経済産業省、「大臣官房Web3.0政策推進室」を設置
Web3事業の課題検討を加速へ
日本の経済産業省は、省内横断組織として「大臣官房Web3.0政策推進室」を設置した。
資金調達や税制、事業体などを担う事業環境担当課室や、コンテンツ・スポーツ・ファッション・アートなどを担う業種担当課室が一体となり、デジタル庁等の関係省庁と協働。その上で、Web3.0(分散型ウェブ)に関連する事業環境課題を検討する体制を強化するという。
15日の発表では、「暗号資産(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)などのトークンを基盤とし、ブロックチェーン上でユーザーが自身のデータを管理・活用できるようにして、新しい価値を創出する動きがグローバルに広がっている」と指摘。
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また、「Z世代など若者を中心にメタバース(仮想空間)が新たな個人のインターフェースとなりつつあり、デジタル空間の比重が高まってきており、ビジネス的価値も飛躍的に上昇する可能性がある」と、同室設置の背景を説明している。
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こうした潮流に対し、Web3.0関連の起業家が国外に流出している状況も踏まえると、日本国内の事業環境整備について検討スピードを上げる必要があると主張。まずは可能性とリスクを正確に捉える必要があると述べている。
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同室の業務内容は、海外での事業環境や国内での事業環境課題について、事業者や投資家、法曹、エンジニアらから情報収集を行い、関係府省庁と協力してWeb3.0に関連する事業環境を整備すること。省内各局に分散しているWeb3.0関係課室等が一体となって政策立案を行うチームがWeb3.0政策推進室だとした。
現行制度の論点
今回の発表には「第30回産業構造審議会総会 資料」という、5月19日付のファイルを関連資料として添付した。資料のタイトルは「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」。ロシアのウクライナ侵略やコロナ禍の影響などと共に、Web3.0についても記載している。
資料では「Web3.0の可能性と政策対応」という項目を設け、「Web3.0とは」といった内容や各国政府の動向、政策課題などをまとめた。その上で、「Web3.0という新たな動きは今後の日本経済にどのようなチャンス・リスクをもたらすか」や「この新たな経済的フロンティアにおける政府の役割はどうあるべきか」を議論した模様だ。
この資料では、「現行制度の論点」として以下の例を挙げている。
- 企業が発行・保有するトークンが含み益とみなされ、法人税の課税対象となる。特にキャッシュ不足のスタートアップにとっては資金調達及び意思決定プロセスにトークンを用いることが困難に。
- 個人の仮想通貨による収入は雑所得とみなされ、最大55%の総合課税対象(株式のキャピタルゲイン課税は約20%)。
- 仮想通貨に係る会計基準が曖昧であるため、仮想通貨を保有する企業は監査法人によるチェックが受けられず、適正意見が出ない。上場企業の参入が困難に。
- 多くのVCは投資事業有限責任組合(LPS)形態のファンドを組成してスタートアップに投資を行うが、LPS法上、投資対象として仮想通貨やトークンが明示されていない。
- 他人が制作したコンテンツを第三者が無断でNFT化する事案が発生。NFT・メタバースに係る権利関係の整理は途上。
資料の最後では「本日の議論を踏まえ、今後の政策に反映。今夏の産構審総会でも改めて議論いただく」と説明している。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します