仮想通貨利用の制裁回避を警戒
欧州連合(EU)の財務大臣会合は2日、経済制裁を逃れようとするロシアの動きを警戒して、暗号資産(仮想通貨)を利用する動きに対策を講じる計画を明らかにした。
欧州連合各国の財務大臣らは、ロシアによる仮想通貨を利用した制裁回避リスクについて意見を交わした。特に、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、さらなる対策が必要であると懸念を示したという。
関係者によれば、ラガルド氏は仮想通貨企業がロシアの顧客へのサービス提供を禁止する政策を推進する。SWIFT排除を発令した先週末の経済制裁に続き、ロシア経済の遮断を維持する狙いがある。
フランスのブリュノ・ル・メール財務大臣も経済制裁の効果をさらに強化するため、仮想通貨などの利用について検討が進んでいると述べた。近日中にさらなる提案を行う予定だという。
欧州連合の閣僚に相当するパオロ・ジェンティローニ経済政策担当委員は、直近数日間で仮想通貨の取引量が増加していた傾向を指摘し、「ロシアの資産凍結を回避する手段として利用されているかもしれない」と分析していた。
暗号資産(仮想通貨)による制裁回避を懸念する声は米国でも高まりつつある。米財務省は1日時点で、仮想通貨を制裁対象に加えることを追加。FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長も2日の米議会での証言で、ウクライナ情勢の動向を受け、仮想通貨規制の必要性が高まっていると発言した。
また、米民主党議員らはイエレン長官に対して、OFAC(外国資産管理局)の監視能力を図るために、ロシア政府やSDN(経済制裁措置対象者)による仮想通貨利用をどのように監視しているか求める書簡を提出。警戒が強まっている。
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英国も仮想通貨利用を懸念
また、英政府でもロシアの仮想通貨利用を懸念する声がある。
英国の政治顧問であるバロネス・ペンは「英国は同盟国と連携して、暗号資産など新たな抜け道になり得る手段に対して、どのように阻止するかを検討している」と発言した。
英議員のトマス・タジェンダット議員らは、英FCA(金融行為監視機構)に対して仮想通貨企業に制裁措置の適用を義務付けるべきだと要求する書簡を提出。FCA側は仮想通貨企業に連絡して、制裁の適用に関する責任について説明したと声明を出しており、引き続き銀行などと同様に監視していくと発表した。
業界内の声は
一方、ブロックチェーン業界からは仮想通貨のみを特別扱いするべきではないという声も少なくない。
大手取引所バイナンスのチャンポン・ジャオ(通称、CZ)CEOは、現金やダイヤ、金(ゴールド)など「制裁を逃れる手段は無数にある」と指摘。仮想通貨もこれらと同じで特別なものではないと述べた。
また、元弁護士で業界専門家の米ブロックチェーン協会Jake Chervinsky氏はロシア政府が仮想通貨を利用する可能性は低いと分析。
1/ Russia can't & won't use crypto to evade sanctions.
— Jake Chervinsky (@jchervinsky) March 1, 2022
Concerns about crypto's use for sanctions evasion are totally unfounded. They fundamentally misunderstand:
– how sanctions work
– how crypto markets work
– how Putin is actually trying to mitigate sanctions
I'll explain 🧵
これまで、プーチン大統領が用意してきた制裁回避手段の一部に含まれていなかった点や、ブロックチェーンのトレーサビリティ(追跡可能性)が資金の移動を監視されやすくしてしまう点を要因に挙げた。
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なお、バイナンスやコインベースなどの大手仮想通貨取引所は、ウクライナ政府から、全てのロシア人ユーザーの取引口座を凍結するよう求められていたが、バイナンスを始め、多数の取引所が暗号資産(仮想通貨)の理念などを念頭に、これに反対する姿勢を表明。
制裁リストに掲載されている政府高官などにはサービスを停止するとしつつ、軍事侵攻に関与していない一般市民も含む是非に疑問を投じていた。
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