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ビットコイン専門ウォレット『コールドカード』流出被害拡大、グレースケールは「限定的脆弱性」と分析

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 被害拡大、第4波の攻撃確認
  • AIが脆弱性発見を加速と指摘

コールドカード被害拡大

米資産運用会社グレースケールは8月3日、自己管理型ビットコインウォレット「コールドカード」の脆弱性を悪用した攻撃について分析をレポートで公表した。同社の分析によると、ハッカー集団はこれまでに約1,400BTCのビットコイン(約140億円相当)を利用者のウォレットから流出させたという。

グレースケールは同レポートで、今回の事案がビットコインのブロックチェーン自体ではなく、コールドカードという特定のウォレット提供事業者に限定された脆弱性である点を指摘した。ビットコインの暗号技術と合意形成の仕組みは、これまで一度も突破された事例がないという。

また、仮想通貨業界全体のサイバーセキュリティ被害額は今年通年で約17億ドル規模となり、過去9年間で最低水準になるとみられる。

同社はまた、ビットコイン現物ETF(上場投資信託)が分別管理・複数署名・保険付保などの制度を備えており、自己管理の複雑さを避けたい投資家にとって代替的な保管手段になると分析した。

同日、米調査会社ギャラクシーデジタルの調査部門責任者、アレックス・ソーン氏は、コールドカードを標的とした「第4波」とみられる攻撃が進行中だと投稿した。ブロック960,778番から960,792番までの直近約2.5時間で、218件の取引・462件の被害アドレス・216件の新規送金先が確認された。

ソーン氏の投稿によると、この波での流出額は約388.9BTCのビットコインに達し、攻撃頻度は事案発生前の平時と比べて約45倍に上昇したという。コールドカード利用者に対し、資金を早急に別のデバイスへ移し、手数料を上げて取引を進めるよう呼びかけた。

関連記事:コールドカード被害後、ビットコイン送金急増=クリプトクアント

コールドカードのハードウェアウォレット流出を受け、ビットコインのアクティブアドレス数が急増した。クリプトクアントのモレノ氏は、7月31日時点で2024年12月以来の高水準に達したと分析している。

第4波と技術的背景

ザ・ブロックの報道では、先週段階でコールドカードの脆弱性を悪用した攻撃により、複数の波にわたり数千件のアドレスから約1,300BTCのビットコインが流出したとされ、自己管理型ウォレットが原因の流出事例としては過去最大規模になると評された。流出は7月30日ごろから始まり、複数の波にわたって続いているという。

この脆弱性は2021年3月のファームウェア開発時に生じた設定上の誤りに起因するという。ファームウェアとは、デバイスの鍵生成や署名処理など基本動作を制御する内蔵ソフトウェアを指す。

コールドカードは半導体チップ(STM32)に搭載されたハードウェア乱数生成機能を用いて、ウォレットの復元シード(BIP-39形式)を作成する設計だったが、乱数生成機能の有効・無効を判定する設定項目の確認方法に誤りがあり、機能が無効化されているにもかかわらず有効と誤認識される状態になっていたという。この誤りにより、実際には予測可能なソフトウェア型の疑似乱数生成方式に処理が切り替わっていたとされる。

この結果、通常12語のBIP-39シードが持つ約128ビット相当のランダム性が、脆弱なファームウェアを搭載した機種では約40ビット以下まで低下したという。後継機種でも修正前は約72ビット相当にとどまっていたとされる。

攻撃者は端末のシリアル番号や内部時計といった推測可能な値から候補シードを事前に生成し、対応するビットコインアドレスをオンチェーンの残高と照合した上で資金を抜き取っていたとされ、デバイスへの物理的な接触やフィッシング、マルウェアは必要なかったという。

コールドカードの開発元コインキット社は、ファームウェアを更新しても既に生成された脆弱なシードは修正されないとして、利用者に新しいシードの生成と資金移動を呼びかけている。

関連記事:ビットコインウォレットおすすめ8選【2026年版】 種類・選び方・安全な使い方を徹底解説

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ロップ氏の見解

ビットコインのセキュリティ研究者で、自己管理型ウォレット開発企業カサの共同創業者であるジェイムソン・ロップ氏は、ザ・ブロックの番組「The Starting Block」で、今回の事案が自己管理の意義そのものを否定するものではないとの見方を示した。一方で、ビットコインの原則である「信頼せず、検証せよ」という考え方の限界が露呈したと述べた。

ロップ氏は、複雑なソフトウェアやハードウェアを実際に検証することは、大多数の利用者にとって現実的ではないと指摘。多くの利用者は結局、ハードウェア事業者やソフトウェア開発者、セキュリティ研究者が検証済みであると信用するしかない立場にある。

ハードウェアウォレット企業ファウンデーションのCEO、ザック・ハーバート氏も同番組で、今回の事案を理由に自己管理の時代が終わったと結論づけるのは危険だと語った。同氏は、業界全体でセキュリティ対策を強化する契機にすべきだとの考えを示した。

ロップ氏は、人工知能の発展が今回のコールドカードの脆弱性発見を加速させた可能性があるとの見方を示した。同氏の分析では、大規模言語モデルの進歩によりセキュリティ環境が変化し、AIが攻撃者に有利な面と防御側に有利な面をもたらしており、両者の間で競争が生まれている。

ウォレット開発企業コインキットのロドルフォ・ノヴァクCEOも先週、ファームウェアの不備について責任を認め、AI時代の現実を示す事案だと述べた。同氏は、AIを活用したコードレビューにより経験豊富な研究者よりも早く潜在的な脆弱性が見つかる可能性があり、防御側が同じ欠陥を見つける前に攻撃者が悪用してしまうと述べた。

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