仮想通貨のパニック売り一巡、自己管理ウォレット関心増で関連銘柄が逆行高
マクロ経済と金融市場
16日の米NY株式市場では、ダウは前日比56ドル(0.17%)高で取引を終えた。
先日発表されたCPI(米消費者物価指数)に続き、10月の米生産者物価指数(PPI)の前年同月比も市場予想より大幅鈍化したことで、FRB(米連邦準備制度)の利上げペース減速を期待した買いが入った。
金利先物市場では、次回の12月米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ確率について、50bpに減速することを80%以上織り込み始めている。
地政学リスクの側面では、ウクライナに軍事侵攻するロシア製のミサイルがNATO加盟国であるポーランドに着弾した可能性があるとの報道を受け、金融相場が一時急落する場面もあった。ポーランド外務省が発表し、国家安全保障に関する緊急会合を開いた。
一方、バイデン米大統領は「軌道的にロシアから発射された可能性は考えにくい」と慎重な見方を示した。専門家は、ウクライナ防空網で迎撃されたものである可能性も示唆しており、ポーランドの出方が懸念される。
仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比1.2%高の16,955ドルと反発した。
ここ1週間はFTX破綻の影響で大荒れ模様となったが、業界最大手取引所のバイナンスが事態収束を図るため、事業再生(リカバリー)ファンド設立を発表。予断を許さぬ状況が続くことが想定されるものの、早期に再建の動きもみられたことで極度に悪化した投資家心理の緊張緩和につながった。
前週比ではビットコイン(BTC)が5.8%高、イーサリアム(ETH)が13.7%高に。FTX破綻のパニック相場で売りが過熱した反動もあり、一部では大口買いが確認された。
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時価総額TOP10の主要アルトでは、XRPが前日比4.1%高と続伸。
発行企業の米リップル社は20年12月以降、XRPの販売に関する有価証券問題において米SEC(証券取引委員会)と長らく係争状態にあるが、前向きな進展が好感された。
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関連企業への波及
ウォール・ストリード・ジャーナルが報じたところによれば、仮想通貨レンディング大手のBlockFiは、破産申請の準備を進めている。
先週時点で、破綻申請したFTXへの重大なエクスポージャーを理由に顧客預かり資産の出金機能を停止していた。
シンガポールで開催されたBloomberg New Economyに出演したScaramucci氏は、破綻した投資企業アラメダ・リサーチや暗号資産(仮想通貨)取引所FTXに言及した。
FTXは今年初め、Scaramucci氏のヘッジファンド「スカイブリッジ キャピタル」の株式を30%購入していたとされる。
デューデリジェンス(財務調査)に携わった知人とも話したところ、「FTXの貸借対照表(バランスシート)や損益計算書は虚偽表示されていた疑いがあり、サム・バンクマン・フリード元CEOの人物像にも事件が起きる前まで大きな不備は見当たらなかった。ベテランの機関投資家でも、見抜くのは困難だった可能性がある」との見解を示した。
FTXグループは数多くの暗号資産(仮想通貨)エコシステムへの積極投資を図っており、個別プロジェクトへの影響も顕在化しつつある。
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DeFi(分散型金融)のプライム・ブローカーであるOxygenは16日、FTX(アラメダ)破綻の影響で窮地に陥っていることを報告。
FTXはMAPSおよびOxygen事業の株式を保有していなかったが、MAPS/Oxyトークン総供給量の内95%以上保有していたことを明かした。現在は、エコシステムを保護するためすべてのオプションを検討しており、法律顧問を雇って対応に当たっている。
アラメダリサーチは21年2月、Oxygenに対する4,000万ドルの資金調達ラウンドを主導し、Multicoin Capital、Genesis Capitalなどが参加した。
このようなFTXグループ関連企業の被害の全貌が明らかになるまでには数週間〜数ヶ月間かかる見込みで、今後さまざまな問題が表面化する可能性は否めない。
被害を被った企業は多岐に渡っており、CoinShares、Multicoin Capital、Amber Group、Genesis Tradingなどが相次いでエクスポージャーについて現状報告した。
特に深刻なのが暗号資産管理会社のIkigaiで、Travis Kling CEOは15日、「突然のFTX破綻に巻き込まれた」と報告。ヘッジファンドの運用資産の大部分がFTXにあったことを認め、「全責任は私にある」と謝罪した。
その上で「暗号資産(仮想通貨)業界がこの危機を乗り越え前に進むためには、失われた”信頼”の概念そのものを再設計する必要がある」と述べている。
アルトコイン市場
ここ1週間で大幅下落した暗号資産(仮想通貨)相場であるが、個別銘柄の中には逆行高したものもある。
分散型取引所最大手UniSwapのガバナンストークンであるUNIが前週比30%高となり、前週比ほぼ全面安の状況で大幅上昇。
BNBチェーン基盤のトラストウォレットトークン(TWT)は、1.14ドルから2.75ドルまで2.4倍以上高騰した。バイナンスは2018年にトラストウォレットを買収しており、ブランドの信用力も相まって思惑買いが集まったものと見られる。
TWTはガバナンストークンであり、トークン保有者はアプリ内購入で割引特典を受けられるほか、改善提案に対する投票(議決)権を持つ。
直近では、業界大手FTX破綻の影響により、特に海外の非上場企業が運営する中央集権型取引所(CEX)への不信感が急速に高まり、DeFi(分散型金融)の関心が拡大した。
自己管理の重要性が増したことから、メタマスクやトラストウォレットなどのデジタル資産を保管可能なホットウォレットのほか、ネット環境から隔離して保管可能なハードウェア(コールド)ウォレット需要が急増した。
長年重宝されてきたハードウェアウォレット企業であるTrezorやLedger Enterpriseは、短期間で売上高が急進したことを明かしている。
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一方、秘密鍵や復元可能なシードフレーズの自己管理および物理的な保管は、紛失・盗難など別のリスクも生じることから、暗号資産(仮想通貨)初心者には取り扱いが難しいとして警鐘を鳴らす意見もある。
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