ビットコイン高騰で400万円台上回る GBTCの「マイナス乖離」は大幅減
マクロ経済と金融市場
連休明け20日の米NY株式市場では、ダウ平均株価は前日比245ドル(0.72%)安、ナスダック指数は22ポイント(0.16%)安で取引を終えた。
今週は、前米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けタカ派発言の見込まれるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長による議会証言を控え、日米株式相場に過熱感が台頭する中、7月の利上げ再開懸念が意識された。
5年ぶりに米国務長官として訪中するブリンケン氏は19日、今年11月に米国で米中首脳会談を開催する可能性について言及した。米中貿易摩擦や台湾情勢をめぐる地政学リスクが懸念される中、軍同士のハイレベル対話が実現すれば、緊張緩和につながることが期待される。
関連:ビットコイン400万円復帰、仮想通貨マイニング株大幅反発 今夜はパウエル議長の議会発言|21日金融短観
関連:仮想通貨投資家にもオススメの株式投資、日米の代表的な仮想通貨銘柄「10選」
仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比7.06%高の1BTC=28,770ドルに。
アルトコインも全面高となったが、ビットコインの騰落率が相場を先導している。
BTCは200日移動平均線(200MA)の27,000ドルや4月以降に上値を切り下げていた平行チャネルのレジスタンスをブレイクアウトすると騰勢を強め、ショートポジションのロスカット(強制清算)を巻き込む形での急騰につながった。
デリバティブ(金融派生商品)市場の先物データをみると、ショートスクイーズ(空売りの踏み上げ)発生に伴い60億円相当のポジションが焼かれており、年初の値動き同様に投資家の下目線が強まる中、大衆心理の逆を行った可能性が指摘される。
ただし、データ分析企業CryptoQuantのKi Young Ju(@ki_young_ju)CEOは、ショートスクイーズは限定的であり、腰の入った現物の大量買いが相場の上げを主導していると主張。踏み上げ余地の燃料はまだ残されているとの見解を示した。
昨日時点で市場占有率を示す「ビットコイン・ドミナンス」は2年ぶり水準の50%を超えるなど、過去の相場サイクルの底打ちシグナルと似たようなアルトドレイン現象も確認された。
関連:ビットコイン反転攻勢、ドミナンスは2年ぶり水準の50%上回る
米SEC(証券取引委員会)がコインベースやバイナンスを未登録有価証券の販売で提訴し、多くのアルトコインを有価証券指定するなど、かつてないほど規制圧力をかけるなど地政学リスクが高まる中、過去のSEC長官発言などからコモディティ(商品)として認められるビットコインに資金が集中しやすい状況にある。
中国が特別行政自治区と位置付ける香港では、新たなライセンス制度の下、6月以降に個人投資家のビットコイン取引容認するなど暗号資産およびweb3領域への機運が急速に高まっている。
この点についてBitMEXのアーサー・ヘイズ元CEOは、「中華圏の投資家は、香港証券取引所に上場するビットコインETFを買っている」「為替市場で中国や日本の輸出競争力をめぐる“通貨戦争”が勃発する中、紙幣の大量印刷が進めば、人民元の下落を招き、中国富裕層は資本を移さざるを得なくなる」などとブログで主張した。2021年5月には、中国政府による暗号資産(仮想通貨)全面規制で資本流入は途絶え米国など海外に流出した。今後長期国債の魅力が減少すれば、株式や金(ゴールド)、仮想通貨などのテールヘッジを保有すべきとの見解を示している。
中国の中央銀行は、およそ10ヶ月ぶりに事実上の利下げ(金融緩和政策)へと踏み切り、経済を下支えする意思を示したが、インフレ圧力やドルに対する人民元安が進めば、ビットコインなど代替資産への逃避需要が一層高まる可能性も考えられる。
関連:「香港を世界最大の仮想通貨市場に」現地の新組織にHuobiが参加へ
米ウォール街の金融大手が出資する機関投資家向けのノンカストディアル型仮想通貨取引所「EDX Markets」のローンチも好感された。ブラックロックや「EDX Markets」の動きは、米規制当局の動きを必ずしも悲観していないことを示唆している。
関連:ウォール街金融が出資する仮想通貨取引所「EDX Markets」 米国でオープン
GBTCの価格乖離が急減
そんな中、グレースケールの投資信託「ビットコイントラスト(GBTC)」のディスカウント(マイナス乖離)が急速に縮小していることがわかった。
Wu Blockchainによれば、GBTC価格は6月20日に11.44%急騰し、出来高は昨年11月以来の水準となる1000万ドルを超えた。
これに伴い、現物市場価格に対するGBTCのディスカウントは-34.19%に。13日時点では-44.03%だった。今年2月には過去最低水準の-46.9%まで拡大していたが、最大手資産運用会社ブラックロックのビットコインETF(上場投資信託)申請が明らかになって以降、買いが目立ち始めている。
背景には、債務懸念の渦中にあるデジタルカレンシーグループ(DCG)傘下でGBTC発行企業のグレースケールの入札について、米大手資産運用会社のフィデリティが関心を示しているという未確認情報もある。Arch Publicの共同創設者であるAndrew Parish氏らが言及した。
関連:デジタルカレンシーグループとジェネシス、債務返済計画に破談の可能性浮上
フィデリティは過去に米国で「ビットコインETF」の申請を行っていたほか、カナダではフィデリティ・クリアリング・カナダを通じて機関投資家向けにサービスを提供。22年1月には運用する2つのファンドに独自運用のビットコインETF組み入れを発表した。
フィデリティの総運用資産(AUM)は42億8,300万ドルに達し、資産運用会社として世界第3位の規模とされる。2018年には暗号資産に特化した小会社フィデリティ・デジタル・アセットを設立した。
GBTCは、1受益証券当たりのBTC保有比率がビットコイン市場価格に連動する投資成果を目指すものだ。2021年の強気相場では、裁定(アービトラージ)取引需要も相まって機関投資家を中心に需要が急増しプラス乖離(プレミアム)が拡大。21年12月のピーク時には+40%を超えた。
GBTCとは
グレースケールが提供するビットコイン投資信託のこと。GBTCはビットコインの価格と連動した投資信託で、一般の株式と同様に売買が可能。機関投資家や米証券取引委員会(SEC)から認められた認定投資家を対象に提供されており、投資家にとってはビットコイン現物を売買・保有しなくて良いというメリットがある。
しかし、その後金融市場全体の地合い大幅悪化やビットコイン先物ETFの承認など他社商品の台頭などの影響を受け、機関投資家によるエクスポージャーが激減。GBTC→BTCへの直接償還できない仕様もあり、一転して大幅ディスカウントが続いた。
GBTCは、償還期限前に払い戻し、及び中途解約出来ないクローズド・エンド型商品であることから本来の価値から乖離することがある。オープン・エンド型商品であれば純資産価格に基づく払い戻しが認められるため、より効率的な価格形成に寄与しやすいとされるが、グレースケールが要望する上場信託(ETF)への組み替え申請は、現時点で米SEC(証券取引委員会)に認められておらず、訴訟問題に発展している。
関連:ビットコイン投資信託GBTCで訴訟問題、マイナス乖離解消案巡り
関連:1年を切った次回ビットコイン半減期へのカウントダウン、市場動向と専門家の予測は?
過去に掲載したマーケットレポート一覧はこちら
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します