先週末にかけて仮想通貨高騰、NFT関連銘柄2つが過去最高値を更新した理由は

金融市場と仮想通貨の動き

週明け4日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比+0.38%の530万円(ドル)で推移している。

軟調に推移していた株式市場では、ダウ平均株価が大幅反発。

米製薬大手メルクの開発する新型コロナウイルスの新たな治療薬において、最終段階の臨床試験で良好な結果が得られたことがわかり、苦境に陥る世界経済の再興につながるとして好感された。直近の金融市場は、米政権の債務問題や中国不動産開発大手の恒大集団によるデフォルト(債務不履行)危機などの影響で地合いが急悪化していたが、これらの懸念が後退したことも投資家心理改善につながったものと見られる。

ただし、中国恒大集団のデフォルトリスクは解消されておらず、市場がどこまで織り込んでいるかは不透明だ。同業者や融資していた銀行、資産運用会社などに影響が波及する可能性もあり、金融市場に強い懸念が燻っている点には注意したい。

これに先駆け、仮想通貨市場は再びブル相場の様相に。

9月30日掲載のマーケットレポートにて相場復調の兆しを指摘していたが、44,000ドルのトレンドラインのレジスタンス(①)においてショーターのロスカットラインを踏み上げるようにして、下降ウェッジ上抜けが成立。直近の大幅調整局面で、デリバティブ(金融派生商品)市場におけるOI(未決済建玉)の信用整理も進んでいたことから、趨勢に変化がみられる。

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相場好転に伴い、ビットコイン・ハッシュレートは今年5月の過去最高水準付近まで回復した。これは、中国当局の仮想通貨関連事業への締め付けが過去類を見ない規模まで強まる中、海外に移転した中国大手マイナーの再稼働や新規マイナーの流入を示唆するものだ。

これまでは、安価な電気代などを背景に中国・四川省や内モンゴル自治区などで採掘能力が一極集中していた世界のマイナー分布であるが、今回の件で結果的にチャイナリスクの軽減、及び健全な世界分散化が進んでいると評価できよう。

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個別銘柄の動向

直近のリスクオフ局面で売りが先行していたアルトコイン市場では、個別銘柄が物色された。

テゾス(XTZ)

テゾス(XTZ)が、前日比+5.6%、前週比+41%と続伸。今年5月のアルトシーズンで記録した過去最高値の8.07ドルを更新した。

XTZ/USD価格推移

テゾス(XTZ)は国内上場銘柄で、Coinmarketcap(CMC)の時価総額ランキングは25位。上昇の背景としては、ソラナ(SOL)同様、NFT市場でのプレゼンスを大幅に高めたことでNFT関連銘柄入りしたことなどがある。また、ステーキング需要に伴い市場に出回る浮動数の減少・供給量不足(希少価値向上)になったことも追い風に。

Tzstats.comのデータによると、現時点で総供給量の内、76.28%(6.8億XTZ)がネットワーク上のプロトコルにロックアップされている。

今年9月には、Twitterで340万人のフォロワー、Instagramで1430万人フォロワーを擁する米人気ラッパーDoja Catが、Tezos基盤のNFTマーケットプレイス「OneOf」でのNFTコレクションセールを発表。XTZ上昇を後押しした。

テゾス財団は今年5月、レッドブル・レーシングと提携。ファン向けのNFT提供方針を示したほか、今年6月には「マクラーレン・レーシング」がテゾスブロックチェーン基盤のNFTプラットフォーム構築を発表するなど、F1業界とのタイアップも進めている。

テゾスは今年8月、プロトコルの第7弾アップグレードとなる「グラナダ(Granada)」を完了。ネットワークでのブロック作成時間が半分に短縮されたほか、スマートコントラクトのガス消費量が平均1/3〜1/6まで大幅削減されており、トランザクション・フィーとなるガス代高騰がボトルネックとなるイーサリアム(ETH)経済圏の間隙を縫うようにして発展を遂げたとの見方もある。

