経済制裁の影響は「未知数」
米FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は2日、米下院の金融サービス委員会の公聴会に登壇。直近のウクライナ情勢を受け、暗号資産(仮想通貨)規制に対する必要性が高まっていると米議会に呼びかけた。
パウエル議長はインフレが今年中に収まるとコメント。また、ウクライナ情勢を受けても今月中旬(15日〜16日)のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げに踏み切る姿勢を示した。
ただ、ロシアへの経済制裁による米国および欧州経済への影響はまだ「非常に不確実」であるとして、今後FRBの方針への影響も未知数だと語った。
一方で、ロシアが仮想通貨を利用して経済制裁を逃れる可能性について、パウエル議長は以下のようにコメントしている。
(ウクライナ情勢は)米議会による仮想通貨を含むデジタル金融に対する行動の必要性を改めて示す事例だ。
この急成長している業界は多くのパーツがあるが、必要な法的枠組みが整備されていない。
また、パウエル議長はテロリストなど犯罪者が仮想通貨を利用できるリスクも挙げ、仮想通貨規制の必要性を米議会に呼びかけた。
CBDCについて
さらに、パウエル議長はCBDC(中銀デジタル通貨)については現在、パブリックコメントを募集中であると説明。現段階では、まだデジタル・ドルの実現は決定していないと強調しつつ、「CBDCのもたらすメリットがコストを上回るかはまだ未知数である」と述べた。
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イエレン財務長官も懸念示す
米財務省のイエレン長官も2日、イリノイ大学で開催されたイベントにて仮想通貨利用の経済制裁を逃れられるリスクについて、以下のように発言していた。
引き続き経済制裁の影響を監視し、漏れがないか、そしてそれにどう対処していくか見守っていく。
仮想通貨は我々が監視しているチャンネルの一つで、(そこを介しても)制裁を逃れることはできない。
なお、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの担当者によれば、現段階ではロシアによって経済制裁を逃れるために仮想通貨の利用(大型送金)は確認されていない模様だ。
財務省は今週1日、仮想通貨を用いた取引も経済制裁に追加。米国市民がロシア政府関係者と取引することを禁止している。
また、仮想通貨事情に精通する米ブロックチェーン協会のJake Chervinsky氏は「経済制裁を逃れる手段として、仮想通貨を利用する可能性は極めて低い」と考察。
Chervinsky氏は仮想通貨を利用しても、米国企業や市民がロシア関係者と取引できない点には変わりないと指摘。他にも、仮想通貨やブロックチェーンの透明性や、ルーブル建の取引ペアの流動性が不足している点などを要因に挙げた。
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民主党派議員も懸念
米民主党の議員4名らは同日、制裁回避のためにロシア政府および関係者が仮想通貨を利用する可能性に懸念を示す書簡を提出。財務省傘下の外国資産管理局(OFAC)がどのようにして犯罪者の仮想通貨利用を監視しているのか共有するようイエレン長官に求めていた。
書簡は仮想通貨懐疑派として定評のあるエリザベス・ウォーレン議員を筆頭とした民主党議員が提出した。
ウォーレン議員はこれまでも、DeFi(分散型金融)や仮想通貨が「新たなシャドーバンク」であると発言したほか、21年7月にはイエレン長官宛に仮想通貨規制の推進を求める書簡を提出した経緯がある。