米大手VC「a16z」、世界のリーダーにWeb3.0の十原則を提案
より良いインターネットの未来のために
仮想通貨業界にも多く投資する米大手ベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)」は7日、「より良いインターネットを構築する方法」として、世界各国政府がWeb3.0関連の法整備に取り組む際に基盤とすべき原則を提案した。
「Web3の未来を築く世界のリーダーのための10の原則」と題した同提言の共同執筆者は、a16zの政策担当責任者であるTomicah Tillemann氏。同氏は世界経済フォーラムの第四次産業革命評議会のメンバーであり、グローバル・ブロックチェーン・ビジネス評議会の議長を務めている。また、米国政府との繋がりも強く、国務省に入省後、二人の国務長官の上級顧問や上院外交委員会のメンバーとして務めた経歴を持つ。
2021年は、世界中でかなりの数の政府関係者がWeb3.0の可能性を認識し始めた「分岐点となる年」とTillemann氏は指摘。今年は世界のリーダーの多くが、Web3.0を導入するための規制の枠組み作りに取り組むことになると予測している。
Web3.0とは
現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。ウェブ3.0(Web3.0)は、Web1.0およびWeb2.0に続く、ウェブサイトおよびインターネットの潮流、特徴および構造を表している概念。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
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社会に利益をもたらすための十原則
a16zは、リスクを軽減しつつWeb3.0の恩恵をもたらすために各国政府が実行すべき指針を以下の10項目にまとめた。これらの指針は、様々な世界の当局者への聞き取り調査と「公共部門、民間部門、市民社会の関係者との議論」を通して生まれたものだという。
- 分散型のデジタルインフラを発展させるための明確なビジョンを確立する
- ガバナンスと規制に「複数の利害関係者」アプローチを導入する
- 様々なWeb3.0活動に対し、対象を絞り、リスク調整がなされた監視体制を構築する
- 複数要素を結びつける構成方法、オープンソースのコード、開かれたコミュニティの力でイノベーションを促進する
- イノベーション経済がもたらす経済的利益へのアクセスを拡大する
- 自律分散型組織(DAO)の可能性を切り開く
- 持続可能な社会の実現に向けたWeb3.0の展開
- 金融包摂とイノベーションにおいて、十分に規制されたステーブルコインの役割を受け入れる
- 世界各国と連携し、規格や規制の枠組みを調和させる
- デジタル資産の報告に関して明確かつ公正な税制を提供するとともに、税務コンプライアンスのための技術的ソリューションを活用する
上記の十原則を受け入れることで、各国政府は「Web3.0の国家規模の普及に向けて、その恩恵を享受するのに有利な立場となるのに加え、予期せぬ課題に対処するにより良い体制を整えることができる」と、a16zはまとめている。
Web3.0とa16z
a16zがWeb3.0に関する提言を行うのは今回が初めてではない。昨年10月、同社は米国連邦議員に向け、「未来を勝ち取る方法」と題した35ページにわたる「第3世代インターネット」に関する報告書を提出。「セキュリテイ、包摂性、効率性」を今後の政策課題として掲げた。
同時に、ホワイトハウスをはじめとする米国政府機関関係者と会合を持ったことも報道されている。
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さらに昨年12月には、今年実施される米国中間選挙に向けたWeb3.0の意識調査を行い、その結果を発表。調査に回答した約8割の国民がWeb3.0を推進する候補者を支持する可能性があることが明らかになった。
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一方、ツイッターの創業者で米決済企業Block(旧スクエア)のJack Dorsey CEOは、昨年末、Web3.0を推進するa16zに対し、「Web3.0」を所有しているのは「ベンチャー・キャピタルとその有限責任パートナー」であり、Web3.0とは「異なるレッテルが貼られた中央集権的な組織に過ぎない」として痛烈に批判した。
さらに米テスラ社のElon Musk CEOが、Web3.0は「今は現実というより、マーケティングの流行語のように見える」とツイートで参戦。ツイッター上で賛否両論が行き交う論争に発展した。
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