人がほとんどです。そこにさらにDeFiプロトコルやウォレットといった新しい仕組みが加わります。

ここでAIが重要な役割を果たします。AIは、DAOの提案内容を説明したり、DeFiプロトコルの仕組みを解説したり、ボールト(金庫)がどのようにトークンを運用してリバランスするかを教えてくれたりします。つまりAIは、ブロックチェーン技術を理解し活用するための「案内役」となります。

車を運転するのにエンジンの仕組みを完全に理解する必要がないのと同じで、ユーザーはただ「やりたいこと」を伝えるだけでよくなります。「トークンを送りたい」「このゲームをプレイするためにトークンを準備したい」こうした意図をエージェントに話しかけるだけで、実行してもらえるようになります。

これはユーザー側の話ですが、もう一つの側面があります。現在、多くのAIエージェントがMetaMaskを利用しています。一部はビジュアルなUIを操作していますが、UIベースでは煩雑になることもあります。私たちは人間が操作する多くの機能をAPI化しており、エージェントはそのAPIを通じてMetaMaskと直接やり取りできます。人間がUIを操作するよりもはるかに高速かつ効率的に、すべての機能にアクセスできるようになっています。

さらに「デリゲーションフレームワーク」というものがあります。これにより、ユーザーは自分の権限の一部を別の人やエージェント、あるいはエージェントの群れに委任できます。異なるペルソナやスキルを持つエージェントでチームを構成し、マーケティングチームやデューデリジェンスチームとして機能させることができるのです。

各エージェントには、一定の予算と行動ルールを設定できます。AIエージェントの行動を完全に制御するのは難しいですが、このデリゲーションフレームワークを使えば、多くの独立したアクターが相互に連携しながら、権限を持ちつつも安全に行動できる仕組みが実現します。

DeFiによるレガシー金融の変革

DeFiがプログラマブルで透明性の高いシステムとして、従来のレガシー金融に代わりつつあるとされていますが、具体的にどのように進展しているのでしょうか。

まず、銀行はステーブルコインの台頭を見て、トークン化された預金で対抗しました。今後はこの2つが併存する形になるでしょう。トークン化預金は流動性が低く規制も厳しいですが、銀行のエコシステム内に留まります。一方でステーブルコインは、はるかに流動的で実験的なものになります。

例えば、小さな企業がホワイトラベルのステーブルコインを発行すれば、独自の特典を付けたり、条件に応じた自動処理を組み込んだりできます。ステーブルコイン分野では膨大なイノベーションが生まれるでしょう。

ETFは世界中で承認されており、これは伝統的金融とDeFiが融合し始めていることを意味します。デジタルアセット・トレジャリー企業が登場し、特定のトークンを中心に投資ポートフォリオを構築しています。

Swiftも当社のLinea技術を活用しており、Swift Ledgerの実装が進んでいます。これは金融メッセージングネットワークですが、Swiftの参加銀行がブロックチェーン上に移行することで、DeFiプロトコルの利用にも道が開かれます。

現在、法的な安心感が十分でないため、金融機関がDeFiに全面的に参入するのはまだ先かもしれません。しかし、米国の市場構造規制が明確化しつつあり、規制の整備が進めば急速に動き出すでしょう。企業であれ金融機関であれ、DeFiへの参入は時間の問題です。

今、私たちはスーパーサイクルの終盤にいます。各国の法定通貨は購買力を失いつつあります。システムに膨大な負債があり、価値の下がった通貨で債務を返済するために大量の通貨が増発されている。銀行に預けてもごくわずかな利息しか得られない。そうした状況の中で、ビットコインやイーサリアムの誕生以来、暗号資産のエコシステムは指数関数的に成長してきました。ボラティリティはあるものの、長期的には力強い成長を遂げています。

トークンをボールトに入れたりイーサリアムでステーキングしたりすれば、ほぼリスクなしで3%の利回りが得られ、さらにリスクを取ればより高い利回りも可能です。規制面での安心感が得られれば、機関投資家も参入してくるでしょう。ユーザーインターフェースが簡単になれば、一般の人々も資産の一部を法定通貨から暗号資産エコシステムへ移し始めると考えています。

もちろん、国家はそうした資金流出が急速に進むことを望んでいません。米国が米ドル建てステーブルコインを支持している理由の一つは、それが依然としてドルだからです。世界中の多くの国も、自国通貨建てのステーブルコインに関心を示しています。

投機を超えた機関投資家の本格参入

トランプ政権発足後、暗号資産業界は大きく変化しました。今回のサイクルで機関投資家の本格参入を促している要因は何でしょうか。

まず、投機自体は必ずしも悪いことではありません。金融の世界では、より大きなリスクを取れる人がそのリスクに見合った報酬を得る仕組みが必要です。スタートアップへの投資も投機の一種です。ただし、ミームコインは投機とは異なり、本質的にはギャンブルに近いものです。

私たちのエコシステムでは多くの投機が行われてきました。それはスタートアップのエコシステムだからです。人々がビットコインやイーサリアムという新しい技術を見て、「この分散型の信頼、この新しいプラットフォームはすべてを変える」と考えました。キャリアや情熱を注ぎ込み、資本を投入した。それは「1990年のインターネットに投資できるとしたら」という発想と同じです。HTTP、HTML、TCP/IPがトークンだったら、今頃信じられないほど裕福になっていたでしょう。

