米NY州、仮想通貨マイニング取締案の支持強まる|採掘企業の新設と環境調査
採掘業界の調査と稼働停止に関する法案
ニューヨーク州内におけるビットコイン(BTC)などPoW銘柄の暗号資産(仮想通貨)採掘を禁止する法案が引き続き賛同を得ている。2月下旬には新たに2名の有力議員らが法案への支持を表明した。
同法案は最初に21年5月に提出されたもの。ニューヨーク州内において石炭を利用した仮想通貨マイニング企業のデータセンターが環境へ悪影響を与えているとして、州内における仮想通貨企業の評価書(EIS)の提出と3年間の採掘企業の稼働停止期間(Moratorium)を義務付ける内容だ。
これまで同法案は41議員の支持を得ていたが、新たに先週24日、Amy Paulin議員とKen Zebrowski議員が賛成する意向を公表。なお、法案が可決するためには150議席中、賛成票が過半数を超える必要があるため、まだ実現には至っていない。
マイニングとは
ビットコイン(BTC)など、コンセンサスアルゴリズムにプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を導入する仮想通貨の取引を検証・承認すること。ケンブリッジ大学の調査では、中国が仮想通貨の取引やマイニングを禁止以降、米国が世界1位のマイニング大国となっている。
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法案の内容
法案はニューヨーク州の環境保全法を改訂するもので、マイニング企業による環境負荷の多いエネルギー消費を制限する狙いがある。同州は2050年までにグリーンハウスガスの排出量を85%削減する目標を定めており、仮想通貨企業がこの目標達成に反すると指摘している格好だ。
法案ではマイニングを要するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)銘柄の「ネットワークのバリデーション」を行う企業は老朽化した石炭工場や尖頭負荷発電所の利用を危惧。具体的な消費電力量の把握や、稼働中の採掘企業の数、電力源やグリーンハウスガスを含む有害な排出物質の特定を行う調査を定める。
また、ニューヨーク州内における水質、空気の質などの影響も分析する。
さらに、法案ではPoW銘柄のマイニング事業を3年間禁止するモラトリアムも導入する条項が含まれている。実現すれば、マイニング施設の新設や炭素ベースの燃料を利用する既存事業のライセンス更新が不可能となる。
なお、ニューヨーク州議会ではマイニング事業の新設を3年間一時停止する同様のモラトリアム導入に関する法案が21年6月に否決されていた経緯がある。
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ニューヨーク州の仮想通貨動向
マイニング企業に対するモラトリアムは以前、同州北東部のプラッツバーグ市が2018年3月に発令した経緯がある。当時は18ヶ月に渡り、新たな採掘企業の新設を禁止していた。
プラッツバーグ市では月毎に一定量の電力が提供されていたが、ナイアガラ滝付近の水力発電所に近い事が功を奏し、安価な電力代を持っていた。米国の平均電力コストの半分以下に魅了され、マイニング企業が殺到した結果、市全体の電力消費量が割り当て量を超過。
一般市場の電力を購入しなければならない状況が発生し、全市民の電力代が最大200ドル(22,000円)上昇していた。
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また、ニューヨーク州知事は今週2日、ニューヨーク金融サービス局(NYDFS)にロシアへの経済制裁に対する執行強化策を発表しており、ブロックチェーン分析ツールの購入を加速化を命じている。
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一方、ニューヨーク市では仮想通貨推進派のエリック・アダムズ氏が市長選に当選。22年1月より就任しており、初任給をビットコインとイーサリアム(ETH)で受け取った。
「ニューヨーク市が新興技術にオープンであることを伝え、若い世代が、こうした新たな市場に参与することを後押し」するためにこういった決断に至ったという。
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アダムス市長はコミュニティ主導の地域通貨プロジェクト「シティコイン」の導入も認めており、「ニューヨークシティコイン(NYC Coin)」のマイニングは21年11月より開始。
同プロジェクトは仮想通貨スタックス(STX)を利用して発行されるトークンで、マイニングで発生する収益は市に寄付される仕組みだ。昨夏に初めてプロジェクトを実装したマイアミ市では、発行開始から1週間で1億円の収益をもたらしていた。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します