制裁関連でミキサーを監視か
米財務省はイスラエルとイスラム系組織ハマスの激突を背景に、ハマスが国際的な暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービスを利用しているとして、そうしたサービスをマネーロンダリングの拠点に指定する計画だ。ウォールストリートジャーナルが報じた。
指定は制裁の一形態となり、財務省はあらゆる金融取引を報告することをミキサーに義務付ける予定だとしている。財務省のウォーリー・アディエモ副長官は次のように説明した。
マネロン拠点への指定は、国家関連のサイバー攻撃者やサイバー犯罪者、テロ集団など様々な違法行為者による、仮想通貨ミキシングサービスの悪用と戦う上での取り組みを示すものだ。
財務省は、ハマスやパレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)を含むテロ集団による仮想通貨エコシステムのあらゆる不正使用と積極的に戦っている。
議員らによる要請
この動きの背景としては、エリザベス・ウォーレン上院議員をはじめとして100人以上の議員らがバイデン政権に、テロ組織の仮想通貨による資金調達に対処するよう要請したことがある。
ウォールストリートジャーナルは、ハマスとPIJが2021年8月から2023年6月までの間に、約195億円(1億3,000万ドル)以上の仮想通貨を調達したと報じていた。PIJは2023年以来、レバノンに拠点を置くイスラム系武装組織「ヒズボラ」に約18億円(1,200万ドル)以上の仮想通貨を送金したとも述べている。
議員らはこの報道を受けてバイデン政権に書簡を提出し、武装組織のこうした資金調達による明白で現実化している危険性をかんがみ、テロ資金調達のための仮想通貨使用を阻止する計画を新たに追加するよう求めていた。
議員らは、議会が仮想通貨のマネロンや違法金融のリスクを軽減することを目的とした立法を検討していくことを示唆しつつ、次のように書簡を結んだ。
バイデン政権に対して違法な仮想通貨活動を抑制し、米国とその同盟国の安全を守るために迅速かつ断固として行動することを強く求める。
ウォーレン議員はその後、分散型金融(DeFi)も銀行と同じマネーロンダリング防止規則に従うべきだとも発言している。
「過大な見積もり」との指摘も
一方で、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスは18日、テロ組織による仮想通貨使用については、一部で過大な分析がなされているとの記事を発表した。
チェイナリシスは、テロ組織は仮想通貨よりもむしろ伝統資産を主な資金調達手段としていると述べている。過去を見ればこれまでに金融機関、ハワラ、ダミー会社など法定通貨ベースの手法が主に使われており、今後もそうした手段が利用される可能性が高いと指摘する形だ。
なお、ハワラとは中東や南アジアに見られる伝統的な金融システムで、第三者の仲介を通じて国際送金や資金移動を行うものだ。
バイナンスの動き
大手仮想通貨取引所バイナンスは10日、法執行機関から要請を受けてハマスに関連するアカウントを凍結したと発表している。
この際には、パレスチナ自治区ガザを支配するハマスと、パレスチナは区別すべきであるとしており、凍結はハマスのみが対象で、パレスチナの一般ユーザーのアカウントは凍結されないと説明した。
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