不動産×ブロックチェーン 事例と適応領域

目次
  1. はじめに
  2. 不動産業界におけるブロックチェーンの適応領域
  3. ブロックチェーン適用の課題
  4. 最後に

はじめに

国内の2017年度、不動産売上高は43.4兆円(財務省「法人企業統計調査」)と、非常に大きいマーケットである不動産ですが、近年はブロックチェーン活用のユースケースが増えてきています。例えば、2017年にウクライナの不動産がブロックチェーン上で売買され、最近ではフランスで評価額8億円相当の不動産の売買が行われました。

様々な業界でブロックチェーンの活用事例が増えている中、不動産領域ではどのように活用されているのでしょうか。

今回は、 EEA(Enterprise Ethereum Alliance)の不動産ブロックチェーン活用ユースケースについて書いたレポートを参考に、具体的な事例と共に解説いたします。

また、以前作成したブロックチェーン業界のカオスマップにある不動産業界の事例詳細についても、こちらでご紹介いたします。

不動産業界におけるブロックチェーンの適応領域

ユースケース①:不動産をトークン化(STO)

証券を電子化するセキュリティトークン(STO:Security Token Offering)は、不動産投資に対して新たな風を吹き込みました。物件の価値を裏付けしたトークンを発行し、それを売買可能にすることで、不動産の権利の細分化をすることができます。

例えば、ハワイのアパート1部屋のトークンを購入した場合、購入した割合に応じて分配された家賃収入を得ることが可能になったり、マンションなどの投資を募る場合、大きな金額ではなく小口投資を募ることも可能になります。

ユースケース➁:不動産情報の共有

コンソーシアム型ブロックチェーンは、複数の会社や組織に関わるビジネスの構築に適していると言われますが、土地や物件の管理はまさにその代表例です。

日本ではレインズ( 不動産流通標準情報システム )のようなサイトで不動産の検索が行えますが、レインズに掲載されないような各不動産会社が持っている情報を、複数社にまたがって活用しようとした場合にブロックチェーンの活用は有用です。

例えば、不動産複数社による共有データベースを作ったとして、各社が同じような権限でデータベースを更新しようとした場合、自社に有利な不正データを書き込むことが可能になります。そしてその不正なデータに対して検知することも、不正を暴くことも難しいです。また、1社などがそのデータベースを管理していた場合は、管理している主体が不正を行った場合、検知することもできません。

もちろん、共有データベースの権限管理やAPIなどの活用で、不正をしにくくすることも可能ですが、ブロックチェーンを使うことで各社バラバラに持っている使用を統一したネットワークの上で比較的容易に構築することが可能です。

また、ブロックチェーンの特性上、ネットワークに参加する企業が多ければ多いほど不正する余地を少なくすることが可能になります。

少ない企業でコンソーシアムを組んでも、ブロックチェーン活用のメリットは大きくありませんが、数が多くなればなるほど改ざん耐性も高まり、ブロックチェーン活用の価値も高まっていきます。

ユースケース③:土地や物件の管理

日本では先ほど挙げた例にもあるように、不動産情報が集約されたサービスを使うことが可能ですが、国外ではそういったサービスが無い国も存在します。また国によっては、国に属する職員自体が不正を行うケースも珍しくありません。

例えば、ブラジルでは実際に土地の管理などで不正を行うケースも多く、セキュリティ性の高いサービスが求められます。

Ubitquity という会社は、 ブラジルの登記局と提携し、不動産の所有権をブロックチェーンで管理することにより不動産所有に関するよりセキュリティの高いサービスの開発を進めています。

ユースケース④:契約の自動執行

不動産の契約プロセスは単純ではなく、多くの契約書を必要としています。それぞれの契約を理解する手間があり、 国それぞれ規格は違うにせよ複雑な手順に従って契約を行わなくてはなりません。

スマートコントラクトの利用で、こういった契約取引を自動化し、契約業務に関わる時間を大幅に短縮することが可能です。

注目の事例:RealT

不動産領域で注目されているブロックチェーンサービスの一つにアメリカ拠点の企業「RealT」があります。 RealTは、ユースケース①にあるように、不動産トークンをパブリックブロックチェーン(Ethereum)上で取り扱うことで、細分化された投資が可能になり、小口で家賃収入を得ることが可能です。また、契約の手続きをスマートコントラクト(ユースケース④)で自動化しているので、手続きにかかる時間を大幅カットしています。 不動産のブロックチェーン活用では、コンソーシアムなどのユースケースが多いのですが、RealTはパブリックチェーンを使っているのが大きな特徴です。

ブロックチェーン適用の課題

上記のユースケースに挙げたように、不動産業界にブロックチェーンは適しているように思えます。ですが土地や建物の管理は「国」という存在が絡んできますので「法律」という面でハードルをクリアする必要があります。

これは不動産業界に限った話ではありませんが、企業がブロックチェーンで何かビジネスを行う際、必ず法への対応が必要になります。 アメリカニューヨーク州などの一部の地域では特定の業界×ブロックチェーンの適用領域に対応するための法整備を行っている地域もありますが、国内も含めて法整備はまだまだこれからの印象があります。

パブリックブロックチェーンですと、非中央集権性の観点から国と対立する側面を帯びています。最近ではLibraの例にあるように、国がどのように対応するかによって今後の未来が大きく変わってきます。

最後に

不動産業界において、物件や土地の情報を正しく改ざんされない状態で共用することに大きなメリットがあります。高額な商品ともいえるので、そういった不正の余地はなるべく排除する必要があります。そういった文脈でブロックチェーンの適用は大きな意味があります。

また、トークン化によって物件の「一部」を少額で持つことは今までは実現できなかったこともあり、今後ブロックチェーンの導入が進めば、不動産の取り扱いや持ち方は大きく変わっていくでしょう。

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