レイヤー1、レイヤー2のトークン、DeFiプロトコルのトークン、優れたアート作品のトークンなどそうした投機的なフェーズは今も続いていますし、今後も続くでしょう。しかし、おっしゃる通り、基礎的で有用な経済活動が成長してきています。

低リスクのDeFiプロトコルで安全に利回りを得られるという実感が広がっていること、金融機関がRWA(実世界資産)をトークン化してマネーマーケットファンドなどの投資ビークルにパッケージ化していること、これらは実質的な経済活動です。投機のフェーズを経て、イーサリアムはスケーラブルで使いやすく、手頃な価格のエコシステムへと成長しました。これからはますます価値が高まり、指数関数的に成長していくと考えています。

デジタルアセット・トレジャリー(DAT)の可能性

日本ではDAT(デジタルアセット・トレジャリー)が注目を集めており、BTCやETHを保有する企業も増えています。DATの可能性について、どのようにお考えですか。

DATは非常に大きな可能性を秘めた仕組みだと考えています。ただし、DATを構築する際には、どのアセットを中心に据えるかを慎重に選ぶ必要があります。

ビットコインは良い選択肢であり、特にマイケル・セイラー氏のようなプロモーション力があれば効果的です。しかし、その影響力がなければ少し難しいかもしれません。一方、イーサ(ETH)は優れたアセットです。イールドを生む資産であるという点が非常に重要で、ステーキングやリキッドステーキング、リキッドリステーキングに回せば、リスクフリーで3%の利回りが得られます。

SharpLinkでは、さまざまなDeFiプロトコルとの取り決めにより、資産を認定カストディアンに保管したまま、ほとんど追加リスクなしに3%を大幅に上回る利回りを得ています。市場が活況を迎えETHが上昇している局面で資金調達を行い、ほぼ100%をステーキングに回す方針です。

SharpLink Gaming(シャープリンクゲーミング)とは

ルービン氏が会長を務めるイーサリアム特化型のDAT企業(ティッカー:$SBET)。保有するETHのほぼ全量をステーキングやDeFiプロトコルで運用し、株主にイールドを還元する戦略を取っている。

さらに、その資金の一部を使って、イーサリアムエコシステムに価値を加える最良のプロトコルに投資し、強化することもできます。私たちは100%イーサリアムに特化しており、株主に対してさまざまな形のイールドを継続的に提供していきます。

歴史的な類似例があります。1990年代後半、企業がウェブに参入し始めた頃は、ペットフード会社でも何でも「インターネット企業」と呼ばれていました。RazorfishやInteractive Agenciesのようなウェブスタジオが伝統企業のウェブサイトを構築し、eコマースを導入していった。現在のDATも同様で、私たちは比較的純粋なDAT企業ですが、最終的にはすべての企業がデジタルアセットをトレジャリーに組み込むことになるでしょう。

そのためには、トレジャリー管理ツール、流動性管理ツール、トランザクションオーケストレーションツールが必要です。ConsenSysのソフトウェアやMetaMaskの法人版の中に、こうしたツールを構築しています。SharpLinkもこれらのツールが完成次第、活用していきます。私たちはまさに、企業を次世代のウェブ、Web3に移行させる先駆者なのです。

Web3の主流化に向けて

Web3の観点で、今後の主流採用(マスアダプション)はどのように実現していくとお考えですか。

先ほども申し上げましたが、DeFiが理解しやすくなり、法定通貨の購買力が下がり続ける世界において、資産の価値を保全し成長させるための強力な手段となっていくでしょう。率直に申し上げると、日本国債と円はともに厳しい状況に向かう可能性があります。しかし、これは日本に限った話ではなく、世界中で起きていることです。日本は世界最大の債務を抱えており、その多くが国内保有とはいえ、債務であることに変わりはありません。

DeFi以外にも、分散型のアイデンティティとレピュテーションシステム、分散型ソーシャルグラフが登場するでしょう。自分のアイデンティティを核とした分散型のソーシャルグラフを持ち、友人をそこに加え、コンテンツを発信し、機能を追加していく。目的に応じて複数のソーシャルグラフを使い分けることもできるでしょう。

そしてそれをトークン化し、素晴らしい記事を書いてくれた方や、ソーシャルグラフに価値を追加してくれた方に報酬を与えることもできます。こうした分散型ソーシャルグラフのプラットフォームが整備されることで、ユーザーが主導権を握り、ユーザー自身が恩恵を受けるようになります。

Web2では、ユーザーのデータを収益源として利用しながら、同時に広告や製品の販売対象としても扱ってきました。Web3は、この構図を根本から転換し、ユーザーを中心に据えます。プラットフォームがユーザーを利用するWeb2から、ユーザー自身が主導権を持つウェブへ。それがWeb3の本質です。

日本市場への展望

最後に、日本市場についてお聞きします。日本の暗号資産市場やWeb3市場について、どのようにご覧になっていますか。

日本のWeb3市場と暗号資産市場は、規模・重要性ともに非常に大きいです。MetaMaskのユーザー数も多く、私たちはすでに注力しています。今後はできる限り早く、さらに関与を深めていきたいと考えています。

日本は暗号資産関連の活動において、世界でもトップクラスの国の一つです。この市場をしっかりとサポートしていきたいと考えています。

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