ヴィタリック氏、ガバナンストークンのDeFi管理構造に苦言
譲渡可能なガバナンストークン
イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、分散型プロジェクトの投票に用いられる「ガバナンストークン」がお金で買える現状について批判した。
“人々を支配したい者は、その役割に適していない”という諺があるように、譲渡可能なガバナンストークンで運営されるDAOを支持することには矛盾がある。譲渡可能なガバナンストークンは、“支配したい人たち”により多くの権力を与えるだけだ。
現在、様々な分散型プロジェクトがガバナンストークンを発行しており、エコシステムの財務管理や新機能の導入といった提案や投票に使用している。しかし、ほとんどのガバナンストークンは暗号資産(仮想通貨)なので譲渡可能であり、市場で取引されている。投票の度に借りたり購入できる大口(クジラ)の意見が通りやすい傾向がある。
直近では、主要なDeFiプラットフォーム「Lido Finance」のLDOトークンを使った資金調達プランについて、資金調達先のDragonfly Capitalと思しき単一のウォレットから1,500万LDO(約20億円)もの賛成票が投じられ、批判を集めた。
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ブテリン氏は6月にWeb3(分散型ウェブ)時代に個人のアイデンティティ(ID)を識別するツールとして「Soulboundトークン(SBT)」に関する論文を発表した。SBTは一度受信したら、デジタルウォレットの外に移すことができない「譲渡不可能なNFT(非代替性トークン)」の性質を持つ。
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論文の共著者でマイクロソフトの主任研究員を務めるGlen Weyl氏は27日のDelphi Digirtalのポッドキャストに出演して、Soulboundトークン(SBT)は人間の「社会的価値」を反映するものと説明した。
現状のWeb3には金融商品しかない。DeFiやNFTなど、すべてが譲渡可能な金融化された商品である。これでは最適なインセンティブ構造は作れない。SBTは、人の活動や行動をトークン化することで、評判という社会的性質に価値を付帯させるためのものだ。
Weyl氏によると、ガバナンス・トークンはエコシステムやコミュニティの統治機能としては、非常に限定的だ。SBTであれば、人がどのような集団に属し、どのような役割を担ってきたかが識別可能になる。分散型コミュニティをリードするのにふさわしい人物かどうかといった、「社会的関係性」をDAO運営に組み込めるようになるとした。
DAOとは
共通の目的を持って結成されたプロジェクトに関わる人々の集団を指す。意思決定が集団的に行われ、自律的に機能するために特有のインセンティブ設計を有す。ガバナンストークンの保有者がスマートコントラクト、戦略に関する提案、および投資アイデアなどを提出し、それらに投票できるケースが多い。
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