米バイデン政権、ステーブルコインの政策提言レポートを公開
ステーブルコイン規制のレポート公開
米バイデン政権の金融市場作業部会(以下、PWG)は1日、暗号資産(仮想通貨)ステーブルコインの規制に関するレポートを公開した。
レポートでは、ステーブルコインのリスクに対応するための規制の枠組みを概説。イエレン財務長官は「ステーブルコインは決済の選択肢として役に立つ可能性を秘めているが、適切に監督しないと、ユーザーや広範囲のシステムにとってリスクになる」と指摘している。
ステーブルコインとは
ビットコイン(BTC)などの一般的な銘柄と違って、価値が常に安定している(=stable)仮想通貨を指す。米ドルと1:1の価値になるように運用されるものなど、複数の種類のステーブルコインがある。
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米国の規制当局がステーブルコインの規制に関するレポートを発表することは先月から報じられていた。米証券取引委員会(SEC)がステーブルコインの規制を主導して進めることや、ステーブルコインを銀行預金のように規制するよう米議会に進言していく意向であることなどが以前から明らかになっている。最終的にPWGのレポートは以下の組織が主導して作成された。
- 財務省
- 証券取引委員会(SEC)
- 商品先物取引委員会(CFTC)
- 連邦預金保険公社(FDIC)
- 通貨監督庁(OCC)
レポートの要点
今回のレポートによると、イエレン氏は上述した内容に加え、「現在の監督は一貫性がなく断片的で、ステーブルコインの中には実質上、規制当局の管轄外で利用されているものがある」と指摘。「議会が対策を講じる一方で、各規制機関もそれぞれの権限の範囲内でリスクへの対応を進めるべきだ」と述べている。
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ステーブルコインについて、今回PWGが指摘した主なリスクは以下の3点。これらのリスクを軽減するには、現時点では規制機関の権限の範囲に抜け穴があると指摘した。
- ステーブルコインの運用が不安定になるリスク
- ステーブルコインが決済のシステムを不安定にするリスク
- 経済力が集中するリスク
そして、レポートでは投資家保護、市場の完全性、違法利用の防止の観点から、国家レベルの法律の枠組みを決めることを進言。上記のリスクに対応するための重要な方法として、下記の提言も行なっている。
- ステーブルコインの発行者に銀行と同様の規制を課す
- ユーザーの秘密鍵を保有する「カストディ型」のウォレットプロバイダーも国の管理下に置く
- ステーブルコインの発行者と営利団体の協業を監督する
- カストディ型のウォレットプロバイダーによる営利団体との協業や、ユーザーの取引データの利用を制限するようなルールが必要になる可能性がある
なお、今回のレポートを作成する際、以下の市場参加者も議論に参加したという。財務省の担当者はCoinPostの提携メディア『The Block』に対し、「全体的にステーブルコインの発行者は、ステーブルコインは広範囲で利用されるため、規制も広く行うべきあるとの認識を持っていた。彼らは明確な規制を望んでいる」と説明した。
今後の対応
今後の対応についてPWGは、当面の間は各機関は、既存の法律が遵守されるように、権限の範囲内で対応を行うように要求。議会はステーブルコインの決済利用に潜むリスクに対応するため、早急に対応する必要があると主張した。議会が行動しないのであれば、金融安定監督評議会(FSOC)がリスク対応のための手段を考えるように推奨している。
そして、デジタル資産については、SECとCFTCが広く監督を担当することになると説明。マネーロンダリングやテロ資金供与などの違法行為を防止するため、財務省には金融活動作業部会(FATF)との取り組みを継続するよう求めた。
PWGは、「今回のレポートはステーブルコインに特化しているが、政府はデジタル資産、暗号技術や分散型台帳技術の規制に関する取り組みは継続していくべきだ」と主張。「政府や金融規制機関は、責任あるイノベーションを推進しながら、リスクを見極めて対応を行い、一貫した規制整備を協力して進めていくべきである」と述べている。
有識者の見方
仮想通貨業界の弁護士Jake Chervinsky氏は、今回のレポートの内容を受け、自身の見解を発表。以下のようにコメントした。
レポートが強調しているのは、議会が早急に法整備を行う必要があるという点だと思う。しかし、議会はステーブルコインに限らず、何においても早急に対応を行う可能性は低い。
ステーブルコイン規制の法律化には時間がかかるだろうし、時間をかけるべきだ。当面は何も大きなことは起こらないだろう。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します