年初来安値更新のビットコイン、取引所へのインフローがコロナ・ショック以来の水準に
仮想通貨市況
11日の暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコイン価格は、前日比+0.15%の410万円(31,220ドル)に。
昨年最安値水準である28,000ドル〜30,000ドルの薄氷上を推移する。足元は売られすぎ水準にあるが、相関係数の強まる米株指数の下落余地を懸念する向きも強い。
FRB(米連邦準備制度)はインフレ抑制のために積極的な金融引き締めを重視しており、金融市場で警戒した売りが継続している。目先の関心は、本日21時半に発表の米消費者物価指数(CPI)に集まっており、方向感が出る可能性がある。
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オンチェーン分析会社Glassnodeによると、1BTC=33,800ドル時点でネットワークの収益性は、BTCホルダーの内40%が未実現損失(含み損)を抱えることを示唆する。この水準は、「2018年後半、及び2019〜2020年後半のベア相場で見られた収益性と一致しており、降伏前のダウンサイドリスクを示すという。
また、CryptoQuantに投稿したアナリストCoinSignal365氏によると、暗号資産(仮想通貨)取引所への週平均流入数(インフロー)が、20年3月のコロナ・ショック以来の最高値に達した。
ここしばらくはアウトフローが増加傾向にあったが、取引所への送金拡大は売り圧力の上昇と投資家のパニック売りを意味している。
その一方、インテリジェンスプラットフォームSantimentによれば、投資家の市場心理は過去6週間の最低水準まで落ち込んだ。このような「降伏シグナル」が続けば、相場の反発の起点にもなり得る。
USTへの懸念
Terraform Labsが発行するアルゴリズム型ステーブルコインの「UST(TerraUSD)」が、本来あるべき米ドルとの価値のペッグを保てず激しく乱高下したことも市場の動揺を誘った。
LUNA価格は前日比-46.8%、前週比-83%と暴落。7日時点では1LUNA=80ドル台だったが、11日時点で13ドル台まで急落している。USTのdepegで信頼性が揺らいだことで市場は懐疑的だ。
これに対し、テラ(LUNA)の非営利組織である「Luna Foundation Guard(LFG)」は、貸付や資金調達など矢継ぎ早に臨時策を打ち出し、ペグの外れた価格回復に努めている。
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USTは、独自通貨LUNAをバーンすることで米ドルと1:1の価値を保つよう設計されている。TerraブロックチェーンのネイティブトークンであるLUNAにも断続的な売り圧力が掛かり、DeFi(分散型金融)プロトコルからはUSTの資金流出を招いた。
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大口投資家による意図的なdump(相場操縦)行為の可能性が指摘される等さまざまな憶測を呼んでいるが、現時点では情報が錯綜しており真相は定かではない。
これに関連し10日に開催された上院銀行委員会では、イエレン米財務長官がTerraUSD(UST)問題に触れ、「ステーブルコインは、金融の安定に重大なリスクをもたらし得る」と警鐘を鳴らした。
「世界的な金融危機(リーマン・ショック)の引き金となったサブプライム住宅ローン市場よりも、現在の暗号資産市場は大きくなっている」と警戒感を示すキャサリン上院議員の質問を受けて答えたものだ。
サブプライムローンは米国政府が低所得者を対象とした高金利住宅ローンとして普及したが、不動産バブルが弾けたことで債務者の返済能力が低下、08年9月に米大手投資銀行である「リーマンブラザーズ」の経営破綻と金融市場の混乱をもたらした。
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米連邦準備制度理事会は9日に発表した「金融安定性報告書」にて、ステーブルコインの時価総額は、22年3月までの過去1年間で1,800億ドル以上に増加したしたことを報告。テザー(USDT)、USDC、Binance USD(BUSD)が80%以上を占めるとしている。
米議会は、今年末までにステーブルコイン法案を可決する用意がある。
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コインベース株価大幅下落
米最大手取引所コインベースの株価が、時間外取引で一時15%以上急落した。
第1四半期(1-3月期)決算発表で売上高11.7億ドルを報告したが、前年同期比35%減で4.29億ドルの赤字転落(純損失)に。売買高は3,350億ドルから3,090億ドルに、取引高は5,470億ドルから3,090億ドルまで減少した。
機関投資家が9%減の2350億ドルとなった一方、個人投資家は38%減の740億ドルとなっており、個人投資家の撤退傾向が顕著と言える。
2022年以降の市況悪化に伴いコインベースの月間アクティブユーザー数は1140万人から920万人へと減少したが、これはブルームバーグ集計のアナリスト予想のコンセンサス950万人を下回る。
ビットコイン(BTC)が21年11月の過去最高値から50%以上下落するなど金融相場の下落トレンドが鮮明となる中、コインベースは「弱気トレンドにはあるが、このような市況は恒久的なものではなく”暗号資産の冬”と呼ぶには早計であると信じている。今後も成長への投資を選択しながら、中・長期目線で引き続き注力する」と述べている。
将来の計画には、デジタルウォレット(Coinbase Wallet)およびNFT(非代替性トークン)関連サービスへの継続投資が含まれる。同社は4月下旬、満を持して「Coinbase NFTマーケットプレイス」のβ版をローンチした。NFTの売買のみならず、サービス内でクリエイターやコレクターと交流可能なソーシャルネットワーク機能を持ち合わせていることも反響を呼んだ。
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