米下院議員、インフラ法案の修正求める 過度な仮想通貨規制に反対

仮想通貨条項の修正を提案

米上院で10日に可決したインフラ法案について、Anna Eshoo米下院議員は、暗号資産(仮想通貨)に関する条項を変更するよう求めたことが分かった。

上院で可決された法案には、仮想通貨業界の「ブローカー」に対し、仮想通貨取引を行うユーザーの税務情報を開示するように求める条項がある。Eshoo議員は、このブローカーの定義が広すぎて、規定を遵守することが不可能である個人や企業が含まれると指摘した。これから下院で審議する際に、ブローカーの定義を変更するように求めている。

インフラ法案とは

米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つである。

▶️仮想通貨用語集

上院から提出されたインフラ法案は、バイデン大統領の看板政策の1つ。130兆円規模の予算を見込む大型経済政策で、米国各地で老朽化するインフラを一新することで、経済への刺激を図る狙いがある。

この予算を捻出するための手段の1つとして、仮想通貨業界に対する課税も強化し、これが3兆円の予算確保につながるとの見方も上がっている。

一方この法案には、「ブローカーに対し、仮想通貨取引を行うユーザーの税務情報開示を求める」と定めた条項があり、ブローカーの定義が仮想通貨業界を巻き込んで大きな議論になった。当初のブローカーの定義は「他人に代わってデジタル資産の移転を行うサービスを定期的に提供する責任を(対価として)負う者」としている。

これではブローカーの幅が広すぎるという声が多く上がり、修正案も出されたが必要な賛成票が集まらず、結局上院では修正が加わることなく、当初の定義のままで法案は可決した。過去の経緯は以下の記事にまとめている。

関連米インフラ法案の「仮想通貨条項」 妥協案提示も導入には至らず

Eshoo議員の提案内容

米議会の公式ウェブサイトによると、Eshoo議員は、自身が選出された地域にあるシリコンバレーのようにイノベーションを重視する下院議員。今回の提案は、下院のNancy Pelosi議長宛てに書簡で送った。

提案は新しい内容ではない。これまで議論されてきたように「今の定義のままだと、ブローカーには取引所だけでなく、マイナーやバリデータ、ウォレットの開発者まで含まれてしまう」と指摘。

そして「仮想通貨の分散型システムでは、ブローカーに該当しても売買を誰が行なっているかまでは知らない個人や企業がいるため、法案が定める規則を完全に遵守してもらうことは不可能である」と主張した。

Eshoo議員は、これまで修正案が示されていたにも関わらず、法案の本質よりも手続きを進めることを優先したとし、下院で仮想通貨条項を変更するよう促している。「脱税対策自体には賛成するが、実行不可能な規則を作ることで、成長段階の業界におけるイノベーションを抑制してはいけない」とした。今回の法案に対しては、仮想通貨業界からも、過度な報告義務は企業らの海外移転やイノベーションの阻害につながると批判が上がっている。

ブロックチェーン業界のロビー団体Coin CentersのJerry Brito氏は、Eshoo議員がインフラ法案に反論を示した4人目の下院の民主党議員であると指摘した。

また、10日にはブロックチェーン党員集会のTom Emmer議員ら4名が下院議会宛てに、インフラ法案の仮想通貨条項に反対するよう呼びかける書簡を提出していた。

10日に上院で可決されたインフラ法案は、今秋から再開する下院議会で審議される予定だ。

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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