「世界の仮想通貨マイニング状況を調査する法案」米議員が提出
超党派で仮想通貨を調査する法案提出
米国の上院議員2人は27日、米財務省が世界における暗号資産(仮想通貨)マイニングや仮想通貨使用の状況を詳しく調査するように規定する法案を提出した。米国の競争力強化のための調査であるとしている。
マイニングとは
ビットコインなどPoW通貨の取引を検証・承認する「採掘」行動のこと。取引の検証にはコンピューターで膨大な計算を行う必要があり、その見返りとしてマイニングに成功すれば報酬が得られる。報酬の支払いを通して、仮想通貨が新規発行される仕組み。この一連の作業が鉱物採掘に似ていることからマイニングと呼ばれ、日本語で「採掘」と表記されることもある。
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この超党派法案を提出したのは、Maggie Hassan議員(民主党)とJoni Ernst議員(共和党)。内容としては、法案が制定された場合、2年以内に財務省がグローバルな仮想通貨使用状況について調査し、議会に報告することを求めるものだ。
報告書の内容には、次の事項を含めるものとしている。
- 外国がどのように仮想通貨を使用し、マイニングしているかを評価
- 2016年から2022年において、米国内でマイニングされた仮想通貨の種類と金額
- 同期間に中国およびその他の国でマイニングされた仮想通貨の種類と金額
- 仮想通貨マイニングが半導体などのサプライチェーンに与える影響
- 仮想通貨マイニング産業がもたらす機会
外国における仮想通貨使用やマイニングの評価については、「最大の仮想通貨使用者やマイニング事業者の特定」「仮想通貨の使用とマイニングを奨励するための政策」「仮想通貨の活用とマイニングが、諸外国にどのような恩恵または損失を与えているか」などの項目を挙げている。
Maggie Hassan議員は、次のようにコメントした。
米国の競争力を強化するためには、政府は、仮想通貨が世界経済で果たしている役割や、他国でどのように活用されているかを把握する必要がある。
Ernst上院議員と超党派で協力して、財務省がサプライチェーンへの影響を含め、仮想通貨の利用について確実に把握しておくようにする法案に取り組めることを嬉しく思う。
一方でHassan議員は、仮想通貨の犯罪利用についても注視している。9月初旬には、財務省など政府当局に対し、サイバー攻撃などの犯罪に仮想通貨が使われている状況に対処するよう呼びかけた。また、1月にYellen氏が財務長官として指名された際の公聴会でも、仮想通貨の違法使用について対策を講じるよう求めていた。
仮想通貨マイニングが半導体に与える影響は?
仮想通貨マイニングが半導体供給に与える影響については、考えられているよりも少ないとする意見もある。
ウォールストリートジャーナルによると、例えばリサーチ企業Bernsteinは、台湾の大手半導体企業TSMCの2021年の収益のうち、仮想通貨関連が占める割合は約1%に過ぎないだろうと予測している。2018年前半に仮想通貨市場が高騰していた際には、収益の約10%を占めていたが、その後割合は低下している状況だという。
2018年に仮想通貨相場が暴落した際、マイニング事業も停滞し、半導体が供給過剰になった。それ以降、半導体業界は仮想通貨セクターについて慎重になっているとの見方もされている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します