Liquidネットワークについて(前編)

目次
  1. はじめに
  2. Liquidネットワークとは
  3. Liquidネットワークの特徴

はじめに

”Liquid”と聞くと、国内では取引所の名前であったり、単語のスペルの感じから“Lightning”と勘違いされたりと、いろいろな可能性を秘めた国際金融プラットフォームであるLiquidネットワークが、正しく伝わってない部分が解消され、Bitcoinの最先端テクノロジーがより身近になればと思い投稿いたします。

Liquidネットワークとは

まず概要からです。Bitcoin関連の先端技術を提供するBlockstream社が開発したBitcoinにおけるサイドチェーン・ソリューションのプロダクトであり、世界中の仮想通貨取引所、マーケットメーカー、ブローカーや金融事業者を繋ぐ決済ネットワークです。

またこのサイドチェーンとは、メインのブロックチェーンに別のチェーンをつなげ、機能や性能の補完・拡張する技術であり、さらに端的に言いますと、Bitcoinブロックチェーンをパワーアップした先端技術ということになります。

Liquidネットワークの管理・運営は、参加者であるFederation(連合)メンバーが行うコンソーシアム型のブロックチェーンになりますが、後ほどFederationについてのガバナンスなど、透明性のある民主的なところも詳しく後編のコラムでご紹介いたします。

Blockstream社のCEOを務めるAdam Back氏は、Bitcoin採掘(コンセンサス・アルゴリズム)に採用される「Proof-of-Work(略称PoW)」の原型となる「Hashcash」を考案した暗号学者で、サトシ・ナカモトのホワイトペーパー「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」にも引用されています。未来における金融包摂について考えられていることが印象的です。

サイドチェーンは、新たな可能性を広げます。技術面では、Lightningによる少額決済の拡張やスマートコンタクトによる取引自動化。ビジネス面では、法定通貨にペッグされたステーブルコインやコモディティのゴールド、証券、不動産などの金融資産のネットワーク利用検討が始まっており、既にステーブルコインのTetherドル(USDT)は発行され実利用されています。

Liquidネットワークの特徴

BitcoinのサイドチェーンであるLiquidネットワークは、以下の特徴があります。

  1. BTC裏付けトークンの発行と償還
  2. 匿名性の高いトランザクション
  3. 高速な送金
  4. 独自トークンの発行と償還

1)BTC裏付けトークンの発行と償還

最初の特徴ですが、メインチェーンとサイドチェーン間で、BitcoinのTwo-way Pegをすることが出来ます。すこし解かり辛い表現なので、分解して解説します。

Bitcoinをロックして、Liquid-Bitcoin(以下L-BTC)としてLiquidネットワーク上で使用できるようにすることをPeg-in(発行)と言います。その逆にL-BTCをLiquidネットワークのから消滅させbitcoinに戻すことをPeg-out(償還)と言い、これが各々のチェーン間でのTwo-way Pegの仕組みになります。Peg-in、Peg-outというin/outの使い方から気付かれたかと思いますが、主体はあくまでサイドチェーンのLiquidネットワークの方です。そしてPeg-inが完了するには、メインチェーン上で102承認が必要です。一方でPeg-out完了するにはサイドチェーン上で2承認が必要になります。

Peg-inを完了するには、およそ17時間(102×10分間)の時間を要することになりますが、Bitcoinブロックチェーンの大規模なブロック再編(Reorg)が発生した場合に、参加者全員の資金を保護するために、このような高いレベルのセキュリティが求められます。

2)匿名性の高いトランザクション

次の特徴は、トランザクション秘匿化(Confidential )になります。すべての第三者から取引の金額と資産の種類を隠します。金融取引において、大量資金によるOTC取引等、市場に対する価格への影響を防ぐため、非常に重要な機能になります。Liquidネットワークの利用が活発化する重要な機能になります。

3)高速な送金

3つ目の特徴は、2分間で送金が確定することで、仮想通貨に精通している方には、「ファイナリティー2分」という表現の方が端的かと思います。

Liquidネットワークは、現在15台のFunctionaryサーバが世界の各拠点に点在し稼動しており、これらのサーバがFederated Blocksigningというコンセンサス・アルゴリズムにより、ブロック生成を1分間隔で行っています。

※Federated Blocksigningとは、15台のFunctionaryサーバのうちラウンドロビンにより決定したサーバがブロックを生成し、他のサーバが一定の台数まで署名したら、ブロックがブロードキャストされる方式。

Bitcoinはブロック生成が約10分間隔で行っており、ファイナリティーに至っては、6個のブロック生成/承認されるのを待って確定と見なしたりしています。

※筆者の勝手な比喩的表現になりますが、Bitcoinをゴールドに例え、対してLiquidネットワークのL-BTCは兌換紙幣のように感じています。
取扱いに諸々の手間やコストがかかるゴールドに対して、軽量で低コストな兌換紙幣といったイメージです。送金時間やその手数料において圧倒的な差があります。

4)独自トークンの発行と償還

最後の特徴は、Liquidネットワークでは、ユーザーがIssued Assets(IA)と呼ばれる機能を使用して、他の資産を作成して発行と償還をすることができます。

これらの資産は、ステーブルコインや、トークン化された非BTC暗号通貨、ゴールドに裏付けされたトークンなどを流通させることが可能です。IAの下での義務は発行者に属し、Liquidネットワークは原資産が存在するかどうか、または適切に維持されているかどうかを検証しません。

現在、Tether社のUSドルトークン(USDT)やカナダドルにペッグしたトークン(L-CAD)が、既にLiquidネットワーク上に発行されています。

嬉しいエピソード

Blockstream社のリチャードさんと今回のコラムの投稿について相談している時ですが、唐突に、リチャードさんからアダムさんにコメントを求める場面があり、かなり刺激的な体験をしました。
アダムさん、リチャードさん、ありがとうございます。

アダムさんからご紹介いただいたリンクには、Liquidネットワークに関するインタビューが収録されています。こちらも是非アクセスして頂ければと思います。
(英語のインタビューなので少し覚悟がいります。)

https://www.whatbitcoindid.com/podcast/liquid-bitcoin-with-adam-back-samson-mow


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。次回は後編のガバナンスや現在の資産流通量にについて触れたいと思います。

「Liquidネットワークについて(後編)」はこちら


【参照リンク】

https://blockstream.info/liquid/

https://docs.blockstream.com/liquid/technical_overview.html


【寄稿者プロフィール】



 y.takamatsu

Bitcoinの個体/液体/気体に例えるアナロジーに興味を惹かれました。

・Bitcoinメインチェーン:氷
・Liquidネットワーク:水
・Lightningネットワーク:蒸気

(株)CAICAテクノロジーズ
クリプトカレンシー&テクノロジー事業部
高松良仁

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