仮想通貨市場は「ビットコインETF」の思惑先行、相場に影響与えるポイントは
金融市場とマクロ経済
米ニューヨーク原油市場では、一時1バレル=82ドル超となり、2014年10月以来、およそ7年ぶりの高値まで値上がりした。
コロナ禍における経済活動の再開で需要が跳ね上がったこと、石油輸出国機構とロシアなどの非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が原油の追加増産を見送ったことなどが背景にあると指摘される。
原油高騰によるコスト増加の影響は多岐に及び、企業業績が悪化するとの懸念も広がったほか、ガソリン価格の上昇や世界各国で石油を生産過程で使った工業製品や食料品などの物価上昇が顕在化しつつある。
経済下支えのために長引く量的緩和政策や原油高などの影響を踏まえ、世界的に中・長期的なインフレーション懸念が高まっている現状も否めない。IMF(国際通貨基金)は6日、景気減速と物価上昇が並行して進む「スタグフレーション」のリスクについて警鐘を鳴らした。
一方、大規模金融緩和における米ドルなど法定通貨の希釈化、及び物価上昇など世界経済のインフレ局面が長期化した場合、ビットコインなど仮想通貨市場には追い風と言える。”オルタナティブ資産”としてのインフレヘッジ需要が相対的に強まるためだ。
20年3月のコロナ・ショック以降、上昇トレンドの続いていた株式市場では、中国の不動産開発大手「恒大グループ」のデフォルト(債務不履行)危機やテーパリング(量的緩和縮小)に伴う緩和マネーの巻き戻し懸念など複数要因が重石となっており、ポートフォリオのリバランス(資産の再配分)が求められている節もある。
SBI傘下の英大手マーケットメイカー「B2C2」は、顧客のカテゴリーで分類したデータを基に、インフレヘッジ手段やリスク分散対象としてビットコインの需要が高まってきていることを示唆している可能性があるなどと指摘した。
関連:直近の仮想通貨市場の価格上昇は機関投資家が主導か=B2C2レポート
仮想通貨市場の値動き
13日の暗号資産(仮想通貨)市場。 ビットコイン(BTC)価格は、前日比0.35%安の639万円(56,400ドル)で推移した。
前日比ほぼ横ばいであるが、6万ドルの節目や意識される過去最高値を前にして本日5時頃までに一時急落、結果的に4,000ドル幅ほど上下するなど、投資家の思惑が交錯している様子も窺える。
ビットコインETFの思惑
ここ数週間の仮想通貨市場で、投資家から最も関心を集めるホットトピックは、上場投信託「ビットコインETF(Exchange Traded Fund)」の動向だろう。
早ければ、米国の歴史上初となるビットコインETF承認が第4四半期(米)中に行われる見込みで、ビットコインの先物ETFでは、ProShares社の申請判断が10月18日頃に迫っている。有力視されるVanEck版ETFの最終可否判断日は、21年11月14日頃とされる。
「ビットコインETF」はこれまで幾度となく否決され続けてきたが、審査機関である米SEC(証券取引委員会)側の姿勢が、以前と比較して軟化しつつあるのもポイントだ。
SECのGensler委員長が先日、ビットコイン先物ETFの審査について前向きに言及したことが注目を集めたほか、直近では「ビットコインETF」と類似した性質の「仮想通貨・ブロックチェーン関連ETF」が相次いで承認された。
関連:米SEC、3つの仮想通貨・ブロックチェーン関連ETFを承認
また、隣国カナダでは今年2月、米国に先んじてビットコインETFが金融当局の認可を受け、トロント証券取引所(TSX)へと上場した。ビットコインを直接保有することなく投資信託として運用できるメリットがあることから資産管理会社の目に留まり、潤沢な資金力を有する機関投資家の呼び水となっている。
関連:カナダ初のビットコインとイーサリアムのETF、運用資産規模は
慎重な見立ても
一方、CNBCに出演した大手投資リサーチ企業CFRA Researchのアナリストは、ビットコインETFの可否判断について、「2022年にズレ込む可能性がある」との見方を示した。
関連:「ビットコイン先物ETF」判断、2022年まで先送りの可能性も 専門家が分析=米CNBC
また、米大手暗号資産(仮想通貨)投資企業パンテラのDan Morehead CEOは、相場が過熱し過ぎた場合、「噂で買って事実で売る(セル・ザ・ファクト)」が起こり得るとして、過度な期待に警鐘を鳴らした。
承認された場合、機関投資家のエクスポージャーが開けるため、中・長期的な流入が見込める反面、承認や否決直後は相場の乱高下を招き、ボラティリティ上昇に繋がるリスクもある。
Arcane Research分析
Arcane Researchが掲載した新たなレポートによると、機関投資家が世界最大のデジタル資産を中心に投資し始めており、2021年の第4四半期(米国)は「ビットコインシーズン」が訪れつつある、と結論付けた。
ビットコインの市場占有率、すなわち優位性を示すドミナンスは、ここへきて急反発しており、その分アルト市場から資金移動も確認される。
10月以降は、2021年以降のアルトバブルの過程で大きく伸長した、Coinmarketcap(CMC)時価総額上位のエイダコイン(ADA)やバイナンスコイン(BNB)、ソラナ(SOL)などのアルト銘柄がやや停滞、価格調整する中、再びビットコイン(BTC)に資金が集まった。
Arcane Researchは、「CME(米シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物に対する機関投資家の需要が急拡大していることから、ビットコインETF承認への思惑を反映している」とした上、「リテール(小口投資家)主体のデリバティブ市場のOI(未決済建玉)は限定的であり、先物市場は以前よりも”健全なシグナル”が認められる」と分析している。
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