Axie Infinity(AXS)

Axie Infinity(AXS)が、134ドル(前日比+25%、前週比+115%)まで続伸。過去最高値を大きく塗り替えた。

AXS/USDの価格推移

AXSは、「Axie Infinity」のガバナンストークン(イーサリアム基盤ERC-20規格)。今回、AXSのステーキング開始が材料視された。ステーキングダッシュボードからトークンをロックすることで、リワード(報酬)を獲得することができる。

今後次第に落ち着くものと思われるが、サービス開始直後の最大年利(APR)385%となったこともあり、需要を促進した。

AXSのステーキング量は、サービスローンチからわずか1時間で5,000万ドル(約50億円)規模に達したという。

P2Eの仕組み

Messariの調査によると、トークン価値と発行数から算出されるAxie Infinity(AXS)の推定時価総額は、約300億ドル(約3.3兆円)。

株式市場との単純比較はできないが、大手ゲーム企業の時価総額データをみた場合、Activision Blizzard、任天堂、Roblox、ElectronicArtsに次ぐ5番目の規模となるという。

国内NFTゲームだとマイクリプトヒーローズなどに代表される「Play to Earn:P2E(ゲームプレイで稼ぐ)」と呼ばれる仕組みが導入されており、ユーザーは、ゲーム内クエスト報酬や対人戦のバトルに勝利し、NFTを取引することで対価を得ることができる。Axie InfinityなどP2Eのブロックチェーンゲームは、生活費に困窮しがちなフィリピンやベトナムなど発展途上国を中心に、今年春〜夏頃から爆発的な流行を記録した。

The Blockのデータによると、NFTゲーム市場は急速に拡大してきた反動から9月は、前月比-45%とドローダウン。流行り廃りの激しい業界だけに、NFTアセットの週間出来高は、ピーク時の2億2,000万ドルから約1億3,000万ドルまで減少していたが、エコシステムへの大きな梃入れによってトークン価格が再上昇するなど早くも再燃した

昨今では、NFT及びメタバース(仮想空間)市場の急拡大に伴い、さまざまなゲームプロジェクトが誕生。マインドシェアをめぐって競争が激化しており、投資家からも高い関心を呼んでいる。

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日本発のメタバースNFTも台頭

日本における国内発のメタバース(仮想空間)プロジェクトとしては、クリプトアートプロジェクト「Metaani」の動きが活発だ。VR対応で10,000体の限定セールを始めた「Mettani GEN」のMint(ミント)システムが、国内有識者の間でも反響を呼んでいる。

「Mint(ミント)」とは、イーサリアムなどのスマートコントラクトを使って、NFTを新規作成・発行すること。国内発のプロジェクト支援を兼ねて、お気に入りのNFTアバターをイーサリアム(ETH)ブロックチェーン上でクリエイトするという近未来的な新体験につながっている模様だ。

「Metaani」は、世界最大のクリプトアート展示会”Crypto Art Fes”を開催したmekezzo氏と、VRクリエイターのMISOSHITA氏によって立ち上げられたクリプトアートプロジェクト。mekezzo氏は、3Dバーチャルアイテムを販売する世界初のバーチャルECサイトである仮想商店街「Conata」、及びバーチャルクリエイター「希来里パイ」の開発者としても知られる。

9月18日には、バーチャルYouTuber界のパイオニアである「キズナアイ」とのコラボを実施。キズナアイ初となるNFT(非代替性資産)のセールを行なった。

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「Metaani」のメタアニアバターは、同じ個体は一つも存在しない3Dモデルのアートプロジェクトであり、ブロックチェーンなどを用いたメタバース(仮想世界)上で利用されることを前提に設計されている。

公開に向けて準備を進めるバーチャル空間のテーマパーク「メタアニランド(Metaani Land)」では、関連プロジェクトの売上高に応じてエリアを拡大予定。今後、投資家の持ち寄ったメタアニ・アバターだけが参加できる、特別な音楽祭「メタアニFES」の開催を目指している。

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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