米政府、ロシアの石油輸入を全面禁止|金準備を制裁対象に追加の動きも
露石油輸入の全面禁止
米バイデン大統領は8日、ロシアから石油・ガスおよびエネルギーの輸入を全面的に禁止する大統領令を発表した。「ロシア経済の主脈」である石油の取引を停止することで、さらなる経済的な打撃を与えることを目指す。
バイデン大統領は声明で、米国内の石油生産量は欧州地域の総生産量を上回ると説明。他国にはまだ取れない措置を行うことで、ロシア政府への経済制裁を強めていくと語った。
また、欧州各国などと連携して、今後ロシア産の石油への依存を減らしていく長期的な戦略を進めていると発言。既に、ロシアの法定通貨であるルーブル(RUB)価格は50%下落するなど、歴史的な経済制裁を科した結果として「ロシア経済は崩壊している」とした。
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一方、ウクライナ情勢は米国国内でも影響を見せており、プーチン大統領がロシア侵攻を表明してから、米国のガソリン代は1ガロン当たり75セント(約86円)増加したと指摘。ガス代は歴代最高価格を更新しており、「自由を守るには代償がかかる」と言及した。
また、石油会社などにはウクライナ情勢に乗じた過度な価格吊り上げ行為は避けるよう呼びかけた。
ロシアの金準備も制裁対象か
米議会では超党派の議員らが8日、ロシアの金(ゴールド)準備を制裁対象に追加することを求める法案を提出することがわかった。米メディアAxiosが報じた。
King議員はロシア経済に対して攻め続ける必要があると説明。SWIFTからの排除や、経済制裁に加え、ロシア政府がまだ利用できる数少ない資産を制限していくと述べた。
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金準備(Gold Reserve)は政府と中央銀行が有事の際に保有している金を指す。IMF(国際通貨基金)の統計では、ロシア政府とロシア銀行は15兆円(1,323億ドル)に相当する2,298トンの金を保有する。(22年1月時点)
21年7月時点では、ロシアの外貨準備金の20%以上がゴールド。これはユーロに次ぐ比率で、米ドルより多い。なお、ロシアの金保有量は世界5位の規模で、産出量も中国、オーストラリアに次ぐ世界3位を誇る。
可決すれば、米国市民および企業によるロシアの中央銀行から金の購入を禁止。早ければ今週金曜日(11日)にも実現する見込みだという。
法案は無所属のAngus King議員や共和党、民主党の議員ら4名が署名。共和党派のJohn Cornyn議員はロシアが「ベネズエラの例にならい、金の販売による資金洗浄で制裁回避を試みている」とコメント。
民主党派のMaggie Hassan議員は「米国と同盟国はロシアの侵略に断固として立ち向かい、プーチンの制裁回避を確実に塞がなければならない」と述べた。
米政府はこれまで、ロシアに対して経済制裁を発令しており、暗号資産(仮想通貨)も対象に追加。今週7日には、財務省傘下の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が仮想通貨を利用した制裁回避に対して注意喚起を促した。
なお、現地メディアの報道によれば、ロシアのMikhail Mishustin首相は金(ゴールド)の付加価値税(20%)を廃止する法案への支持を表明。「金への投資は、ドルやユーロに代わる良い手段」と言及。既存の決済システムからゴールドや中国のユニオンペイ(銀聯)が代替手段として検討されている状況だ。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します